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第8話『ナイスフォト! ナイスフォトですよね先輩!?』

 しばらくして朝灯の朝灯が落ち着くとようやく三人はようやく本題に入ることにする。


「おほん、本日の儀式は写真撮影なのよ」

「十分に今の段階でも純情は溜まっているような気がするのですが」


 純情石が内臓されたひなたの携帯は砂浜の中央に設置されている。ある程度離れていたとしても問題無く純情は吸収される、と式姫は説明した。


「写真を撮られるのって気恥ずかしいものでしょ? それが自分の肌を露出しているのならなおさら。もしひなたちゃんが見て見てオゥイエー! っていう考えの持ち主だったら今日は撤収するけど」

「恥ずかしいです」


 ひなたは俯いてもじもじしている。式姫は満足そうに一眼レフのカメラを二つ取り出した。


「んじゃあ私と朝灯君でバシバシ撮っていくから! ひなたちゃんは言われた通りに従うこと! んじゃあ早速水着取っちゃおうか!」

「先輩早すぎるって、そういうのはもっと気分を乗せてからです」

「お二人とも何を言ってるんですか!?」


 冗談冗談、と式姫は怒るひなたにフラッシュを浴びせた。確認すると真っ赤になった可愛らしいひなたが撮られている。


「はーいひなたちゃん、どんどん撮っていこうねー」


 そして明星ひなたファーストグラビアの撮影が開始される。棒立ちのひなたを中心に式姫と朝灯がぐるぐると回るというシュールな光景だった。


「明星ぃー、ちょっと笑ってみて」

「え、えと……こう、ですか」


 ぎこちなく微笑むひなた、すかさず式姫が水鉄砲でひなたの胸に射撃を開始する。


「きゃ、くすぐっ……た、ふふ、あははは」

「ぬぅおおおおお! ナイス! 先輩ナイス! 天才!」


 水圧が強めな為、ひなたの胸が形を変える。それが見えない手で揉みしだかれているように見えて。


「ふぅ……」


 思わず腹筋に力を入れる朝灯。式姫はその様子を見て醜悪な笑顔を見せる。


「おらぁ! 朝灯の朝灯がライジングサンかこのやろう!」

「うわぁひでぇ! オゥフッ!! やめろ先輩オゥフッ――!!」

「ぱおーん! ぱおーん!」

「え、えっ……あ、わ、私もやります!」


 ひなたは無邪気なじゃれ合いと勘違いしたのか、素早くもう一丁の水圧が強い水鉄砲を手に取った。白いワンピースを着た悪魔が爆誕する。


「ぎゃーっ! 俺の、俺のが! 二人に責められて! ちょっとおい先輩、ケツはやめ、やめちょアッ――! オゥフッ! アッ――! 当初の目的と全然違うじゃろがい! オゥフッ!」


 ひなたは射撃の才能があるのか、ピンポイントで朝灯の朝灯を責め続ける。式姫も的確に朝灯の後ろを責め続けた。


「くっ……この、いい加減にっ!」


 朝灯は僅かな隙を狙い、カメラのフラッシュをひなたに浴びせる。身を竦ませたひなたに飛び掛り、居合い抜きのように正確に水鉄砲を奪い取った。


「そこだっ!」


 式姫は逃れた朝灯に向かい水弾を連射するが、朝灯は静かに前転してこれを回避、砂浜にしっかり両足をつける。そして視界に捕らえた――禁断の果実に向かって射撃を放つ。


「きゃひぃっ!」


 ひなたは突然の射撃を避けられず、胸に強い水圧を喰らう。


「先輩、俺たちが真に狙うべきは――明星!」

「委細承知!」


 そこからのコンビネーションは演舞のように美しく、熟練の傭兵のように正確だった。フラッシュで怯んだ瞬間にひなたの胸に水弾を的確に当てていく。


「や、ちょっと、んっ――」


 たまらずにひなたは胸を腕でガードする。朝灯と式姫は刹那、視線を交わし連携を取る。


「ガードが固いのなら――」

「――後ろをとるッ!!」


 即興の死の舞(ダンスマカブル)。朝灯のフラッシュと同時に式姫は高速で後ろに回り、ひなたの首筋に水弾を当てると、たまらずひなたは首筋を押さえる。そこに朝灯の水弾が胸に着弾する。


「や、あの……だめ、くすぐった……んんっ……」


 紅潮するひなたの顔、チャンスとばかりに朝灯はガードの上からでも執拗に水弾を当てていく。


「合わせろ先輩っ!!」

「言われなくてもっ!!」


 ひなたの正面で式姫と朝灯は水弾を合流させるように連射。同時にフラッシュで畳み掛ける。叩きつけるようなフラッシュはひなたの視界を奪い、平行感覚を狂わせる。


「だめ、です、ん、だめぇっ……あっ」


 水圧で形を変えるおっぱいは妖しく揺れる、同時に二人の士気を加速度的に上げていく。ついに尻餅をつくひなたに対し、二人は容赦無く液体をぶち撒ける。


「うぅへへっへへへへ」

「ぐへぇへへへっへ」


 いつのまにか二人はすっかり当初の目的を忘れてしまっていた。結果的に見れば別にこの方法でもいいのだが、何か人として大切な何かを二人は捨てていた。


「いや、いやぁっ……朝灯くんっ……先輩っ……だめぇっ……」

「ナイスフォト! ナイスフォトですよね先輩!?」

「あ、うん! なんかポリスに見られたら一発でブタ飯食べそうだけど! すごいフォト! ヴェリーナイスフォト! ナイスフォト!」


 ぶしゃああ! と水鉄砲から液体が飛び出る。ひなたが面白いように反応するのでついつい二人も辞め時が分からなかった。


「ひ、ひどい……もうお嫁にいけない……」


 カメラは容赦無く、ぐでっと倒れたひなたを撮っていく、確かにこれが世に出回るとしたらお嫁にいけなくなっても不思議はないだろう。


「うへへへへへ、まぁお嫁にいけなくなったとしても、俺が責任とるよ」

「……え、あの、朝灯くん、それって……」


 ギュイーン!! という音が試合終了のゴングのように海岸に響き渡る。それでようやく我に返った朝灯と式姫は、目の前に倒れているひなたの様子を見て驚く。


「これは……なんてひどい……」

「R18じゃねこれ」

「お、お二人がやったんですよ!?」





 朝灯はひなたに正座させられていた。珍しくひなたがぷりぷりと怒っている。


「もうっ……もうっ……ばかぁ……朝灯くんのぇっちぃ……」


 ひなたはぽこぽこと語彙少なく朝灯の頭を叩く、怒っているはずなのにどこか遠慮がちで朝灯はくすぐったかった。


「何故俺だけ、いやまぁそりゃ狙ったのは俺だけど」

「む、胸ばっかり執拗に、恥ずかしくって、死んじゃいそうです」


 夕焼け染まる海岸線、綺麗なオレンジが海に沈む幻想的な光景なのに、朝灯とひなたはどこか滑稽だった。式姫は今更気を使ったのか、自販機にジュースを買いに行っていた。


「何でもするから許してくれ、いやあれだけの事をしたんだから何かさせてください」

「もう、あ、そうだ。まだ前の言う事を聞くっていうのが残っていましたね」


 ひなたは少し考え、朝灯に微笑む。


「呼び方、変えてくれませんか?」

「え、あぁ……そういえばまだ明星って呼んでいたな」


 朝灯はいまだにひなたの事を『明星』と呼ぶ。呼び名を変えたのはひなただけだった。


「……ダメ、ですか?」

「馴れ馴れしくないか? 明星がいいならいんだけど」

「私はやっぱり、友達じゃ――」

「友達だよ、そこは間違えるなっての。違うんだ、俺は明星とどれぐらいの距離でいていいのかっていうのが分からなかったんだ」


 朝灯は正座を崩し、頬をかきながら夕陽を見つめる。気恥ずかしくてひなたの目を見る事ができなかった。


「明星、ああもう……ひなたちゃん……じゃあなんかアレだガキっぽい。ひなたはさ、繊細で壊れてしまいそうだから、俺みたいな奴があんまり近くにいたら壊れてしまうんじゃないかって思って」


 ひなた、という呼び名に慌てながらもひなたは凛と答える。


「そんなことないです、私はそんなに弱くは、ないはずです」

「俺にとってはそう見えるんだ。俺はほら一夜がいたから、すっごい強い規格外の奴がいっつも傍にいるからさ。人との距離っつか、女の子との距離が分かりにくい」


 朝灯はふらふらと視線を漂わせてひなたの太股、お腹、胸……に長くとまり、最後に目と目を合わせる。


「私は、遠慮なんてしてほしくないですよ。朝灯くんは、朝灯くんなら、私の中で特別だから」

「……そうか、なら呼ぶぞ、ひなたって。俺はひなたとの距離を計らないし、ひなたも俺との距離を計らないでくれ」

「はい」


 臭い台詞だな、と朝灯は感じる。お互い頬を朱に染めてお互いの言葉を受け止める。普通こういう関係というのは自然に会話の中で築かれるものであり、わざわざ確認するのはひどくこっぱずかしい。けれど朝灯はひなたという存在は、そういうこっぱずかしい確認作業をいちいちしないと打ち解けてくれない存在だと判断した。

 不器用だなと朝灯は思った。それは何となく免罪符じみた言葉であり言い訳がましい。けれど自分の考えている事、好意が上手く伝わらないひなたはそう表現するしかない。


「よろしく、ひなた」


 その朝灯の言葉にひなたは嬉しそうに頷く。その言葉少ないひなたなりの好意の伝え方は朝灯の胸に響いた。可愛い、そう心に純粋に感情が沸く。


「あの、それからこれは、全然関係無いお願いなんですけど」

「何でも聞くよ」


 ひなたは砂浜の携帯を手に取り、あんまり慣れていない手つきでカメラモードに設定する。


「写真を撮ってほしいです」

「散々撮ったからデータなら後であげるけど」


 淫猥な画像データしか残っていないが。


「一緒の写真は無いですし、いつでも見れるようにしたいです」

「愛い奴め。じゃあ撮るか」


 ひなたと朝灯は横に並び、ひなたはカメラを離して撮影しようとする。折りたたむ内側にカメラがついているタイプなので、撮影する画面が見れるようになっていた。


「二人が入らないな」


 ごほん、咳払いをしてから朝灯はひなたに寄る。ひなたの肩に自分の肩が触れ、カッと頬が熱くなる。


「……んっ」


 ひなたも意を決したように朝灯に寄り添う。朝灯は触れ合った部分から溶けるかと思った。可愛らしい音が鳴り、撮影が終わると、可愛らしい2ショットの写真が画面に表示される。


「た、宝物に、しますねっ!」


 身長が頭一つ低いひなたが、上目遣いで朝灯に言う。朝灯はその純真な様子に打ち抜かれた。


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