異世界転生ってお前が来るのかよ!?
この物語の主人公「佐々木翔」
14歳でありながら、既に二年間も引きニート生活を送っているダメダメな中学生。
翔は小学生の頃に受けた虐めが原因(自称)で家に引きこもることに。そんな駄目息子である翔の両親はともに、公務員勤務の共働きで今やそんな息子に半ば諦めぎみである。
翔の唯一の楽しみと言えば
「WMVOアザークオンライン」
全世界で熱狂的なファンをもつ毎日1億5000万人がプレイするヴァーチャルオンラインゲーム。よくありがちなファンタジーで独特な世界観を持つが、普通のゲームと大きく違うのがゲーム内に仮想国家が幾つも存在しそこでのルールや行動が現実世界にも大きく影響するところである。
このゲームを運営するのは、世界的大企業である「アザーク社」年商1000億$を優に超える大組織。その圧倒的な影響力と資金力をもとに仮想世界での出来事を現実世界へと転嫁していく。ゲーム内での各イベントでの優秀者に、大金をバラマキ、実際に家や土地を与え、地位と名声を広く与え続けた。
お陰で今では、ゲーム内通貨である「ギル」が普通に町のコンビニでも使えるほどに浸透している。
そんな世界では、まともに働く人間の方が少なく学校に通わない学生がクラスに数人いたとしても世間はまったく気にしないのである。
容姿普通、体力並み以下、頭脳平均的、どちらかと言えば劣等感の塊であろう彼が引きこもるほどに熱中するのには別の理由があったのである。
彼が、アザーク内で活動し所属するのは
聖王国家「ロンダルギア」の聖王騎士団
聖王と呼ばれる偉大な王と、圧倒的な軍事的象徴である
「聖王騎士団ロンギヌス」の存在がその世界的な地位を磐石なものにしているアザーク内でも有数の超大国である。
聖王騎士団とは、
最上位ジョブである聖騎士(LV100)の中から、騎士団選抜とロンダルギア国民投票によって選ばれた100名の聖騎士のみがロンギヌスの一員になれるということで、もはやアザーク内では彼らの事を伝説的な英雄として扱かわれている。しかし彼らがこれだけ英雄視されるのには、更なる理由がある。アザークにおいてある程度の地位や名声を得た人間は現実世界においてもその影響力をつかって大成するものや、金銭的な享受を受けるものが当たり前である。
しかし、彼ら聖王国の聖騎士を目指すものには鉄の掟がある。
それは、
「聖騎士足るものその身を明かすことなかれ」
つまり現実世界において、ロンギヌスの聖騎士の称号を目指すものはその身分を他人に明かすことも、それをつかって何かしらの利益を得ることも出来ないという掟がある。
これらの縛りは、アザーク全て国とジョブの中で唯一聖王国の聖騎士だけが持つルールである。この事からも聖騎士の中の聖騎士であるロンギヌスの存在は異質なものと言えよう。またこの掟を破ったものは下位転職するか一生、愚騎士と呼ばれることになる。※他国(聖王国以外)にも聖騎士と呼ばれるものはいるがこのような縛りは一切ない。
翔は、そんな英雄達の一翼を担っていたのである。
彼が引き籠ったのは、丁度二年前。彼がジョブチェンジするタイミングと一致する。
ただ順調にレベルが上がり、戦士→闘士→騎士から上位ランクへ転職が可能になり。
聖戦士
聖剣士
聖騎士
この中から聖王国で一番名声の高いという理由で聖騎士を選んだだけであった。まさかあの様な鉄の掟があるとは露知らず。
そこからが翔の地獄の引きこもり生活の始まりである。
子供であった彼は、友達にバレるかもしれないという理由で学校に通わなくなったのである。
そしてただひたすらにレベル上げの日々と、ロンダルギアでの名声上げに邁進したのである。
そして二年間の苦労と努力によって遂に聖騎士団「ロンギヌス」のメンバーに抜擢されたのである。
「用語集」
ブレスレット
アザークをプレイするユーザーが全て身に付けてる腕輪状の個人識別ユニット。オフラインの時でもほとんどのユーザーが身に付けいて、ゲーム内での身分証確認やコンビニなどでの決済端末がわりになる優れもの。
通貨
およそ100ギルが1円として利用出来ます。
「第一話」
~勇者誕生?!兄上と呼ばれて~
暗く光が微塵も入らぬ部屋で頭から古びた毛布をかけた男が唸る
AM4:52
翔「ぐうぅわっははぅはぁー」
翔「ついに、遂にこの時が来たぞ!?」
瞳は異様な輝きをまし、完全に瞳孔が開ききっている。
彼の名は「佐々木翔」
この物語の主人公である。
引きこもり歴もいよいよ三年目に差し掛かり、
まもなく15歳の年になろうとしていた。
彼が今プレイしているのは「アザークオンライン」
全世界で1億5000万人もが、毎日プレイしていると世界的ヒットしている仮想オンラインゲームである。
そして未だに誰も成し遂げたことのない。
スペシャルクエスト「伝説の勇者」誕生の瞬間である。
翔「くぅーっ、ここまでどれだけの苦労をしたことか…」
ヘッドギア越しでもわかるほど、翔は感慨深そうに何度も頷く。
しかし、それと同時にもう一つの感情も沸き上がってきた。
それは、怒り。
翔「思い返せば、聖王騎士団の聖騎士!マジでクソ設定過ぎるだろ!」
翔「何だ、聖騎士足るもの身分を明かすことなかれって…」
翔「普通なら最上位クラスの聖騎士ならの現実世界でもチヤホヤされて然るべきであって、こんな底辺引きこもり生活することになるなんっ!!!」
そこまで言いかけて言葉を飲み込む。
翔「まぁ良い。それも今日までのこと。勇者となった今では関係のないこと!」
翔「うぐっうふふふふっ」
今度は、大きく笑いだす。
翔「さて、いよいよ明日は就任式だ」
聖王国家ロンダルギア、聖王騎士団ロンギヌスの団長就任式である。アザークオンラインの長い歴史の中でもロンギヌスの団長に就任したユーザーは世界初。まさにアザーク内ではお祭り騒ぎである。
最後の最後まで、団員のライバル「蘭丸」と翔のキャラクター「ショウ」との壮絶な国民投票によって
蘭丸 42.6%
ショウ 50.8%
ギリギリ過半数をとってショウが団長の座を獲得したのだ。