第八話 力の限り殴ってやりたい
……目が覚めて最初に見えたのは、知らない天井だった。
いつの間にか眠っていたみたいで、体中が痛みを感じている。
「生きてるのか?」
最初に言葉にしたのは、疑問だった。
十二歳ぐらいの少年と命がけのバトルを繰り広げていたような気がするけど、夢だったのか?
そう思いたくても、この体の痛みが現実だったと教えてるようなものだろう。
とはいえ、何で俺は助かってるんだ?
『間違いなく生きてるの』
俺の疑問に、アムリタは当然だと言わんばかりに答えた。
いや、生きてるのは理解できたけど、どうやって生き残ったのか記憶に全くない。
むしろ途中から何をしてたのか綺麗さっぱりに抜け落ちてる。
「なんで生きてるんだ?」
『倒したから生きてるに決まっておるだろ?』
的を得ない答えが返ってくる。
俺が聞きたいのは、何故あの理不尽な戦いからこの病院のベッドで寝ているのかを聞きたいのに、それはあれか、きちんと聞かなければ、答えないって事か?
「あー少し記憶が曖昧なんだが、どうやって倒したんだ?」
『どうやって? 敵が勝手に自滅したとしかいえんな』
何やらあの少年は、勝手に自滅したっぽい。
まぁ細かいことはいいや……生きてるんだし。
にしてもだ、何で俺は病院にいるんだ?
いや、怪我してたら病院に運ばれるだろうけど、あの後何があったんだ。
思い返してみると、魔術師という彼奴は何故に俺を襲ったのか、疑問だけが残った。
そもそも魔術師って存在が何者なのかって話だ。
あきらかにファンタジーの住人な設定だと思うが、同じ存在のアムリタなら知ってるだろう。
「なぁ魔術師って、結局何なんだ?」
『一言で言えば、魔術書と魔法使いの天敵と言ったところかの』
先程からアムリタは、態とかと言うぐらい欲しい答えの一歩前ぐらいしか答えない。
魔法とか絶界の時は、きちんと説明してくれたのに、どこか変に感じる。説明したくないのか、投げやりな感じだ。それは口調にも表れているので、分かりやすい奴なのかも知れない。
とはいえ、聞かないわけには行かないので、根気よく話を続ける。ただし、前みたいに怒らせないようにしなければ……。
「その天「オッス、お!!起きてるな」……コウスケか」
聞こうとした途中、唐突に病室のドアが開いたかと思えば、コウスケが場違いなぐらい明るく入ってきた。見舞いの品らしい植木鉢を窓辺において、心配そうにしているのは、嫌がらせかと思える。
「災難だったね、まさか自爆テロに巻き込まれるなんて」
「は?」
何を言ってるんだ此奴……。
全く意味の分からないことを言われ、困惑している俺の様子に「え? 覚えてないの?」と信じられないという感じで、コウスケが再度尋ねる。
覚えてないのかと言われたら、覚えてないけど、自爆テロって何の話だ……余計に意味が分からん。
詳しく話を聞くと、どうやら俺は学校に来た不審者の自爆テロらしいものに巻き込まれたらしい。
その不審者がいつ学校に来たのか分からず、気がついたら廊下一面、犯人の肉片が飛び散っていたらしい。その中で俺が、怪我をして倒れていたらしい。
話が曖昧なのは、気がついたらそうなっていたと言うことだ。確実な目撃者は皆無。
先程のアムリタも、敵が勝手に自爆したと言っていたし、間違いないのかも知れない。
とはいえ問題がある。あの結界で死んだものは、現実に残ると言うことだ。
絶界とは違い、下手なことをしたら事件になると言うことか……もう二度と関わらないと思うけど、覚えておこう。
「それにしても、同じ日に立て続けに事件とは、恐ろしいもんだね――」
軽いのりで、コウスケがそう言うが、自爆テロ意外に事件などあっただろうか?
街中で事件がいくらあってもおかしくは無いが、コウスケの言い方的に身近におきたということだろう。必然俺の身近と言うことでもありそうだが、正直これ以上抱え込みたくない。なんか、聞いたらろくな事がなさそうな気がしないでもない。
「……大変だな」
だからこそ全力で流すことにした。
今だって魔術師やら魔法やらで脳を酷使してるのに、現実の重しまで来たら折れる自信しか無い。
触らぬ神に祟りなしだ。
コウスケもどうやらこれ以上俺に負担をかけるつもりもないらしい、明るい表情をして明るい話題に方向転換しようとしてるみたいだ。
普段の俺ならあまりのったりはしないが、今の俺ならお前のどうしようもない話に全力で乗るぜ!!
「榎宮さんの両親が殺されて、榎宮さん自身行方不明らしいぜ」
何だお前俺に喧嘩売ってんのか? 一言で言えば俺はそう感じた。
たぶんすごい呆けた顔をしていたと思う。コウスケはそんな俺を気にする様子は無いようだ。
あまりにも唐突すぎて、だからといって俺にはあまり関係のないはなし。
そもそも榎宮って誰だってぐらい、覚えてもいない。一応クラスメートというぐらいは覚えてるけど。
まぁインパクトのある話題ではあるが、明るく話す話題でもないだろう。不謹慎極まれりだな。
「そんな意気揚々と話すことでは無いと思うんだが?」
「いやー明るく話した方が、良いのかなって思ってさ」
こいつの認識が俺には今一分からんが、元からこういう奴だというと諦めも付くか……。
態とらしい大きなため息をつくけど、コウスケは肩をすくめて困ったねみたいな反応をする。お前はどこぞの外人かとツッコミたいが、その反応は喜ばれるだろうと思い何も反応はしない。
「あーアレだ、色々なことが一日の間に置きすぎて、どう反応して良いかわからんな」
「まぁ自爆テロも榎宮が行方不明なのも二日前の話なんだけどね」
更にとんでもないことを言いやがるな!!
つまりアレか、俺は二日間寝込んでたという事か? 新事実過ぎるというか、それから言えやと沸々と怒りがわいてくるけど、冷静になれ俺!! と心の中で我慢する。
「……俺は二日も寝込んでたのか?」
「あ!!もう面会の時間が終わりだ、じゃまた来るわ」
「お前何しに来たんだよ!!」
コウスケは良い笑顔でそのまま病室を出て行った。
気を遣わせないようにしたのか、それともただの嫌がらせなのか、自問自答してみるが、多分後者だろう。
彼奴あんな性格だったか? ふっとそんなことを思うが、出会ってまだ一年ぐらいなのだからそんなに深く知っているわけでもないだろう。それに、彼奴はふざけた奴だとは思うし。
それにしても聞かされた話は、どれもこれも軽い話では無かった。
今のところの心配は、差し詰め二日間の入院費だろうと思いながら、窓辺に飾られた鉢植えを見ながら思うことにした。ってか、見舞いの品に鉢植えって、どういう事なのだろう。
あまり考えたくもないので、俺は再び眠ることにする。
「なんか……つかれたな」
ポツリと呟いた言葉だが、今の俺の心境そのものだと苦笑する。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
時間を遡ること、それはキョウヤがクレメンテスとの戦いを見守っていた黒いローブを羽織った、裏葉色の髪をした短髪青年の青年は、結界の崩壊と同時にその場を離れる勢いで、距離を離していた。
眼鏡の奥に見える瞳には、動揺の文字が見て取れるほど、自分で見た何かを信じられずにいるようだ。
彼の名前は、ルザール本日の戦いの仕掛け人の一人であり、クレメンテスが死ぬ結果になるとはつゆほどにも思っていなかったからだ。
その理由は至極単純で、彼の張った結界内では、魔法を外部に向けて発動できないようにしていたからだ。敵が魔法使いの場合、この結界は凶悪極まるものであり、接近戦に関して昨日の様子からクレメンテスが遅れを取るとも思えなかったからだ。
そう魔法と魔導書を召喚できない状況であれば負けるはずが無いと確信していたのだ。
なのに何故今は、必死に逃げているのか? その答えは至極単純で予想外の結末だったと言わざるおえない。
「……何故だ」
彼のつぶやきはもは、先程見た光景を否定したいという一心が含まれていた。
彼の見たものは、圧倒的な暴力だった。
最初はクレメンテスがいつもの調子で遊んでいるなと、終わった後に叱咤ぐらいするかなんて余裕な気持ちで見守っていた。
それが蓋を開けてみると、キョウヤの動きが明らかに常軌を逸したモノになったのだ。
更に信じられないことに、キョウヤは魔術を使い始めたと言うことだ。
自分の血を使い、幾何学的な魔方陣を瞬時に書くあれは並大抵の魔術師では無いと思わせるほどの技量だった。
じゃぁキョウヤは、魔術師なのか? 否、そんな話は聞いたことがない。
いや、正確に言えばとある実験で、出来た可能性も否めない。だが、ルザールはその実験の結果でまだ成功したものがいないのを知っている。だからこそ、キョウヤが魔術を使ったのが信じられないのだ。
借りに魔方陣を書けたとしても、空気中の魔素の操作術を会得しなければ発動すらしないはず。
なのに発動したと言うことは、キョウヤが魔術を使ったという認識は間違いではない。しかも戦闘の間に、張られた結界にまで干渉しようとしていたのだから、ルザールよりも卓越した使い手であるのは間違いない。
そんなのが、日本の高校にいる? ふざけるなとしか言えない。
いや、日本の魔術協会は、此方をだまし討ちしたのではないだろうか? 確かにおかしいと思えることは、いくつかあった。
それは、本国より離れたこの地に、派遣されたときから思っていた。何故態々? 最初は日本の魔術師の質の低さのせいだろうと思って鼻で笑っていた。
他国に頼るなんて、日本はプライドを捨てた負け犬の国だなんて、本国では言われていたからだ。
ルザール自身それに同意していたし、今までこの様な依頼が来たことが内から余計に馬鹿にしたのだ。
だが、此方の技量より圧倒的な魔術師がいた。しかもそいつは魔術書を召喚して魔法すら使える。
それはつまり、魔法使いであり魔術師である最悪の敵ということだ。
日本の魔術協会は、この事を黙っていたのではないか? あわよくば潰してくれる借りに、此方に被害があったとしても何も痛むところはないのだから。
もしかしたら何も知らない本国に、責める要因を作ってしまうかも知れない。
だからこそクレメンテスの死体を置き去りにしても、この場を離れなければいけなかった。
報告しなければ、、日本の裏切りを……。
このまま闇に葬られてたまるか!! とはいえ、今は敵国……安全な場所など、限られている。
他の魔術師もこちらを見張っていたかも知れないと油断できない状況だった。
『クソッ!!この屈辱かならず晴らしてやる』
怒りでわめき散らしたいというのを我慢して、心の中で叫んでいた。
隠蔽の魔術をつかい屋根を一つ一つ飛び越えて、さらに街の外へと逃げていく。
油断はしていないが、焦りは確かにあった。あの惨い暴力をみて動揺しない人間がいるだろうか? 少なくともルザールは動揺せざるおえなかったのだ。
どんなに心の中で、冷静を訴えかけてもほんのわずかな焦りが、現実に押し寄せてくる。
だからこそ、普段ならしない些細なミスをしてしまうこともある。
彼は気がつけば死のゆりかごの中にいたのだ。
絶界それは現実と訳隔てた空間
入ったものは、死ぬか殺すかしかない0か1かの選択肢だけが用意されている。
青白い空間に、ルザールは足を踏み入れてしまった。
運が悪い……何故なら絶界の発生位置なんて予測できるモノでは無いからだ。
借りに出来た絶界なら気づけただろう。何故気づけなかったのか、それはルザールを中心に絶界が広がったというのが、原因でしかない。
何も絶界に入ってしまったことがミスなのではない。ミスはその事に必要以上に動揺してしまったことだ。
今まで完璧に警戒していたものを、その一瞬気をそらしてしまったことだ。
「絶界だと!!」
狼狽し慌てふためく。だが、何故絶界が出るのか、何のための空間なのか忘れてはいけない。
「ねぇあなた、私の獲物に何手を出してるの?」
そう、そこの主は、ルザールの耳元でささやいていた。
それは人の上半身を持った大蜘蛛の女。アラクネと呼ばれる怪物に酷使した姿。
腰元まで伸びた黒い髪、目の色は黒と赤が入り交じったように濁っている。大蜘蛛の下半身が無ければ美人と言っても差し支えないだろう。だが、口元からは八重歯が異常に発達して牙みたいになっている。
何より大きな胸を素肌をさらしているのは、なんとも言えない妖艶さをかもちだしていた。
もちろんルザールは、即座に対応しようとしたが、それは出来なかった。
すでに彼の体は、蜘蛛の糸で雁字搦めになっていたからだ。
それはすでに運命が決まったと告げられているようだった。
こんな状況になったのは、運が無かったせいだ、なんて認めたくない。
誰かに嵌められた、そう思いたかった。せめて恨むことで死にたかった。こんな無意味なしなんてルザールは認めない。だからこそ、アラクネをもした"裏返りし者"の言葉の意味を知りたかった。
「獲物って何のことだ!!」
「今さっき彼にちょっかいをかけてたじゃない」
何を言ってるのという表情のアラクネらしい何かは、しているが、その言葉がキョウヤを指しているのだとルザールは理解した。
もしかしてここまで計画的に練られていたのだろうか?
真実はわからないが、ルザールの中では嵌められてとしか思えなかった。
ルザールは、半生を振り返っていた。それは軽い現実逃避だったかも知れない。
そんなことはアラクネらしい何かには関係なく、鋭い牙をルザールの首もとに押し当てる。
その牙からは、蜘蛛特有の麻痺毒がルザールの体の中に打ち込まれるのだ、これにより完全に逃げることが出来なくなってしまう。
逃げれなくなった獲物を見て、笑みを深めるその様子は、これから起こることえの楽しみを想像しているみたいだった。
「あ……アア……」
情けない泣きたい気持ちが押し寄せてくるが、毒が回る度に思考がだんだん回らなくなっていく。
あまりにも徹底的な容赦のひとかけらもない行いに、希望の文字すら浮かばない。
「あら、汚らわしいですね」
アラクネらしい何かは、ルザールの下半身に目をやると、生存本能のせいか彼の逸物は膨らんでいた。
それは男性の急所であり、弱点であることを無論誰でも知っている。
だからこそ、攻め手みたいどうなるのか見てみたい、そんな好奇心がルザールの急所を細長い糸で容赦なく切り落とした。
「アガアアアアアア!!」
白目をむき出しに泡を吹くルザール、ビクンビクンと体を震わせる様子は、死にかけの虫のように見えるかも知れない。
赤く染まったルザールの下半身は、男性に取っての大事な者を失ってしまっていたが、アラクネらしいものが手をかざすと再度、蘇るように再生した。
それはかつてムヨクと呼ばれた者が使っていた、魔法。
「ふふふ、これは便利ですね。まだ楽しめそうです」
無情としか言い様がない、死に体すら生き返らせる魔法がもし敵の手に無ければ、ルザールは簡単に死ねることが出来たのかも知れない。
希望もない男にこれ以上絶望で染め上げるのは、人外だからなせる技なのかもしれない。
実に楽しそうに、打撃を加えたり千切ってみたり急所を責め立てる。その度に様々な反応を見せる玩具に笑みを深めている。
さらに、腕をもいでみたり、ねじ曲げてみたり、臓物を食らってみたり生皮を剥いでみたり、終わることの無い拷問を繰り返す。
精神的に狂えれば良かったのだが、魔法がそれすらも許さない。
この誰も邪魔の入らない空間で、玩具は大事に大事に壊され続ける。
何故必要以上にそんなことをアラクネらしい何かが繰り返すのか、それは絶界では普通の生物は、何も反応できないからだ。
だからこそ、反応できるルザールは貴重な玩具で、獲物に手を出した憎い敵でもある。
「ゴロジ……デ……グダザイ」
「だーめ、まだまだ遊び足りないわ」
ルザールの懇願する思いも、全てを踏みつけて遊び続ける狂った存在。
これが、裏返りし者という存在だと、そう感じ取れるほどに常軌を逸した光景だった。
遊びながら、だけど確実に絶界は街を染め上げていく。
愛しいあの人が、この絶界に入るまで、楽しい玩具で遊び続ける。
青い空間の中、生物のいない世界で、少女の笑い声だけが響いていた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
暗闇の中、俺は佇んでいる。これはいつも見る夢なのだろうと納得する。
どうせ目覚めた時には、全てを忘れる都合の良い夢だ。
懐かしの風景も見ることがあるが、それが事実なのかは不明。所詮人の記憶なんて脳に蓄積された情報でしかないのだから。何をもって真実かなんて誰にも分からない。
周りを見渡すと無数の生首が転がっている。その全てが俺の頭。
生首共は、何かを言っているが、今の俺には何を言っているのかすら分からない。
「俺は……誰だ」
その答えを誰も持ち合わせてはいない。
誰も答えてはくれない。
だけど答えを求めている。
確固たる自分は無く、偽りでしか無いと知っているからこそ、求めるのかも知れない。
だが、夢から覚めたらその事も忘れてしまう。
だってこれは、所詮夢の中の戯れ言にしか過ぎないのだから。
「俺は……誰だ」
目の前に現れる鏡には、俺の姿が映っている。
だがそれを自分だと強く思えない。
自分の意思で動く体すら、偽りに感じてしまう。
何故そんな風に思うのか、何か原因があるのか、そんな問いに自問自答するが無論答えなど出ない。
「お兄ちゃん……私の願い叶ったよ」
「好きです、付き合ってください」
「この旅が終わったら、あっちでも会いたいな」
「一緒に……部活をしませんか?」
そこに聞こえる無数の俺ではない声。誰に何を言ってるのかわからない。
何を意味する言葉なのか分からない。
まるで狂気の世界……いや、狂気そのものじゃないだろうか?
こんなのを現実で覚えていたら気が狂ってしまいそうだ。
夢で良かった……起きたら忘れられる夢で本当に良かった。
そう思わなければ壊れてしまう。
いや、もう壊れ始めてるのかも知れない。
平穏だった日常に、限界が来ているのかも知れない。
「あと、どのぐらいもつんだろう」
その疑問が頭をよぎる。でも、誰も答えてはくれない。
何故この様な目に遭わなければいけない、何か俺は罪を犯したのだろうか?
もし俺が罪人だとしたら、許される日は来るのだろうか……。
見知らぬ男が、夢の世界でたき火をしている。
その炎は青黒い現実味を帯びていない色合いだった。
男は此方に気付くこと無く、黙って炎を見ている。
声をかけようかと思ったが、そこでいつも目が覚める。
「……ああ、そういえば病院だったな」
何か夢を見た気がするが、多分気のせいだろう。
印象のない夢は、記憶に残らないって言うしな。
外はもうすぐ夕暮れ、その色を見ると不安が心の中に広がる。
たぶん、夕暮れに良い思い出がないせいかも知れない。
なんとなく街が血に染まってるようにも見えるのだ。
痛む体をベットから起こして、窓の外を眺める。
眼下に広がる街並み……ただ、呆然と眺めていた。
そして、青い空間が迫っているのも見えてしまった。
『絶界が来るぞ』
「最悪だ……何もかも最悪だ……」
もし神様がいるとしたら、俺はそいつを力の限り殴ってやりたいと心の底から思った。
二日か三日おきに更新できたら良いなと思っています。
ちょっとずつ読んでくれる人が増えると、どう思われてるかはともかくとして、嬉しいですね。