第七十九話 決着と奇跡と幕引き
今回最終話です!
「集え、形となれ、甦れーーー《蘇りの太陽》」
壱路が呟くと手元にオウリュウの破片が集まっていく。
そして一瞬、輝きと共に壱路の手には一振りの刀ーーオウリュウが何事もなかったかのように握られていた。
「大丈夫か?オウリュウ?」
「(イチロ!)」
その様子を見ていたダンテは怒りを露わに叫ぶ。
「何故だ…何故お前が魔導の力を!」
「怒りに囚われていた時、僕は分裂していた自分の人格と一体化した、そして魔導の力を手に入れたんだ!」
ヒューリーと一体化した事で魔導の力を得た壱路。
《創破支配》、創造と破壊という相反する力を支配するーーーそれが壱路が見出した力だった。
「もう負けないよ、……俺はもう何もお前に奪わせない!」
「ちっ、ぬかせ!」
「支配之鎖!」
どこからともなく鎖が現れダンテを拘束する。
壱路はその隙を逃さず、刀に今ある全ての魔力を込め、振りかざした。
「《可夢偉・荒羽刃牙》」
その刃は切断と破壊の重ね技、切られたものは例外なく遺伝子レベルまで滅ぼされる。
ダンテに刻まれた傷は徐々に体を侵食し崩壊させていく。
「ぐ、ぐあああぁぁぁぁぁぁ!」
その断末魔を最後にダンテは骨のかけらも残さず消滅した。
壱路はそんな事に興味も無いのか、脇目も振らず歩き出す。目指す先はリュアの近くだ。
「…なぁ、リュア、目を開けてくれよ」
その声に応えるものは誰もいない。
「僕は何も守れてないじゃないか。世界を守った?そんなの意味ないよ。僕はただ、目の前の人が消えるのが嫌だっただけだ、この力はその為にあった筈なのに!それなのに……」
ついさっきまで感じなかった後悔が押し寄せてくる。
守れなかったーーー。その事実が壱路を追い詰める。
「…ごめん、リュア…終わったら、また笑えるようになるから、今は……いいよな」
地面に頭をつき、顔を伏せる。その陰に雫が落ちた。
涙だ。
壱路は泣いていた。誰のいない空間で人目も気にせず、大声で泣いた。それは母が死んだ時以来の事だった。
だが次の瞬間、泣くことも忘れる出来事が起きた
「イチロ……さん?」
耳を疑った。突然聞こえてきた声、それはもう聞けるはずのない声だから、恐る恐る見てみると…。
「リュア?!」
見るとうっすらと瞳を開けてこちらを見つめているリュアの姿が目に映った。リュアは生きていた。
実はあの時、リュアの心臓はまだ微かに動いていた。そこで壱路が《創破支配》を発現した際、そのことに気づいたルーキフェルがちゃっかり治療を施していたのが真相だ。後で壱路に問い詰められた際フォウン…いやルーキフェルは壱路に笑いながらこう語った。
(いや、後で実は奇跡的に生きてた!って方が展開的にいいじゃないですか、そんで主人公はヒロインに愛の告白って感じで…あ、いや、すいませんすいません調子に乗りすぎました、ごめんなさーい!)
その結果、壱路にこってりと絞られたのは言うまでもない。
ともかく、壱路はリュアに抱きついて涙を零した。しかしその涙は悲しみではない、喜びの涙だ。
「……よかった、よかったぁ!」
「ふ、ふぇ?!」
その間に壱路の《暗きもの》によってできた球状のドームが壊れていく。どうやらこの空間をとどめておくのに限界が近いのだろう。
戦いが終わる事を実感しながら壱路はリュアを再度抱きしめる。
まだまだ謎は残っているが、今は、今だけは勝利の余韻に浸っていたいから。
壱路の旅は一旦ここで幕を閉じる。
いつかまたこの物語の続きが語られる時、その時までーーーどうかこの物語の事を記憶の片隅にとどめて欲しい。
終。
長い間応援していただき本当にありがとうございます。
壱路の旅はここで一旦終了しますが、その後の展開は是非読者の皆様が想像してもらえたらなと思います。
本当にありがとうございます!
 




