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黎明のイチロ 〜空から落ちた支配者〜  作者: 作読双筆
第七章 秘密咲き誇る地底の花街 〜精霊族と落人族、暗夜王と白夜姫〜
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第六十九話 親と子

今回は少し設定を練るのに時間がかかりました。

けどその分良い出来に仕上がりましたのでどうかよろしくお願いします。

ついに邂逅を果たしたザンと壱路、その様子を見てアマツチは疑問の声を上げる。


「イチロ?」

「アマツチ、会計はちょっと待ってくれ、今師匠さんと大事な話をするから」


間髪入れずにアマツチの口を封じた壱路、そして壱路に懐疑的な目線を向けるザンは再び口をあける。


「何故ですか?何故あなたがそのを•••••『オウリュウ』を所持してるのですか?あの子はもう壊れて•••」

「まぁ、元は『ガイシ』なんですけどね、あなたが『オウリュウ』を託した鍛冶士ーーークルギが打ち直し、蘇りました」


クルギとは壱路がかつて出会った鍛治職人で、『オウリュウ』を打ち直した人物である。


「クルギ•••••彼が『オウリュウ』を、蘇らせたのですね、腕を上げたようで••••」

「まぁな、それよりあなたに真っ先に言いたい事があるがいますので、場所を変えましょうか」

「な、何を•••」

「『オウリュウ』ーーー《氣界展開》」


そう呟くと『オウリュウ』は紫色の光を放つ。


光が収まるとそこはだだっ広くひたすら真っ白な空間がそこにあった。


《氣界展開》ーーーかつて何回か壱路達を引き込んだ異空間、ひたすら白い空間が広がる異質の聖地を意識的に呼び出す為設定された言葉。


「ーーーー!ここは?!」

「ここは言ってみれば異空間といっていいでしょうね、さて」


そして壱路の後ろ、そこに立っていたのは


「•••!ま、まさか君は•••その子はーーー!」

「はい、そうです、この子がオウリュウですよ」

「••••えっと久しぶり、お、お父•••••さん」


ぎこちなく挨拶を交わすオウリュウ、その姿を、確認し、ザンは更に混乱する。そしてかろうじて絞り出した掠れた声で壱路に問うた。


「••••君は一体何者なんだ?」


ザンの疑問に壱路はシニカルな笑みを浮かべて答えた。


「そうだな、それを話すならまず、僕、イチロ・サガミとガイシの、そしてリュアちゃんとアルシャークの出逢いから話す必要があるな」

「リュア?!それにアルシャークとも会ったのか!」


そして壱路は話した。ガイシとの出会いからオウリュウになる経緯、そして自分の最高の相棒として今まで戦ってきてくれた事、リュアとアルシャークに出会い、一人で旅をしていた時より充実した毎日を送れた事、そして一度別れ、そして再会した事を。全てを話し終えたときザンは一言だけ呟いた。


「そうか••••••」


ザンは話の壮大さに圧倒されながらも、静かに目を閉じていた。話が一区切りしたので、壱路は一番聞きたかった質問を


「それとな、あんたには、個人的にどうしても聞きたい事がある••••何故、リュアの前から姿を消したんだ?」


その言葉にザンは身を固くし、目を背けた。


「私には、あの子に会う資格などないんですよ•••••」


かつて人を守り、救う為の武器を作ろうとした。しかしその武器は血で血を洗う戦いに使われた。殺すという目的に使われてしまった武器達は悲劇を生み続けた。そしてついに、その武器で最愛の女性さえ失ったーーーー。 ザンは顔を歪めながら自分の過去を話した。


「私のせいで妻は死にました、私は大切なあの子を、巻き込みたくないのです。私のせいであの子を傷つけたくない•••だからあの子の前から姿を消しました」

「••••••だから?」

「え?」


しかし、壱路にはその言葉はただの言い訳にしか聞こえなかった。壱路は言葉を重ねる。


「あんたは逃げたんだ、奥さんの死を口実にリュアを守る責任を放棄して、アルシャークに押し付けた。それだけじゃない、自分の努力し積み重ね産み出した作品を、お前はこう言ったそうだな?『作るんじゃなかった』ってな?」

「•••••!」

「ガイシ達はその時に意思を宿していた。あんたは、自分の子供同様の奴らを、否定したんだぞ!」


壱路は知っていた。大切なものを失う苦しみを、哀しみを、痛みを知っていた。だからこそザンの気持ちはよく分かる、しかし他の大切なものを捨てる行為、その事に関しては怒りを覚えた。


「それでも、私は••••」

「ふざけるな!あんたは、あんたはリュアの父親だろ!大切なら、なんでそこから逃げた!武器達も同じだ!僕の国ではね、大切にされた道具はやがて意思を持ち付喪神って神様になるっていうんだ、あいつらが意思を宿したのはあんたがあいつらをリュアと同じくらい大切だったからだろ!僕は•••••そこが許せないんだ」


大切なものを捨てる事、壱路はザンがしたその行為が、許せなかった。大切なものがいなくなる悲しみを知っているから。壱路もかつてそうだった。なんでも一人でやろうとした、大切なものを作らないように。だがこの世界に来て一人じゃできない事が出来たのは、周りの人のおかげだ。いつしか大切なものが出来ていた、増えてた。だから、壱路はザンに問う。そこにかつての自らを重ねて。


「あんたにはあんたの理由があるだろう、僕は他人だけどこれだけは言っておく、もう、逃げるのはやめろ、いい加減前を見ろ!」

「••••••イチロ君」


その言葉を聞いたザンの目には微かだが確かな光が宿っていた。壱路の思いが伝わったのか、腹を決めたのか、ともあれ前に進む決意を固めた。そしてふと呟く。


「••••まだ、間に合うのでしょうか、やり直せるのでしょうか?」

「やり直すのには遅いかもしれんが、まだ手遅れじゃない」

「そうだよ!手遅れじゃないよ!」


オウリュウにも励まされ、ザンは拳を握り締める。覚悟は決まったみたいだ。


「今リュアはここにいる、•••••会って来いよ、親父さん」

「!•••••正直言って怖いですけどね、もう何年も会ってないですから•••」


そう言いながらも、その顔にはもう、迷いは存在しなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その後、《氣界展開》を閉じ、アマツチに事情を説明し、リュアが眠っている部屋へ赴く。


「イ、イチロさん?」

「リュアちゃん、起きてたんだ」

「はい、今、目を覚ましてイチロさん達がいないか探そうと•••でもなんでここに?」


そんな会話をしてると襖の外にスタンバイしていたザンが意を決してゆっくりと部屋に入ってきた。そして掠れながらも優しく、ゆっくりと呟く。


「•••••リュア?」

「え••••••?!」


ザンの姿を見てリュアは目を見開き、驚きの声を上げる。その目から涙が一筋光って見えた。そして掠れた声で、


「お、お父•••さん?」


その問いにザンは優しく答えた。


「大きく••••なったな」

「ほ、本当にお父さんなの?」

「あぁ•••••母さんに似て、綺麗になったな、リュア•••••」


そしてつかの間の静寂を得て、リュアはザンに抱きついた。


「お父さん、お父さん!」

「リュア•••!」


長年別れていた親子が再会を果たした瞬間だった。


その様子をそっと見守りながら壱路とアマツチは部屋を出る。


今はそっとしておこう。積りに積もる話があの親子にはたくさんある筈だから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして場面は外、ザンの鍛冶場兼自宅にある庭でアマツチは大泣きしていた。そして壱路も静かに空(と言っても岩しか見えない、因みにここは元いた場所から大分離れてるらしい)を眺めていた。


「く、く〜〜!な、泣けるでぇ!師匠も娘さんもよかったなぁ!なぁ!?」

「••••••そうだな」

「ず〜〜!そうだな!イチロ、これやるんだな」

「?これは?」


感傷に浸ってるとアマツチが何かを投げて渡した。


それはペンダントだった。紅いルビーのような宝石を銀で装飾したシンプルなペンダント、しかしその造りは大変見事なものだった。


「おまけなんだな!簪と一緒に好きな人に送ってやるんだな」

「ありがとう•••あれ?この赤い石、どっかで•••」


過去に似たようなものを見たような気がして、記憶を探り寄せる壱路だが、その思考は長く続かなかった。何故なら•••••。


ドッガーーーン!


何かが庭の中央に超高速で降り立ち、壱路の思考はそこに向かったからだ。


「な!?」


見てみると何か(・・)がいる。


そこにいたのは橙色の毛皮を持った九本の尾を持つ狐。


そしてその狐は一言呟く、その声には歓喜の感情が込められていた。


「見つけた••••」

次回!


壱路の前に現れた謎の狐!

その出会いが壱路にさらなる力を与える!

そして明かされる地下で蠢く陰謀に、あの組織との関わりが!?


衝撃の展開を見逃すな!


乞うご期待!

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