養子になる
う・・・ん
「ここは、どこ?
確か、森の中で・・・」
豪華な部屋、ふかふかで暖かいベッド。
これは、夢?
私、どうなったの?生きてるの?それとも、ここは天国?
コンコン ガチャ
「まぁ、起きたのね
よかったわ
あなた、森の中で倒れていたのよ」
豪華なドレスに身を包んだ、金髪に、青い瞳の美しい女性と、茶髪に茶色い瞳の美人だが、地味なメイド服姿の人がはいってきた。
「だ、れ?」
「わたくしは、メルローズです
わたくしの娘が、森の中で倒れていたあなたを見つけたのよ」
「メルローズ、様?むす、め?」
すると、メルローズと名乗った女性の足元に隠れていた少女が、恐る恐る出てきた。
「大、丈夫?」
メルローズ様と同じ色彩の天使のような女の子。
気を失う直前に見た女の子だ。私を助けてくれた子。命の恩人。私にとっての、天使。
「だ、大丈夫、です
あ、あの。助けてくれて、本当にありがとうございました」
「いいのよ、それよりも
お腹が空いているでしょう?アン」
「はい、メルローズ様
ミルクがゆですよ。食べなさい」
「は、はい。
本当に、ありがとうございます」
湯気の出ているミルクがゆは、あったかくて、美味しくて、この世界に来て初めてまともにお腹を満たすことができた。
「そういえば、あなた名前は何というのかしら」
名前、前世の名前は・・・違うな、あの名前は前世の名前であって、今の私の名前ではない。
「名前は、ない・・です
帰るところもないし、親が誰かもわかりません。
気が付いたらあの森にいて・・・」
「まぁ、そうなの・・・」
「ねぇ、おかあさま
おねえちゃん、ミリィたちと一緒にいてもらわない?」
え?
「まぁ、いい考えね
あなた、わたくしの娘の遊び相手として一緒に来ないかしら」
この人たちと一緒に、いて、いいの?
わたしが
「こんな私がいていいのでしたら。
いさせてください」
「それじゃあ、決まりね
ただ、わたくしの娘といるには、ある程度の身分でないとならないから・・・
アン、あなたこの子を養子にしないかしら」
よ、養子⁉
こんな私が⁉アンさんがいいっていうわけないよ。
どうしよう。
「かしこまりました」
「え?
い、いいのですか」
「えぇ、わたくしは、ずっと娘が欲しかったのですよ」
わお、それでも普通オーケーしないでしょ
あっ
「で、でも
私、獣人ですよ
しかも、尻尾が9つもあって、自分が何の獣人なのかよくわからないけど、あきらかに普通では、ないです」
たぶん、森で追いかけられたのもこれが原因
尻尾が9つなんて、おかしいだろうし。
「大丈夫ですよ」
そういいながら、メイドキャップを外すアンさんには狐の耳と、1つだが、尻尾がはえていた。
え?さっきまでなかったのに。メイドキャップは、耳を隠せるほど大きなものではない。なのに、どうして
「この通り、わたくしも獣人でございます
このキャップは魔道具でして、かぶることで姿を変化させられるのですよ
これでなにも問題ありませんね。それとも、わたくしがあなたの母となるのは、いやですか」
あぁ、私、この人たちといていいんだ。
この人が、私のお母さんなんだ
「いやじゃ、ないです」
「そうですか、ならば名前をつけてあげましょう。そうですね・・・レティーシアなんてどうでしょう。夫と、もし娘が生まれたらこの名前にしようと話していたのです」
レティーシア、レティーシア・・・
「はい、お母様」
「ねぇ、ねぇ、ミドルネームは、ミリィが考えてもいい?」
こてん、と首をかしげるミリィ様マジかわいい
「も、もちろんです」
「えっとね、じゃあね、白銀の髪が、キラキラしてて綺麗だから、ルーナベル」
ルーナベル、確かルーナは月、ベルは美しいだっけ。
「アンの名前が、アンディアーナ・ルーミア・アルジョンテだから、レティーシア・ルーナベル・アルジョンテね」