第六十七話 永遠の夜
ちょっと遅れました。
けど結構いい出来に仕上がったのでぜひ楽しんでください!
「「「「花街?」」」」
壱路の告げた言葉に全員が疑問の声を上げた。どうやらこの世界では花街という言葉はないらしい。
「あれは•••••その、イチロさん、花街ってなんすか?」
「えっと、遊郭っていうなんか娼館や風俗店が@×?×#×d×_××t○&%○○○、×g×××5○○19○○4×××(刺激が強すぎる放送禁止ワードが連発されたので説明は省略する)って所なんだけど•••」
「••••••はいっす、その認識であってるっす」
「「「「•••••••」」」」
目立たないように小声で話すが、その説明にあまりにも思考停止するキーワードが多過ぎて、全員呆気に取られる。
「綺麗な女性••••か」
「お・に・い・ちゃ・ん?」
「いや、なんでもない!いやなんで?!なんで娼館や風俗店なんだよ!やばいだろ、みんな、露出が高すぎだろ!」
「いや、あれで普通っすね」
「あれで?!」
「いや、ここ、こうなってて•••」
いち早く思考停止から回復したアルシャークは不用意に口に出した発言を撤回し、テンイートを問い詰めるが、この状況を普通と思うテンイートに愕然とした。
どうやらここ、【ウキヨバナ】は広さが魔王国の三倍あるらしく、三つのエリアに分かれてるらしい。
東・遊郭、娼館、都庁地区(現在ここ)
南・商業、農業、平民地区
北・精霊境エリア
と分類される。
因みに今は北の精霊達の住むエリアには誰も入れないらしい(まぁ、こっそり入ってしまえばいいと思うが)。
「そういえばここでの市場はどうなってるの?シギルはある程度魔法の袋(ショルダーバック仕様)に入ってるけど」
「いや、お金はシギルでいいっすよ、あ!そうだ、皆さんそろそろお腹減ってません?この地区にはまともな定食屋がありましてっすね、そこの米料理が•••」
テンイートの一部の発言に壱路と天太郎の目が変わった。
「「米?!」」
米、そう、日本人の大好物の米、それが地下にはあった。壱路はもうこの世界に来て1年近く経つが、未だに米らしき穀物や味噌、醤油に似た調味料は探してもみつからなかったのだ。
壱路も魔法で米を生み出すことはできず諦めていたが、この地下には米が、出来ることなら欲しかった米が、ここにあるのだ!
それを聞いて目を爛々と輝かせる壱路と天太郎はテンイートを急かす。
「今すぐそこに行くぞ!テンイート、案内しろ!」
「行くぜ!みんな!」
その時、壱路と天太郎は通常の三倍の速さで駆け出したという。
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その後、一行はテンイートの案内で定食屋(普通のところである、隠語ではない)に足を運んだのだが•••。
「この飯、うまい。おかわり!(後で買い溜めしとこう)」
壱路は茶碗を掲げ、ご飯(タコとエビの炊き込みご飯もどき)のおかわりを頼んだ。
「本当だなぁ!おかわり!」
天太郎は握り飯のようなものをものすごい速度で頬張る。
今イチロ達が食してる米、銘柄を『夜米』という。普通は植物は日光を受け育つが、ここの地下では植物は闇と魔力を吸収し育つ穀物なのだ。
「ああぁ、良かったっすよ•••(あの人達の胃袋はどうなっているんすか?もう何杯目っすか?!)」
壱路と天太郎の底なしの食欲によりテンイートは胃がキリキリと痛む感覚がした。
「•••そういえばさテンイート、ここにいる女性達なんだけど、まさか•••」
「•••イチロさんが言いたいことは分かるっすよ、この街の娼婦という役職につく女ーーー灯り女の半分はここの出身すが、もう半分は元地上の人達っす」
灯り女とはこちらの世界での遊女や娼婦を指す言葉である。
「実はここ、知る人は知る場所であの穴から出入りできる方法を持つものなら誰でも行けるんすよ、でも黙秘義務があったり、あの穴を無事に降りられるような人なんていないのであまり世間に知られてないのはそのせいっすよ」
「精霊境もか?」
「その通りっす、因みに秘密の話し合いがしたい時とかここを利用する人が来て、陰謀やら策略の渦が渦巻いてて•••」
「•••••所謂、社会の闇かぁ」
話を聞くとここの制度は壱路の元の世界での遊郭そのものらしい。借金のかたや奴隷によってここに送り込まれた少女達は、大半は二度と陽の光を見られず朽ちていく•••それがこの都の明かりを灯し続ける燃料になっているのかもしれない。
「こんな明かりが輝いているのに中を見たらドロドロしてるな」
「そうですね、まるで別世界のようで、理解が•••••」
「確かに、そうだよなぁ」
「んーん、よく分からんが、面倒だな」
「師匠、私は少ししか分かりません••••」
それぞれがそれぞれの感想を漏らしながらも、テンイートの説明は続く。
「はい、それにこの地下には暗夜王と白夜姫という二つの頂点がありましてね」
「なんかどっかで聞いたことあるような••••で、その暗夜と白夜がどうかしたの?むぐむぐ」
元の世界で有名なシュミレーションRPGで出てきた名称を思い出しながら、壱路はテンイートの説明を飯を頬張りながら聞いていた。
テンイートが言うに暗夜王と白夜姫とはこの地下での頂点に立つ存在であり、
暗夜王は治安防衛を、逆に白夜姫は経済関係に最高権限を持つ一種の役職であり、政の一つのあり方であるらしい。しかも白夜姫は何代か前から灯り女から選出してるようだ(壱路は白夜姫が吉原でいう太夫に権力をもたせたものと考えた)。
「しかし、今はその政全てを暗夜王が握っています」
「そ、そうなんですか?」
なんでもテンイートが家出する前、白夜姫が病に倒れるという事態が発生、その間、白夜姫の役割を代行する事になったようだが、テンイートがいうに、どこかうさん臭いらしい。
「それ以来暗夜王がこの街に降臨し独裁政治を行ってますから、後で詳しく調べたいと思ってるんすよ、とまぁそんな訳で今の【ウキヨバナ】はこんな感じですね」
「大体わかった」
なんとなく感じていたが、ここは相当やばい所らしい。そんな中で突然定食屋の扉が開かれた。そしたらとんでもない声が耳に飛び込んできた。
「見つけたぞ、『闇鴉』イチロとその一行だ!」
「は?」
「「「「「へ?」」」」」
自分の名を耳にして、壱路は一瞬ギョッとする。そこに立っていたのは•••俗に言う憲兵隊のような姿をした軍服もどきの男達だった。
「ひっ捕らえろ!」
「「「「「おぉ!」」」」」
「ちょ、ちょっとまって!一体なんの事やら••••ああぁーーー!」
飛びかかりそうな勢いの軍服衆の前で壱路は咄嗟に軍服衆の後ろに指をさして、気をそらす。
「逃げるぞみんな!」
「「「「「•••!」」」」」
古臭い手だが未だに引っかかるものはいるのだと実感するもつかの間、急いで外に出たが大通りは完全に軍服衆に取り囲まれていた。
「•••やば」
「そうっすね」
まさしく絶体絶命、そして軍服衆の中央を陣取る男が一歩前に出た。その出で立ちに壱路は一瞬大ヒットを記録した某世紀末覇王の事を思い返していた。そしてその某世紀末覇王が一言呟いた。
「••••死ね」
「わ、皆さん避けてーーー」
テンイートの言葉は続かなかった。次の瞬間、辺りに閃光が走った。凄まじい衝撃が辺りを襲う。
「「「「「「うわぁぁぁ!」」」」」」
その衝撃で壱路達は三方向に吹っ飛んだ。その様子を見て某世紀末覇王は不満げに呟く。
「ふん、久しぶりに使ったが簡単なものではないな」
「••••殺してはないだろうな?」
その隣に立っていたのはリベルオ・アサナの幹部であるイワマ・ノギワであった。そう彼は落人族だったのだ。
「ふん、それではリベルオ・アサナの要求について、後ほど聞こうか。イワマ?」
「•••わかった、暗夜王キョウセリ・ベトラマ殿よ」
そう、この世紀末覇王のような人物こそ、この夜の街の独裁者、暗夜王キョウセリ・ベトラマなのであった。
そして壱路は再び彼と出会う事になる、敵として。
次回!
突如、三方向に別れ、分断された壱路達。
そんな中イチロが出会ったのは?!
そしてついに•••••。
乞うご期待!




