第七十五話 古の魔神と赤い塔
一ヶ月の時を超えようやく新章の一話を仕上げました八握です。
今回で第八章に突入します。
どうぞよろしくお願いします
グラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラ!
地面が揺れる。揺れる揺れる揺れる。
「ちょ、揺れ過ぎなんだなぁ!!」
「き、きゃあ!」
「ぬわわわ!上から瓦礫がーーー!」
「よ、避けっ•••無理ですー!」
それに上からは瓦礫の山が降ってきた。このままでは全滅は避けられないだろう。
そしてリベルオ・アサナとこの状況では戦うことすらままならないと感じた壱路はスマホ(フォウン)を取り出しこういった。
「こうなったら一時離脱だ、フォウン!」
「よっ、待ってましたよマスター!逃げましょう!そうしましょう!」
「移動だ!対象はリベルオ・アサナ以外の生命反応があるもの、場所はどっか広いところで!」
「リョーカイ!」
そう行った途端視界がぶれていく。移動が始まったのだろう、その様子を見てダンテはあからさまな挑発をする。
「逃げんのか?臆病風に吹かれたか•••」
「逃げは立派な状況を打破する手段の一つです。これは戦略的撤退なんです!」
「ふーん••••、まぁいいや、どうせあとでまた来るんだろ?」
そして二人の視線がぶつかる。そして彼らは最後にこう締めくくった。
「「じゃあな、次会う時はお前の最後だ」」
お互いに同じセリフを言い残してーーーーーー。
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後日•••••。
なんとか脱出に成功した壱路達が居たのは魔王国の闘技場だった。そこには花街の住人達もおり、そこから色々あって(語るのが面倒なんじゃない、本当に色々あったからだ!)ようやく事態がひと段落したので現在置かれている状況をまとめる事にした。
「それではこれより【バンヴンダーネ同盟】のリベルオ・アサナ対策会議を開始する!チャンドラ、概要を説明しなさい」
「承知したーーー」
その会議では忙しい中それぞれ仕事は信頼できる部下に丸投げしてきた、各国の代表者達が魔城【ニブルヘイム】に集まっていた。
人族代表は帝王ジャック・ライトベア。
魔族代表は魔王ピア・リアスピナ・エクリプス。
獣人族代表は獣王ナガザ・レオズ。
精霊族代表は族長である妖狐クズノハ。
落人族代表は幼い風貌ながら白夜姫と呼ばれたサキラ姫。
そして外部協力者として壱路も参加する事になった。
「ーーーーーーという経緯を経て、現在【トウゲン】は敵に占拠されているという状況になった。そしてさらなる情報を得る為、斥候を放ち偵察中。何か意見は?」
司会進行を務めるチャンドラの説明が終わると同時に手が挙がった。
ジャックだ。
「そもそも連中は何をしたいんだ?」
「確かに、奴隷売買、人体実験から改造魔物、果てに違法な魔道具に手をつけて••••」
「•••案外、ダンテが言ってた世界を滅ぼすってのは間違いじゃないかもな」
「私もそれはわかるわ、でも、それだけじゃない気がする•••••そういえば、クズノハさん、ダンテが壊したあの玉の事、何か知ってるようだけど」
「••••••はい」
ピアの疑問に、クズノハは少し影のある表情をして話し始めた。彼女が言うに、今から五千年前、この世界に五体の異形の類いが出現した。最初は魔物だと思ったがその凄まじ過ぎる力はあらゆる生命が為す術なく倒れていった。
その力とおぞましき姿から人々はそれを『魔神』と呼んだ。
五体の魔神はそれぞれ、
赤の『苦痛之砂』、
青の『悲哀之海』、
白の『破滅之光』、
緑の『快楽之嵐』、
黒の『絶望之闇』と呼ばれ、世界に甚大な被害をもたらした。
その後、魔神は初代精霊族の族長であったクズノハの祖母、タマモと初代魔王ソング・リアスピナ・エクリプスを始めとした各国の王達がなんとか五つの玉に封印したそうだ。
「で、それを人帝国が隠し持っていたと」
「私も祖母が存命の時、祖母はその玉が何処にあるのかは知らないと言っていました。まさか人帝国が持っていたとは••••」
「ん〜、じゃあ、奴らはそのトンデモ魔神を復活させて何させるつもりなんだか•••」
また話が振り出しに戻った、しかしリベルオ・アサナを放って置くわけには行かないので一先ず状況が変化があったら動き出すという事で会議は終わった••••筈だった。
「た、大変です〜!」
会議室の扉が勢いよく開きそこから先大きな声と白い影がその場を切り込んできた。
リュアだ。
「あれ、リュアちゃんどうしたの?」
「そ、外!外を見てください!」
その慌てた様子に一同は不安に駆られ外に続くテラスにでた。そして見てしまった。
「あ、あれはなんじゃ!」
「ぬ、ぬおわぁ!」
「(ぽかーん)」
「•••••••!」
そこには赤黒く染まり不自然にそこに建つ異形の塔の姿があった。
まるで静かにこちらを見下ろす巨人のような存在感を放ちそびえ立つ。
それはよく見るとそれは成長している。
「なんだあれは•••」
「まさか•••••魔神!?」
「あの変な塔が魔神だと、それでもすごい大きさだ」
「ここからじゃよく見えない、そうだ!フォウン、カメラのズームだ!」
「あ、そうでした!」
壱路は自力で作り長らく放ったらかしていたカメラ機能を使い、ズームで塔の様子を観察する。
「•••••••!」
そして壱路はそこに映ったあるものをみて、目を見開いた。
「イ、イチロさん?」
やがて壱路はフォウンをそっとしまい•••思いもよらぬ行動に出た。
突如、テラスから飛び降りたのだ。
そのまま刹那の時、重力に身を任せ、やがて魔法で彗星のように空を駆けた。
「イチロさん!」
リュアの叫ぶ声にも耳を貸さず、唯一目散に赤い塔を目指す。
その表情は今まで見た事ない困惑の表情を宿していた。
次回!
赤い塔で壱話が出会ったのは予想だにもしない懐かしき人物!
そして明かされる壱話とダンテ、二人の過去!
乞うご期待!




