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第一章【桜〜姉妹篇・前篇】

プロローグ



そこは真っ暗だった。一寸の光もない、闇以外何もない空間だった。


…終わりか。彼女はそう思った。

もう誰かと会う事は二度と出来ない‥。

仕方ない。もうなってしまったんだ。

彼女は闇の中膝を組んでうずくまった。

私は、この闇の中で一人消えてしまうんだ‥。


どれ位経っただろう。

彼女は闇の中でうずくまり続けていた。

真っ暗な闇は少しずつ彼女の心を蝕み、存在を消していった。

‥?

ふいに彼女は闇の中で何かを感じ、上を見上げた。

すると、小さな光の球が舞いおりてくるのが見えた。

光の球は、彼女の掌に舞い降りた。

弱々しく、今にも消えてしまいそうな光球だった。

だが不思議な温かさがあった。

彼女はその光球を胸に抱きしめるように包みこんだ。

‥暖かい、そう彼女は思った。


また、時は流れた。

心身蝕む闇の中、彼女の存在は消えていなかった。

彼女の胸には光球が僅かながらも依然光を放っていた。

その僅かな光の温かさが、彼女を消滅させずに存在させていた。

‥ありがとう。

彼女は光球に話しかけるように呟いた。

あなたのお陰で、私はまだ存在出来てる。

あなただけが、私を絶望中で支えてくれた‥。


すると。

(‥良かった‥)

声が聞こえた。


‥え?

(‥あなたは、これでまた生きる事が出来る‥)

‥誰?

彼女は闇の中を見渡した。

するとまた、

(‥私の願い‥叶った‥。)

その言葉が聞こえた次の瞬間、真っ暗闇の彼方から一筋の美しい光が射し込んだ。


そしてまた、声がした。

(‥あなたを愛している人の光‥。‥あの人の想いも、繋がった‥。)

‥愛している人?誰?

彼女は見えない声に問いかけた。

すると、

(‥あなたは、よみがえる‥)

その声と同時に、彼女が胸に抱いている光球が突然眩しい程の光を放った。


彼女の胸から突如輝きを放った光球は、射し込んだ光とも繋がり瞬く間に全てを覆っていた闇の空間を光の空間に変えた。

まぶゆい光の中、彼女は茫然と立ち竦んでいた。

するとまた、あの声が聞こえた。

(‥さ、戻りなさい‥‥あなたを待ってる人もいるわ‥)

その声と同時に、彼女の体は少しずつ透き通り消えていった。


‥待って!

消えゆく中で彼女は叫んだ。

‥あなたは、一体誰なの?

(‥また、いつか。‥許されるなら‥)

その声が聞こえた時、彼女は光の空間から消えた。

そして光の空間も消えた。

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