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黎明のイチロ 〜空から落ちた支配者〜  作者: 作読双筆
第六章 三国大戦 〜英雄、表舞台に現る〜
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第六十四話 暗躍のリベルオ・アサナ

第六章、完結!

「き、気に入らない、だと!?それだけなのか?!」

「それでも、僕にとっては充分な理由なんだ」

「く、くっくくくくくく!予想斜め上の答えですねぇ!」


壱路のブダノストと敵対する理由を聞き、愉快そうに笑うサーバン。


「気に入らない•••それだけで私達と敵対するとは、」

「別にいいだろ?それに今お前らを潰せば、豚の糞は壊滅だ、そっちは六人、こっちも六人、ちょうどいいじゃないか」


そう言って壱路は刀を構える。それに続いて仲間達も前に出る。


「イチロさん、私はあのぶよぶよした人をやります!」

「師匠!私はあの男を•••殺ります」

「じゃあ僕はあの女の子〜♩」

「俺はあの若そうな男っすね、フードまですっぽりかぶってますが」

「俺は••••えっと、あの謎のマントで」


それぞれが自分の相手を見定める。


「それじゃあ、僕はあのリーダー格みたいな奴だな、よしみんな、ノルマは一人一殺だ!手加減抜きで行こう!」

「「「「「おぅ!」」」」」


そして掛け声と共に全員が駆け出した。それと同時に相手側も駈け出す。王の間から一目散に駆け出し、それぞれの相手と対峙していた。


「くおのぉぉぉぉ!」


リュアの相手はずんぐりとした幹部、トツア・ボウター。メタボリックな腹を揺らし雄叫びをあげながらリュアに襲いかかってくる。


その姿に若干いや、かなり苦手意識を覚えるリュア。


「っ、ち、近づかないでくださぁい!

衝撃弾インパクトバレット十連テンズ》!」

「ぎゃほぉ、あばばばばば!」


リュアは『ホロウ』を構えると引き金を引く。するとトツアは後ろに吹っ飛び、同時に衝撃波を時間差をつけて連続で撃ち込まれた。そして壁に激突し、埋もれたのだ•••••。


衝撃弾インパクトバレット十連テンズ》•••それはホロウの音を操る力により不可視の衝撃波の弾丸(威力調整可能)を十発連続で相手に撃ちこむ、近〜中距離範囲の技である。そしてリュアが使った様に時間差をつけて連続で撃ち込むという芸当も可能である。


この一年で『ホロウ』の特性と鍛錬に努力し取り組んだリュアだからこそ、扱える技である。


「こう見えても私、結構強いんですからね?ってもう終わりですか?!(•••弱すぎですよ!イチロさんにいいとこ見せたかったのに〜!)はあ•••••」


多少物足りなさを感じながらもリュアは他のみんなはどうなったのかと思い周囲を見渡した。そしてちょうど近くにいるツクヨの方を見る。ツクヨは逸る気持ちを抑えながら、仇敵であるバックーソィと対峙していた。


「ようやく、ようやく会えた、母さんの仇!」

「仇?••••!そうか、貴様、【デューポンの山】にいたーーーーー!」

「そうです、あなたの生み出したあの骨に殺されたアーマードモンキーは、わたしを育ててくれた、母さんよ!」

「ふ、ふん!魔物が親だと!?笑わせる!大体あんなクズを、••••ぬっ!?」


バックーソィは言葉を止め、目前まで迫った小太刀を剣で受け止める、そのまま押し返そうとするもその時、ツクヨに頭を触られ、耳元で何かを囁かれた。


「《感覚干渉センス・ハッキング》」


するとバックーソィは気付く。目が見えない、何も聞こえない、何も匂わない、何も感じない、突然感覚が消えた。混乱と何も分からない恐怖の中でただもがこうとする。まるで蜘蛛の巣に捕らえられた蝶のように。


感覚干渉センス・ハッキング》•••ツクヨの唯一魔法、〈感覚センス〉の力の一端であり、相手の視覚を操作し、認識を曖昧にしたり擬似的な激痛を与える事ができる(しかし相手に近づき、触れなればならない)。


そもそも彼女の唯一魔法、〈感覚センス〉は自分や相手の五感や痛覚、第六感を魔力によって干渉、操作することが出来、この様に相手の視覚を操作し幻覚を見せたり、自分の視覚を強化して鷹の目級の視力を出す事も可能という万能な魔法なのだ。


「くそっ!見えぬ、聞こえぬ、何も感じぬ!」


バックーソィは周囲に剣を振り回すが、彼は知らない、もうすでに自分が剣すら握ってない事に。


「貴方には聞こえないでしょうが、せいぜい苦しみなさい•••終わりです•••《痛覚操作ペイン・コントロール》」


そう言うとツクヨの小太刀に薄皮の魔力が纏いつく。そしてその小太刀でバックーソィを切り裂いた。


「ぎ、ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


痛覚操作ペイン・コントロール》•••痛覚を操作し、相手の痛覚を最大にしたり、自分の痛覚をなくす事ができる。逆に相手の痛覚をなくし、切られた事にも気づかず暗殺という芸当も可能だ。


想像の絶する痛みに獣の様な断末魔をあげてバックーソィは静かに倒れた。そしてツクヨは•••。


「とれた、仇••••やったよ、かあさん•••••う、うぅぅぅぅ」


ツクヨは泣いた。目的は達したのに、涙が止まらなかった。ただ悲しくて、哀しくて、たまらなかった。


そんなツクヨを見て、リュアはそっと駆け寄る。


「ツクヨちゃん」

「!リュア•••さん•••!」

「•••大丈夫、今は泣いても、いいと思うよ」

「•••••う、うえぇぇぇぇん!」


ツクヨはリュアに抱き着き、泣いた。その悲しみがなんなのかは、わからない。


母を失った悲しみが今になってきたのか、それとも目的を果たして、逆に哀しくなったのか•••。


だが、止まない雨はない。その涙が止まった時、ツクヨはいつもの様に笑うだろう。雲からそっと顔を出す月の様に。リュアはそっとツクヨの頭を撫で、抱きしめていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ツクヨが泣いている頃、ヤノバサはというと•••。


「いやぁ、それにしても敵方にもこんな可愛い子がいたなんてねぇ」


そう言いながら自分の相手、ヒリアタを口説いていた。


「ふざけた男め•••敵の癖に•••」

「まぁ、女性がいたら大抵口説くよ?」


それに、と続けて言葉を重ねる。


「ましてや、こんな綺麗な女性なら尚更ね」

「ふん、気持ちだけは受け取っておく。そのままあの世に行くがいい、卑しい獣人め!」

「そうだなぁ」


笑いながらもヤノバサは懐から何かを取り出す、それはーーーーだった。それを舌で舐めながらヤノバサは微笑む。


「こっちもノルマは達成しとかないとなぁ?」


その顔には危険な匂いが宿っていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その頃テンイートは、


「ぜぇぜぇぜぇ•••••ははっ、強いっすねぇ」


追い詰められていた。体のあちこちから血が流れ、息も絶え絶えである。


彼の相手であるイマワは強かった。唯一魔法を持つテンイートでさえも苦戦するほどに強かった。


「これじゃあ、また、ワントさんやウォーランさんに修行が足りんって鍛え直されそうっす、面倒っすけど••••」

「•••••お前は、変わらないな。その面倒くさがりは」

「え?」

「その様子だとまだ気づかない様だな、テン(・・)


そう言ってイマワはフードを脱ぐ。


「う、嘘だろ••••なんで、なんでこんな所にいるんっすか!?お前が、どうして!」


その顔を見て驚愕するテンイート。


目の前にいた人物をテンイートは知っていた。その因縁は後々大きく関わることとなる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

視点は変わり、壱路と天太郎はサーバンと謎のマントと対峙していた。


「さて、悪性腫瘍を切除してやりますか」

「ふん!や、やれるものならやってみなさい!おい!お前も行け!」


サーバンはマントの男にそう言うとそれは一気に壱路の元へ駆け出した。しかしテンタロウにいち早く停められ、その道を阻まれる。


「さっさと終わらせてスッキリしますか、このヤロー!オラァ!」

「•••••••••••••••!!!」


テンタロウが相手を押し留める中、壱路は静かに立ち相手の出方を伺う。


「•••ど、どうしたんですか?来ないなら、こっちから•••」

「あぁ、そっちから来てもらうよ?」

「え?」

「引き寄せろ、《万有引力ニュートン》」


万有引力ニュートン》•••壱路が使う〈支配〉の特徴である自分の魔力に触れたものを操作する特性と常にダダ漏れなカンスト魔力を使う事で周囲(約25メートル)の重力を操作、引力と斥力を自在に操る。万有引力の法則を見つけ出した偉人アイザック・ニュートンがモデルだ。


「ぬぬおぉぉぉぉ!?」

「てい!」

「ぶへぇ!」


ガッ!


サーバンは引き寄せられ、そのまま刀の柄頭で槌のように叩きつけられて倒れた。


しかしその手ごたえのなさに壱路は疑問に思った。こんなにもリーダーが弱いのに部下はついてくるのか?と。そして倒れたサーバンの首根っこを掴み、無理矢理起こす。


「弱い••••弱すぎる?おい、エセ優男、起きろー」

「うぐ、ぐぐぐぐぐ••••」

「お前らは一体何を企んで•••ーーーー!」


壱路が問い質そうとしたその時、背筋が凍る様な寒気がした。殺気だ。そしてサーバンから素早く離れる。


ザシュッ!


サーバンの胸から剣が生えていた(・・・・・・・)。見ると彼の後ろに一つの影が立っている。


「•••やはり失敗だな、お前は、俺たちにはいらない」

「あ、あなた様は•••なぜ•••」

「潔く死ね」


二、三言葉を交わしサーバンは物言わぬ肉片となり細切れにされた。血飛沫が辺りに飛び散る。内蔵が、骨が、肉が、まるで爆散したように辺りに飛び散る。


立っていたのは灰色のマフラー、そして赤いロングコートを身にまとった男、その顔を見て壱路は絶句した。


そう、男の顔は壱路と同じ黒髪黒眼・・・・を持つ日本人だった。目付きは鋭く、こちらを興味なさそうにじっと見つめている。壱路は問い掛ける、何者なのか?と。


「おまえ•••日本人?(しかもこいつは•••強い!)」

「(や、ヤバいですよマスター!こいつヤバい気配がプンプンしますよぉ〜!)」

「ふん、お前が『闇鴉』か、成る程•••日本人、しかも勇者だったのか•••••」

「違う違う、あれだ、ちょっと偶然と必然が重なってこっちに転移してしまった健全な一般人だ」


勇者と勘違いされたので壱路は慌てて否定する。その様子を見て彼はふっ、とシニカルな笑みを浮かべた。


「一般人?まぁ、どうでもいい。ともあれ同族に会えて良かった、俺はダンテ、本名は言わない。もう捨てたからな」


その名前に壱路は大ヒットしたスタイリッシュに悪魔を狩る半人半魔(人間と悪魔のハーフ)が主人公のゲームを頭に浮かべた。が、すぐに頭を切り替える。


「僕は•••••イチロ・サガミ、で、そのダンテさんはこんな所に何しに来たの?」

「いや、ちょっと役立たずの処理と探し物かな?でももう俺の部下が•••」

「ダンテ様」


そう言ってると灰色のマントを着た若い男が現れた、イワマだ。


「イマワ、ご苦労だな」

「いえ、これしきの事で」

「ようやくだ、ようやく計画を進められる」

「•••••探し物って、それ、『五害之魔玉』だったけ?何に使うの?」

「ふん、これはあくまで手段の一つだ、我らの目的を、悲願を叶えるためにな」

「ふぅん、つまり豚のクソはお飾りの隠れ蓑だったって事か」

「その通りだな」


そう、壱路はブダノストが本当は過激なテロ組織ではなく、ただの隠れ蓑ではないかという可能性に辿り着いていた(殆ど勘に等しいが)。


「良ければ名前を教えてくれよ」


軽い感じで組織名を聞く壱路、それにダンテは笑って答える。


「リベルオ・アサナ、それが俺達の名前で、俺たちの••••誇りだ!」


案外まともな名前がでてきた。少なくともブダノストより覚えやすい。


「••••へぇ、じゃあ聞くが、リベルオ・アサナは何を企んでるんだ?」

「•••••仲間になったら教えてやる」

「へぇ••••」


大胆不敵な表情で勧誘してきた。その直球な誘いに壱路は•••、


「イチロさーん!」

「師匠ー!」

「イチロく〜ん!」


そんな時、離れていた仲間達がこちらに来た。どうやら他の敵連中は無事に殲滅できたらしい。


「あ、リュアちゃん、ツクヨ、ヤノバサさん、って、テンイート?!ボロボロなんだけど」

「う、ううう、面目ないっす•••」


••••いや、テンイートだけ一人、ボロボロにやられて今、ヤノバサに背負われている。どうやらあのイマワという男と戦ったようだ。それほどの実力者なのか、と思案していると、隣に何かが勢いよく落下してきた。テンタロウだ。


「ぬぉおぉぉぉ!い、いててて•••」

「こっちも結構派手にやられたね」

「•••••••••••」


いつの間にかダンテの隣に謎のマント男の姿があった。そしてダンテが改めて壱路に問いかけた。


「•••さて、答えを聞こうか?俺たちの仲間になるか?イチロ・サガミ!」

「え?え?イチロさん?!あの人たちって••••」

「•••後で説明するから、今は静かにしてて」



そして壱路は息を静かに吐きながら、自らの答えを口に出す。







「断る」

「••••••」

「大体、お前ら何をやろうとどうせ碌な事じゃないだろ、まぁ、お前らの全てを否定する訳じゃない。こっちだって生粋の善人じゃないし、色々後ろ暗いこともやったといえばやった。だがあの豚のクソの奴らが仲間なんて絶対御断りだ」


それに、と言葉を続ける壱路。


「第一、僕は、人の大切なものを理不尽に奪う奴を、絶対に許さない!僕の目の前で誰も傷つけさせない!そう決めてるんだ!」


壱路の答えにダンテは静かに笑う。


「ふん、やはり仲間にならないか、なんとなくそんな気はしてたがな、•••理由としては青いがまぁいい、こちらもお前は入りたいと思っても入れなかったかもしれんからな」


何故なら、とダンテは続けて言葉を紡いだ。


「俺はお前がーーーー」

「僕はお前がーーーー」

「「気に食わない」」


言葉が重なった。まるで歪んだ鏡で自分を見ているように、壱路とダンテ、二人は似ていた、だからこそ、互いの事が気に食わなかった。


「今回は見逃そう、だが次はないぞ?」

「今回はお言葉に甘えて見逃してもらうよ、まぁ、代金にこれ貰っとくから」


そう言って壱路は握っていた左手を開く。するとそこには手の平サイズの黒い玉があった。それは禍々しい光を放っている。


「そ、それは!?『五害之魔玉』の一つ、

絶望之闇ナイアー』!何故貴様が!?」

「綺麗だからな、一個貰っとくわ、黒色好きだし」

「き、貴様ぁ!」

「イワマ、もういい、帰るぞ」

「しかし!」


激昂し、飛びかかろうとするイワマをダンテは止める。そしてダンテは壱路に宣言する。


「それは貸しとく、だが、必ず奪い返してやる、それまでなくすなよ」

「へぇ、やれるもんならやってみろよ」

「ふん、次会うときまでに二刀流でも会得しとくんだな、エセ黒の剣士が」

「そっちこそ二丁銃でも作って練習しとくんだな、ぱちモンデビルハンターめ」


お互いの服装からの皮肉文句を放ち終えると、ダンテの周囲に赤い風が勢いよく渦巻いた。思わず目を瞑り、再び見るとダンテ、イワマ、そして謎のマント男はその場から消えていた。逃げたようだ。なんとか危機を乗り越えた壱路達だが、その表情は晴れやかではない。


「行ったか•••••しかし、参ったなぁ、リベルオ・アサナ、思ったより厄介な組織みたいだな(この玉の事も気になるしなぁ)」

「•••イチロさん、あの、そういえば人帝さんは•••」

「ぁ、そうだな、あ、ヤノバサさん、忘れてたけど人帝探してとっちめといて」


その頼みにヤノバサは軽くOKし、他のみんなもそれについていった。そして壱路はその後をゆっくりと追いながら考える。


「(どうやら、三国が平和になって毎日ゴロゴロってのは当分無理そうだな)」


その後、作戦は順調にいき、人帝は退位、帝王代理としてジャックが人帝国のかじ取りを担うことになった(人帝の娘たちのことも配慮した為、代理という形になった)。


こうして、三国大戦は幕を閉じたのだが、この一件で現れた謎の組織、リベルオ・アサナ。後にこの組織が企む世界を巻き込む計画が壱路の、そして『アナムネシス』の運命を変えていくことになるのだが、それはまた後の物語で明かされるだろう。


それでも、今、壱路は訪れる平穏な日々に思いを馳せていた。

次回!


新章、突入!テンイートの過去、そしてイワマとの関係•••。

その答えは地下に?!

そこで待ち受けていたのは、姿を消した精霊族と隠されし第五の種族、そして永遠の夜の花街!?

その出会いは壱路に何をもたらすのか!そしてリベルオ・アサナの目的とは!?


新展開!第七章、開幕!


乞うご期待!


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