王子
つたない文章ですが読んでくださると嬉しいです
「落としたよ」
そういって可愛らしいハンカチを拾い上げ、目の前の女の子に渡した。女の子は頬を少し染め、小さな声でお礼を言うと、待っている友達のもとへ駆けていった。合流した途端に、
「やっぱ王子かっこいい…」
「さすがな対応だったね」
とこちらを振り返りながら話している。
王子…ね。別にその呼ばわりが嫌で仕方がないわけではない。ただ、とびきり嬉しいわけでもないのは、
慣れてしまったからだろうか。いや…
教室に戻りながらため息をついていると、後ろから背中をばんと叩かれた。
「今日もイケメンだねぇ王子様」
「光希…」
からかうような笑みを浮かべこちらを見ているのは高校に入ってから仲良くなった光希だ。
「落としたよ、だって!」
「ちょっやめ…」
にやにやしながら周りをちょこちょこ動いているから余計に頭にくる。何回この会話をしたのだろう。それでも飽きない光希にため息が出る。
教室についてバッグを肩に担ぐと、小さな鈴が声をあげた。その音に続くように光希が駆け寄ってきた。
「かーえろ!」
「はいはい」
少々めんどくさそうに返事をしたが、光希は少しも気にしていないようだった。
校門を出てすぐに声をかけられた。
編み込みした髪を1つに束ねている女の子。手にはおしゃれな装飾がほどこされた袋があった。ぎゅっと握りしめている。
「なに?」
「あっあの…こ、これどうぞ!」
そういって持っていた袋を押し付けるように渡すと、
走っていってしまった。
「…」
「…すごいね」
「なにが」
「いろいろと」
「なにそれ…」
また受け取ってしまった。もう受け取らないと決めていたのに。また大きく、ため息をついた。断れない性格というか押しに弱いというか…せめて王子なら王子らしく断れないものだろうか。
「帰ろ」
「え?あぁ…そうだね」
まだぽけっとしている光希に言葉を投げながら歩きだした。慌てて光希が追いかける。
さっきのようなことにはお互い慣れているつもりだったが、いざ直面すると少し気まずい。本当ならこんなこと、「モテるね~?」といったような冷やかしで終わるのだろう。けれど…
「私、女なのにな…」