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黎明のイチロ 〜空から落ちた支配者〜  作者: 作読双筆
第一章 放浪の支配者 〜 スマホと刀と唯一魔法〜
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第七話 竜子刀・ガイシ

メリークリスマスです。


これからもよろしくお願いします。^o^

壱路の目の前に刃の様な髪が迫ってくる。

間一髪でそれを避けるがこのままではこっちがやられてしまう。



「荒っぽいのは嫌だけど・・・、仕方ない。

支配ドミネイト》発動!」



壱路は地面に手を触れ魔法を発動させるが・・・。



「・・・・あれ?」

「いいわすれてたけどさ、ここでは魔法つかえないから」



魔法が使えない。壱路の戦い方は膨大な魔力に万能チート魔法を基本にしている。魔道着で強化しているとはいえ、身体能力が元々0に近い壱路にとって魔法が封じられるという事は死ぬ事と同じなのだ。



(ヤバいヤバいヤバい!魔法使えないのはヤバい!ここはとりあえず逃げよう!そうしよう!)



壱路は逃げる事を考えていた。今のままでは殺される。ならば一旦距離をとって対策を考えるのが一番だと判断した。



「ふぐっ!」

「ははは、逃がさないよ」



だが逃げようとして転んだ。足を見るとあの刃みたいに変形していた髪の毛が足に絡まっている。



そして壱路の上に思念が乗っかってきた。心地良い重さと柔らかさを感じるが、今はそんな事考えている場合じゃない。諦めたわけじゃないがなかなか糸口が見えない。



「つーかまーえた!もうにげられないよ?それとももうあきらめた?」

「くっ・・・・・・・・あ」



見下ろす思念の目を睨みつける壱路はようやく先ほどから感じていた既視感が何なのか分かった。



(そっか。誰かに似ていると思ったら、あれ・・・僕じゃないか)



そう、思念の目は壱路に似ていた。

何かが壊れて絶望した目。壱路が壊れたあの時と同じ目をしていた。



あの時の事を思い出すと今でも吐き気がする。夢に見た時などもう最悪だ。起きたら汗がびっしょりで震えが止まらなくなる。



でもあの時よりはマシだ。

全てに絶望して生きる事が嫌になった自分が再び立ち上がることが出来たのはある言葉があったおかげだ。あの言葉があったからこそ今の壱路がある。



思念を見て壱路は過去の自分を見ているように感じた。今こいつにも言葉が必要なんだ。再び立ち上がる為の言葉が。



(うまくいくか分からない、だけど・・・・後悔したくない!)



「さっきから黙っちゃって、もう殺しちゃおうか。なんか辞世の句でもある?」

「あぁ、あるな」

「へ〜、どんなこと言うのかな?」

「それはな・・・・・、お前の負けだ。()()()

「え?」



次の瞬間どこからか鎖が現れ思念、いや、

ガイシに巻き付いてきた。

ガイシ・・・中国の伝説の動物であり、竜が生んだ9匹の子、竜生九子の一つ。それがあの刀の名前だった。

実は名前はヒントを聞いてすぐにわかっていた。伝説ではガイシの好むのは殺しや争いであったらしいのですぐに連想した。しかしまだ確証がなかった、そこで決め手になったのがあの石版だ。あの石版のおかげで竜生九子のことを思い出した。まあ推理はこんなところだろう。



「へ~分かってたんだ、ボクの名前」

「うん、結構最初からな」

「ははは、けど何ですぐに言わなかったの?そうすれば君は危険を冒す必要は・・・・」

「なんか引っ掛かってたからな」

「はあ?」

「けどお前の目を見た時その引っ掛かりが解けた。お前の目が僕に似ていたから、全てに絶望している目だったから」

「・・・・・・・・・へえ、そこまでわかるんだ」

「まあな」

「・・・ボクはね、作るんじゃなかったって言われたんだ」

「え?」



突然始まったガイシの話を壱路は黙って聴くことにした。

ガイシは九つある試作品の一つとして生み出された刀だった。といってもガイシを作った鍛治職人は試作品のつもりはないらしいが。その鍛治職人は誰よりも優しく、作った武器を自分の子供同然のように思っていた、そしてその武器達が正しい事に使われる事を信じていた。

だがそんな鍛治職人の願いは届かなかった。武器は所詮戦うためのもの、自分の武器達は戦場で一騎当千の活躍を見せた。しかし鍛治職人は武器達が戦争で使われる事を望んでなかったのだ。彼は悩んだ。

そして悲劇は起こる。その武器達によって彼の家族は奪われたのだ。自分の作った武器が最愛の人を奪った事実に彼の心は壊れた。

彼は自分の武器達を回収しこのような所に封じ込めた。ガイシや他の武器に意思が芽生えたのはそんな頃だった。

ガイシがここに置かれた時、彼はこう言ってたらしい。



ーーーーーー作るんじゃなかった、と



その言葉はガイシに絶望を与えた。自分達の存在意義を丸ごと否定されたように思えたから、自分達が生まれなければ彼は壊れずに済んだだろう・・・。



「って訳なんだ・・・。あの人のせいじゃないのにさ」

「・・・・・・はぁ、お前の話はわかった。でお前はどうしたいの?」

「へ?」

「今は人の姿だけど、お前は刀だ。刀は切るためにある。戦うためにある。けどお前は自分に絶望している」

「分かってるよ。ボクは刀だ。血を啜るのは好きだし、相手を切り裂いた時は嬉しい・・でも必要とされないんだ。ボクみたいな刀は不幸を呼ぶから」

「僕は必要だ」

「・・・っ!」

「確かに武器は人を傷付ける。でも武器に善悪はない。要は使い手次第だ。」

「でも・・・」

「それに・・・勿体無いだろ。あんな名刀が埃かぶっているのは?」

「・・・・・!」

「分かんないならもう一回ちゃんと言うぞ。僕はお前を否定しない。僕の道を、信念を貫くために、お前が必要だ。だからお前も生きろ」

「・・・」



呆気に取られたような顔をしてガイシはこちらを見ている。



そして次の瞬間壱路はめちゃくちゃ戸惑った。



ガイシは涙をながしていたのだ。言い過ぎたとは思ったがまさか泣かれるとは・・・。刀とはいえ罪悪感が心をむしばむ。



「え〜っと、悪い、流石に言い過ぎた。」



一応謝罪はするがガイシは首を横に振った。



「ち・・・が・・・う・・・」

「えっ、じゃあ何で泣いてんだよ!」

「う・・れ・・・・し・・・くて、ひつ・・・ようだって・・・言って・・・くれたのがうれしくて・・・」



泣いてて聞き取りづらいが、壱路はホッとしていた。



しばらくするとガイシは泣き止んで、こっちを見ていた。



「分かったよ。ボクは君の刀だ。この『竜子刀りゅうしとう・ガイシ』が君の望みに従い君の道を切り拓こう。」

「あぁ、よろしくな」

「ねぇ、そういえば君の名前はなんていうの?」

「僕は・・・・・イチロ・サガミだ」

「イチロ、イチロ・・・か。さぁこれから君を元の世界に戻す。戻ったら僕の名前をよんでね・・・」



その時突然景色が流転した。

そして壱路は元の鍛治場に戻っていた。



「・・・・・・フォウン」

「マスター、どうしたんですか?やっぱりあの刀がなんらかの呪いを・・・・」

「いや、何でもないんだ。ただ少し・・・」

「ってマスター?!大丈夫ですか?」



壱路は地面に膝をついた。やはり精神世界でのやりとりが原因だろう。とても疲れた。



パァア



ふと手に持った刀が壱路を励ますように光った気がした、きっとガイシが心配しているのだろう。



(大丈夫?イチロ?)



ふとガイシの声が聞こえた。どうやら今のはガイシのメッセージらしい。



「大丈夫だ。心配しなくていい。

・・・・・これからよろしくな、ガイシ」



小さな声でその言葉に返事をした。

次回

竜子刀の力が解放されます。

乞うご期待!

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