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黎明のイチロ 〜空から落ちた支配者〜  作者: 作読双筆
第一章 放浪の支配者 〜 スマホと刀と唯一魔法〜
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第九話 流れて来たサメ?

ストーン・ベアとの戦いから数日。壱路は今エン滝と呼ばれる滝の上にいた。エン滝にはハクラアユと言う魚がおり、それはこの世のものとは思えないうまさだと聞き、興味に引かれやってきたのだ。



「よしっ。また獲れた」

「やりましたね〜!これで5匹目です〜!」

「(すご〜い、すごい!イチロかっこい〜!)」

「そりゃそうですよ!マスターはちょっと抜けてるけどかっこいいんです!」

「おい・・・」



ガイシとフォウンから褒められた。この数日の中でフォウンにガイシが意思を持っていて話せる事を打ち明けた。最初は壱路が倒れた時の事で険悪だったが今ではすっかり仲良くなってる。そんな事を考えながら壱路はまた魚に意識を集中させる。今壱路がやっているのは釣りではない。

ストーン・ベアとの戦いで手に入れた〈間接開放〉を使い魚を引き寄せているのだ。



この〈間接開放〉、使う魔力は〈直接開放〉より魔力消費が高い。それに撃ち出すように魔力を放つので、支配したい対象が外れたら元も子もない。それに幾ら魔力が高いといっても使い続ければいずれ無くなるので、戦闘でも使えるように練習していたのだ。



(まぁこれがあれば遠距離からでも戦えるからな、精度も上がってきたし)



そんな事を考えながら指で銃の形を作り、

またハクラアユに向け魔力を撃ち出す。



するとハクラアユが壱路に向かって引き寄せられる。壱路は重力を操作して引き寄せているのだ。

ハクラアユは普通のアユに比べてデカイ。なのに獲れにくいのはその素早さにある、しかし気づかれる前に引き寄せるので結構楽なのだ。



そんな事を繰り返していると、かなりの数のハクラアユが獲れた。これくらいにしてそろそろ引き上げようとするが・・・。



「マスター、あれ・・・」

「ん?」



ふと見てみると遠くになんか青くてでかい背びれが浮かんでいた。まるでそれは・・・・。



「・・・サメ?」

「サメですね」

「(サメって何〜?)」

「サメって食えるのかな?」

「食うんですか?!」



フォウンのツッコミを聞き流して壱路は背びれに狙いを定める。

何故こんな滝の上流にサメがいることに疑問を覚えるが、それは捕まえてから考えるとする。このままでは流れて滝に落ちてしまうからだ。



「来い」



壱路が魔力の弾丸を放つ。そしてそれは見事命中し、サメを引き寄せるが・・・。



「あり?」

「(ほえ?)」

「これは・・・」



それはサメではなく、サメの背びれと尾びれを持つ()()だった。青い髪を持つ男で容姿はまあまあ整っている。服装は荒々しいインディアンの民族衣装みたいな物、装備は剣と布袋と小さいバッグ、体にはあちこち傷がついている。相当弱っているみたいだ。



「なんだこのサメ人間は」

「マスター、この人は獣人族ビストマですよ。」

「え?獣人族ビストマってサメもいるのか?」

「はい、サメはもちろんイルカやイカもいるみたいですよ」

「イカもかよ・・・」

「それよりもこの人相当弱っていますよ。このままじゃ」

「う〜ん、けどこの人他人だし僕に得ないし」



基本的に壱路には無償の善意などはない。自分に関係ない人のことを考えることはないし、見捨てることに感情の呵責は感じないリアリストなのだ。けど人情家でもあるという相反する性格なので悩んでいるのだ。



「マスター、この人助ければ、獣共和国についていろいろ分かるんじゃ・・・」

「よし、助けよう」



自分に有益そうな物があると即座に考えを切り替え行動に出る壱路だった。



「癒せ」



そしてすぐに男を魔法で治療する。実は人にも魔法が効くのかの実験でもあったのだが、それは秘密である。



「お〜い、大丈夫か〜?」

「・・・・・うっ、ここは?」

「ここはエン滝だよ」



男は無事に意識を取り戻した。そして起き上がるとこちらを見てこう言った。



「お前は・・・・・誰だ?」

「人の名前を尋ねる時はまず自分から名乗るものじゃないのか?」

「うっ・・・・そうだな。俺はアルシャーク・シラード。冒険者だ」

「へえ、ボクはイチロ・サガミ、同じ冒険者だ」



サメ人間・・・・いやアルシャークはイチロと同業の冒険者みたいだ。



「いやー、驚いた驚いた。川にサメがいるのかと思ったらまさか獣人族ビストマだったとは思わなかったぞ」



そう言ったらアルシャークがいきなり剣を喉元に突きつけてきた。その剣はまるでノコギリのような形状だった。そして彼の顔が険しくなっている。



「おいおい、穏やかじゃないなぁ」

「・・・・なぜだ」

「?」

「何故俺が獣人族ビストマだと分かった?」

「いや、そんなのその背びれと尾びれ見れば誰でもわかるでしょ」

「っ?!無意識に出していたのか・・・・・何故俺を助けた?俺は獣人族ビストマだぞ?」

「は?関係ないだろ。あんたが獣人族ビストマだろうがなんだろうが、僕は気にしない」

「えっ?!」

「確かに助けたのはあんたから獣人族ビストマや【獣共和国】の事についていろいろ聞きたいという打算があったからだ」

「・・・何故」

「観光」

「?」

「僕は【獣共和国】に行きたい。というかそれが今の僕の目的だ」

「なっ?!お前人族(ヒューマ)だろう?なのに【獣共和国】に行きたい?正気なのか!?」

「ん?大真面目だぞ?」

「今世界は緊迫状態なんだ。人族ヒューマが【獣共和国】に行くなど正気の沙汰さたじゃない!しかも観光だと?!」

「どうでもいいよ。世界の事なんて知らん。僕は僕のやりたいようにやる。誰も僕の邪魔はさせない。邪魔するなら力尽くで排除するぞ」

「・・・・・・・・・」



アルシャークは絶句していた。今世界はいつ戦争になってもおかしくないのだ。なのに【獣共和国】に、しかも観光で行くとこの人間は言っているのだ。



「・・・・・・・・・・っく、ハハハハハ」「ん?」

「ハハハハハハ、くーはっはははははは!」

「なにがおかしいんだ?」

「いや、悪い悪い」



アルシャークは剣を鞘に収めた。



「思い出したんだ。お前みたいな人族もいることを」

「ふーん」

「しかし観光か・・・今のご時世でそんな事で旅している奴がいるとは」

「あー、こっちの話はもういいだろ。今度はあんたに聞きたい。なんで川にどんぶらこと流れていたんだ?」



そう聞くとアルシャークはハッとなって顔が真っ青になった。



「そうだ、俺は・・・・行かなきゃ!」

「おい落ち着け。なんかただならぬ感じなんだが・・・何があったんだ?」



そしてアルシャークは事情を話してくれた。あったばかりの見知らぬ他人しかも人族ヒューマに事情を話すとはとんだお人好しだが何故かアルシャークは壱路を信用した。彼は絶対に裏切らないと確信に似たものがあったのだ。



アルシャークは妹と二人で【獣共和国】に帰るために旅をしていたらしい。



「妹といっても血の繋がりはないんだが、俺にとっては命より重い存在なんだ。それに何と言ってもあの笑顔は(以下略)」

「・・・・」



壱路は内心で、アルシャークはシスコンだと認識した。



「あいつのためなら俺はモンスターのウ○コだって食ってやるぜ」

「いや、それ人間として終わっているから。さっさと話を戻せ」



アルシャークの妹談を終わらせ話を戻す。



「(あれはもう変態だな)」

「(これは間違いなく変態ですね〜)」

「(へんたい〜〜?)」



壱路達は全員一致?でアルシャークを変態扱いした。



話は戻るが、そして旅をしている途中ある街に立ち寄ったのだが、そこで厄介な連中に目をつけられたらしい。その連中の名は。



「ブタのクソ?ずいぶんと汚い名前だな」

「いや違う。ブダノストだ」

「どちらにしても汚物のような奴らなんだろ?」

「あぁ、わかったよ。それでいい」



そのブダノストという連中は奴隷売買で有名な組織で今まで多くの獣人族ビストマ魔族デーマ、同族の人族ヒューマも奴隷として捕らえられその餌食になったらしい。



「あいつらは俺の妹の美しさに目をつけ捕えようとしたんだ。もちろん俺たちは抵抗した。だが多勢に無勢、俺は追い込まれ川に落ちた・・・・」

「で今に至ると」

「あぁ、あいつらは妹を今日のオークションの目玉にするらしい・・・だから俺は妹を取り戻したい!」



アルシャークは顔を歪めながらそういった。無理もない、血が繋がってないとはいえ妹は彼にとって命かけて守りたかったものの筈だ。それを守れなかったのだ。相当ショックに違いない。だからこそ取り戻したいのだろう。



「お前は俺を助けてくれた。だがこれは俺の問題だ。お前を巻き込むわけにはいかない、それに妹にはちょっと厄介な事情があるからな・・・・」

「(どうします?マスター、これは間違いなくマスターの大嫌いな厄介事ですよ)」

「(イチロ、どーするの?)」

「・・・・・・・・なあ、アルシャーク」

「なんだ?」

「あんたさ、なんか得意なことってある?」

「へっ?・・・・・・一応料理が得意だ」

「料理?」

「これでも料理人を目指しているんだ。冒険者になったのも材料がほとんどタダで手に入るからだ」

「よし、それなら十分だ。」

「?」

「今ここにはハクラアユがある。あんたがこれを調理してくれ、その代わりあんたの事を手伝ってやるよ」

「・・・・・・・・はぁ?!」

「僕もそのブタのクソのオークションに乗り込む、そしてあんたの妹を助ける」

「いやブダノストだ・・・って違う!何故だ!お前は関係ないだろう!それに・・・」

「打算はありありだぞ?どうせうまいものを食べるなら料理の得意な奴に頼んで作って貰った方がいい、僕にとってそれは十分なメリットだ。それに僕はこの世界について知りたい。良い所も悪い所も。あとは僕のルールに従って、かな?」

「ルール?」

「一度関わったことには、最後まで関わりあう。それが僕だ」



そう、それは壱路があの時から自分に誓った信念。壱路を根源から支えるものの一つ。

それが壱路のルール。



「・・・・・お前馬鹿だろ」

「バカじゃない。少なくともあんたよりはバカじゃない」

「これじゃあ、俺が断っても無理矢理付いていくだろ?」

「多分」

「・・・分かった、頼む。妹を一緒に助けてくれ」

「じゃあ、契約成立だな」



壱路とアルシャーク。のちに『闇鴉やみからす』と『青鮫あおさめ』と呼ばれる二人の出会いであった。

次回!


ブダノストの奴隷オークションにたどり着いた壱路とアルシャーク!

それを見て壱路が思うものとは?!


乞うご期待!

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