第七十三話 《安倍晴明《アベノセイメイ》モード》
皆さま、大変長らくお待たせいたしました。
新たな環境に慣れる為といいアイデアが浮かばなかった(と言うよりこの作品が終わった後の新たな作品の設定にアイデアを費やした為)為、しばらく更新出来ませんでしたが、久しぶりに更新します!
ここで一つ、長らく更新してなくてもこの作品を見捨てず暖かく見守っていただいた皆さまに感謝の思いを込めて言います。
ありがとう!
これからも作読双筆をよろしくお願いします!
「よしテンタロウ、僕が加勢する」
「そこでおとなしく休憩してな!」
「あ、ありが••••とう•••••••」
テンタロウはそう一言だけ言うと目を閉じて、糸の切れた人形の様に倒れた。
「テ、テンタロウさ〜〜ん!」
「リュアちゃん達はテンタロウ達を連れて白夜姫を救出して、僕はあいつを•••••」
「••••分かった!」
「き、気を付けてくださいね!イチロさん!」
壱路の無事を祈りながら仲間達は先を急いだ。その後を追撃しようとする暗夜王だが壱路がその進路を塞ぐ。
「さて暗夜王、ここからは僕が相手になるよ」
「•••••小童が、図にのるな」
(こ、声が、予想以上に低い!!)
意外な事実に衝撃を受けた壱路らは笑いを堪えながら暗夜王と対峙する。
「(声が、声が全てのボス要素を台無しにしてるです〜〜!)」
「(ぶぁっははははは!なんだよあの声!声!ぎゃっはははははは!)」
「(ぐふっ•••••って今はそれどころじゃない、暗夜王は•••)」
「•••••遅い!」
気を抜いた一瞬に不意を突かれた壱路、暗夜王はいつの間にか取り出したのか巨大な突撃槍を手に襲い掛かってきた。
「ぬあぁぁぁ?!」
その攻撃を壱路は〈支配〉で受け止める。
突撃槍は接触寸前で空中停止した。空気抵抗を操作した為だ。
そして壱路はつくづく自分の力が異質なものであることを実感していた。
壱路は自分の力を正確に把握していない。
ステータス表記には〈支配〉と書かれているが支配できるのは物理的なものだけだ。
これは生き物を支配できない。正確には••••心を、だ。
間接的に催眠効果のある声で操ることが出来るがそれはあくまで間接的なものだ。
つまり直接相手を支配してコントロールしたりとかは出来ないという事だ(まぁ、洗脳とかはあまり好きではないし、心を弄ぶ趣味は微塵もない)。
そしていつも感じる。イメージをそのまま現実に投影して動かすかの様な感覚に既視感を抱くのを。
そんな事を考えながら壱路は呟く。
「改めて思うけど、これは僕に余りにもしっくり来る力だもんな」
「え?そうなのか?」
その呟きにセイが反応する。
「ずっと全てを思い通りに、全ての現象を、果てには運命や未来さえも支配したいって思っていたから」
「それは大した願望だな••••••」
そう言われて、壱路は何故そう思ったのか記憶を探ってみるが、それどころではないと思い、気を取り直して暗夜王の前に対峙する。
暗夜王は先程から攻撃してきてるが物理攻撃はみな空気抵抗の壁が停めている。だが、それももう壊れそうだ。
「確かにこのままゴリ押しで潰せば勝てるけど•••••それじゃ駄目だな、相手の戦意を奪って徹底的にやらないと」
「なら、どうすんだ?」
「••••さっきのやるしかないでしょ?もっかいやりたいんだよね〜、あれ」
「•••••はははは、いいぜいいぜいいぜ!ワクワクするなぁ!イチロ、やるぞ!」
「あぁ」
覚悟を決めた壱路とセイは決意を胸に暗夜王と向き合う。だが暗夜王はそんな事を御構い無しに攻撃を仕掛けた。
「無駄話は終わったか?ならば死ね!」
「••••••••っ!」
空気抵抗の壁が消え、突撃槍が目前に迫ったその時、純白と金色の光が辺りに満ちた。そしてその槍の先に壱路は•••••。
「ふん、口程にも••••」
「ないと思った?」
暗夜王の後ろから声がした。そこに立っていたのは純白の着物(陰陽師の服装と道着が合わさったような物)を翻し、いつの間にか生えていた狐耳と金色の尻尾を風で揺らす壱路の姿があった。
「驚いた?これ自分でも結構驚いてるよ、なんか耳とか尻尾が生えてるしさ」
そう言って壱路は手に持つオウリュウを今までの経験を元に最も動きやすい構え方••••即ち我流の構えに持ち替えた。
「今までゴリ押しで勝ってきたからさ(体力、身体能力的な意味ではない。魔力の事である)魔法だってノリとテンションで放ってたし難しい調整とか無理だったよ•••セイと契約する前まではな」
「•••••!?まさか契約したのか?あの世の理から外れた獣と!」
暗夜王は驚愕の表情を浮かべた。壱路はそれをシニカルな笑顔を浮かべ言い返す。
「ひどい言い草だなぁ、今の僕らはイチロでセイなんだから。•••ぶっ飛ばすぞ?」
「合体、いや、融合か?それが貴様の力•••?」
「あぁ、人霊一体となって戦うのが僕らにとってはちょうど良いんだよ、それに合体とか融合とからカッコイイじゃん」
どうやら融合した影響で性格に変化が起きているようだ、ベースは壱路だがセイの軽い性格も混じってしまったらしい。
「••••貴様は何者だ、理不尽の塊か?」
「そこはノーコメントで。さて無駄話はお終いだ、随分長い前座だが•••まぁ、これからが佳境、即ちクライマックスって事で納得しよう」
「何をふざけた事を•••」
「なんとでも言えよ、あんたには勝てないから。この《安倍晴明モード》にはね」
《安倍晴明モード》•••それが壱路とセイの力に付けられた名前、由来は狐=陰陽師=安倍晴明となんとも単純な連想である。
「ぬかせぇ!」
壱路の言い方が癪にさわったのか、暗夜王は突撃槍を振りかざし猛突進をしてくる。そして••••••。
ギュルリ!
金属のねじ曲がったような音が聞こえた。
いつの間にか伸びていた尻尾が突撃槍に纏わりつき捻り上げていた。
「長ったらしくバトルすんのは面倒臭いからな、もう終わりにしよう•••」
壱路の刀を持つ手を握った。そこに金と白の焔、いや雷が纏わりつき、それをそっと頭上に構えた。そしてそっと呟く。
「《天撃之一閃》」
刹那、目にも留まらぬ速さで刀が振り下ろされた。そして斬られた暗夜王は雷炎に包まれながら断末魔の叫びをあげるーーー。
「うぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そして、後に残ったのは黒く変色した灰のみが残されていた。
「おわりっと•••さて案外呆気ないけど、みんなの所へ早く行こーーー」
刀を納め、急ぎみんなの所へ行こうとする壱路。しかし•••。
「おう、また会ったな、イチロ・サガミ」
声のする方向に顔を向ける壱路。その顔は苦笑いを浮かべていた。
「お前か•••••ダンテ」
そこに立っていたのは赤い衣を身に付けた男ーーーリベルオ・アサナのリーダー、ダンテであった。
次回!
第七章、完結!
明かされるダンテの目的•••••そして白夜姫も登場し、地下の都の謎も明かされる?!
そして急展開!
乞うご期待!




