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日常に本を足し算すると  作者: ボル
第1章 具現化の書 優しさの書
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空中から地面に降り立つと水希が駆け寄ってくる。

「凄かったよ、防ぐのも攻撃するのも。」

その一言だけ言って抱きついてきた。

「今は……泣かないよ。」

微かに耳元で囁くと目を拭った。

可愛いやつだ。

「さぁっ、最後の仕事だよ。分かってるんだよね?」

「あぁ!どうするかまでは知ってる!けど、詳しくは分からないから、よろしく」

ちょっと情けなく頰を掻く。

彼女は頼られて嬉しくなったのか口角をにっこりあげて頷いた。


「おぉい!」

先輩が炎の書の落下地点から手招きをする。

「なぁ胸のど真ん中に何かがあるんだが、何だ?」

指差す所には紅く光る鉱石みたいな球体があった。

俺は正体を知っていた。

「これはコアです。先輩方は少し下がってください。」


コア。これも夢の少女が教えてくれたんだが、実体化した本の心臓、らしい。簡単に言うとこれを破壊すれば本の形に戻るって訳だ。本によってコアの場所は変わるらしいが今回は分かりやすい場所だった。

「じゃあまず琉夏、何も考えず“コア破壊の剣”ってのを具現化してみて」

「な、何も考えず?分かった。具現化!コア破壊の剣!!」

エネルギーの玉を握ると、とてつもない重い剣が自分の手にあった。


ズボッと地面に突き刺さる。重すぎて剣の半分ぐらいが地に消えた。

「嘘だろ!?何だこの剣!?」

「あははは!!これはねぇ、特注の凄いのだからね〜!重くても仕方なーい仕方なーい!」

呑気にそう言うが結局持ち上げなくては話にならない。でも、持ち上げれる。自信があった。

「具現化!身体強化、腕!!」

腕にエネルギーが纏わりつく。そう、足の応用だ。

強く握ると爽快な音が出た。

見た目は全くという程変わらないのだが、剣は持ち上がった。両手でプルプルと震えながらだが。


「ぷっ……ださいな〜!」

「う、うっさいわぁ!!早く指示しろよっ!重いんだから!」

「あいあい、じゃあコアに突き刺して。そのままズブッとね。」

指示通りに重い剣を先っちょが浮くぐらいに微妙に上げて、コアの真上に持ってきた。

刺す、というか落とそうとしたその時。頭にとある言葉が浮かんだ。それはなんだか口に出さなきゃいけない様な気がしてしょうがなかった。


「見せてもらおうか、君が日常に足し算された結果をね」

落とす。コアは簡単に真っ二つになった。

先ほど同様に自重で地面に剣は埋まっていく。

コアが二つに割れた時、破片の様に様々な言葉が飛び出した。

(辛い)(助けて)(嫌だ)(楽しい)(ありがとう)

それの言葉達は挟む様に立っている水希の方に吸い寄せられていく。

正確には彼女にではなく、どこから出てきたのか彼女の手にある一冊のノートに吸い寄せられていった。

1ページが光って言葉達が書き込まれる。

だが、水希は言葉一つ一つ読む様子もなく、呆気なく閉じてしまった。

だが閉じた先の表紙には金色の鍵が張り付いていた。その鍵を手渡される。


「鍵、かけてあげて」

足元を見ると剣は消えて、一冊の本に鎖が纏わりついていて南京錠まで付いていた。

「それが炎の書。本は一回実体化して戻されると、この世に影響を与えた分、眠らなきゃいけないの。ね、占いの書?」

まさか振られるとは思ってなかったのだろう。びっくと体が動いてとっさに続けた。

「はっ、はいっ。悪事か善行かにもよりますが、この本の場合はざっと60年程度でしょう。ワールドが無かったら相当の被害だったでしょうから」

つまり悪事だったという事だ。

悪いものには蓋をする。鉄則だな。

俺は本を持ち上げて、南京錠の鍵穴を回した。

鍵をかけると鍵本体は南京錠の穴に吸い込まれていき、手元には本しか残らなかった。

ここでとある疑問がよぎった。


「あれ?契約者っているのかな」

この一言でみんなもはっとした。

「契約者がいないと本は実体化できないよね?」

先輩が本2人に聞くとそれぞれ頷く。

「本と契約者はある程度近くにいないと力を存分に使えないからねぇ。炎柱なんて使うぐらいだから……近くにいるかもね。」

みんな辺りを見回した。

「あ、あれを!」

占いの書が声をあげた。指差す先には木があり、その裏にこちらをじっと見つめる人がいた。


「占いの書!ワールドの中を不可視にして!」

水希が指示を出すと瞬時にワールドの壁が透けた。外から見ると俺たちが消えた様に見えるらしい。

木の裏にいたやつはこちらが気づいた事に気づいたのか、焦って東校舎側に消えていった。

容姿などは遠くて把握できなかったが、先輩は何か引っかかっているのか、考え事をしている。

「もしかしたら、枝島組が関係しているのかもしれない。」

『枝島組?』

俺と水希は息を揃えて言った。


ここから歯車が動き出す。そんなこと、この時は誰も予想していなかった。

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