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黎明のイチロ 〜空から落ちた支配者〜  作者: 作読双筆
第六章 三国大戦 〜英雄、表舞台に現る〜
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第六十三話 作戦名『陽囮陰撃』

今日で連載して一年!

長くもあり短くもありました。

今日この日までこの小説を読んでくれた皆さん、改めて感謝を伝えたいと思います。


ありがとう!


これからも『黎明のイチロ』及び作読双筆(八握&叢雲)をよろしくお願いします!

壱路達の作戦が決まってから、翌日。


人帝国の陣営、前線で獣共和国の動向を観測していた兵士が慌てた様子で本陣の天幕に駆け込んできた。


「ライ将軍!前方より少数の人影を確認しました!」


獣共和国侵略作戦の責任を任された将軍、ライ・ココラトはその報告に眉をひそめる。


「なに?獣共和国が偵察でもだしたのか•••?いやそれにしては」

「そ、それが、実はその集団を率いる人物が突如辞表をだして行方不明となったギルドマスター・ジャック様なんです!」

「•••••なんだと!?」


その報告を聞いて掠れた声で聞き返すライ、彼は天幕を飛び出し、前線へと顔を出す。すると数人の影と共に本陣に向かい歩く人ーーーそれは不敵な笑顔を浮かべながら応えた。


「よう!ライ坊!元気にしてたかぁ?」

「ジャ、ジャックさん!?」

「相変わらず平々凡々な顔をしてんなぁ!」


そんな軽口を叩きながらスタスタと近寄るジャック。それを警戒し鋭い視線を向けるライ。


「平々凡々は余計なお世話ですよ!それよりなぜ貴方が此処に?それに後ろの彼らは••••獣人族ビストマ魔族デーマ?!」

「何、簡単な事だ。ライ坊、用件は一つだ、今すぐに兵を率いて帝国に帰れ」

「•••••••な?!」

「もう一度言うぞ、帰るんだ」


唖然とした表情でジャックを見るライ。


「な、何故ですか、私達は国の命令で•••••」

「いいか、よく聞け。獣共和国は魔王国と手を組んだ」

「なっ!?」

「このままだと、双方の被害は甚大なものになる、だから」

「•••••••••それでも、我らは国の為に忠義を尽くすのみです」


剣を抜き、ジャックに刃先を向けた。


「ライ坊、このバカが•••」

「交渉決裂か••••まぁ、ほとんど予定通りだな」

「ふん、人などやはり、好きにはなれんな」

「バサト、落ち着きなぁ、ようやく暴れられんだよ?私も研究で鈍った体をほぐしたいから、やろう?」

「ふむ、久々に血が滾るわ!」


赴いたメンバーはジャック、ウォーラン、バサト、アサミケ、ワントの五人である。


このメンバーが選ばれた理由、それは彼らが対多人数戦に関しては壱路に次ぐ実力の持ち主たちだからだ。


そしてジャックは改めて、最終勧告を告げる。


「引けないというなら、ここから先に俺らを倒していけ、そうなれば•••わかってるよな?」

「••••本気ですか?貴方がたは五人、こっちは十万ですよ?!」

「本気じゃなきゃやらないぜ、それにいくらなんでもお前らのやり方は間違っている、戦争などで無駄な犠牲を出したいのか?」

「•••それでも、私は戦います!皆の者、臨戦態勢に入れ!」

「•••••そうか(さて、久しぶりに本気を出そう、死人が出ない程度にな!)」



今、五人対十万の軍という、前代未聞の戦いが始まる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その頃、人帝国、帝城【ポラリス】では••••。入り組んだ通路を影に隠れながら進んでいる者がいた。壱路だ。



「へぇ、ここが城の中かぁ、此処だけは来た事なかったからべなかったから、テンが場所知ってて助かったよ」

「俺にとっては行きづらいとこなんだがな•••••」

「そういえば初日にその帝王殴って暴れて飛び出したんでしたっけ」

「それにしてもよく分かったな、ここがうんくさい所だって」

「だって娘を犠牲にしていたんだぞ、あの帝王様!一人は昏睡して、もう一人もベッドで寝たきり、そんな奴信用出来るか!それに魔法陣をよく見るとな、あれ、血で書かれてたんだぜ!いや、ゾッとしたわ!」

「それは•••とんでもねぇな〜」

「そうっすねぇ〜」

「そうだよね〜」

「こ、怖すぎますよ」

「は、はい、そうですよ」



現在、壱路達は少人数で人帝国の城【ポラリス】に不法侵入している。


メンバーは壱路フォウン、天太郎、ツクヨ、リュア、ヤノバサ、テンイートだ。


因みにこの人選は隠密行動を重視した結果、日頃世界各地を飛び回り溶け込んでるヤノバサ、情報収集隠密暗殺担当のテンイートとなったのである。それとリュアとツクヨの人選は完全に壱路の独断だ。


「しかしそれにしてもガラ空きじゃないか?」

「確かに巡回兵も見かけませんっすよ」

「明らかにおかしいよな〜」

「っあ!そろそろ王の間だぜ」


余りにも警備が少なく、殆ど開店休業状態の城を見て不審に思うも今はとりあえず前に進む。


因みにこの作戦(と言えるのか?)は二つに分かれて進行される。


まずジャックら『陽』チームはジャックのコネと交渉により軍隊の説得、それが無理な場合は無力化し捕縛、そして壱路達『陰』チームは帝城に直接潜入し帝王を拉致、そして軍隊の退却と退位をさせ、その後継者をジャックとさせること(まぁ、多少は痛めつけとくが)。


そして後は三国で同盟結んで一件落着!


それが壱路が考えた力技満載の作戦、『陽囮陰撃』なのだ。


「みんな分かっているよな?要は帝王を確保して、脅すなり何なりして軍を引かせ、その上で帝王を退位させ、結果的にジャックさんを国の新たな王様に祭り上げ、同盟して一件落着!という訳だ」

「それを作戦立案した翌日からやるとか••••ハードだねぇ〜」

「こういうのはスピードが勝負ですからなあ〜」

「が、ががが、頑張りますですはい!」

「わ、わわわわ、私もですぅ!」

「落ち着けよ、さて、•••••行くぞ!」


ジャキッ!


突然、王の間から鞘から剣の抜かれる音がした。


そっと覗いてみるとなんと、玉座に座った中年男性を緑の服と灰色のマフラーに身を包んだ男が剣先を突きつけているではないか。


「「「「「え?!」」」」」

「サ、サーバン••貴様、何のつもりだ?」

「何のつもり?見てわからないのですか?愚帝さん?」


それは奇妙な光景だった。サーバンと名乗る男の周りにはそれに付き添うように灰色のマントを羽織った四人と黒いローブとフードで誰かわからない謎の人物が立っていた。


「あ、あれは!?ブダノストのリーダー、サーバン・ゲレネイドすっよ!それにあの四人は幹部の『灰色之四人グレー・フォース』!もう一人は知らんけど、何故こんなとこに?」

「豚のクソ?またかよ•••って、ツクヨ?何出て行こうとしてんの?」

「あ、あいつは•••母さんの•••母さんの仇!」

「落ち着いて、ツクヨちゃん、今はダメ、後でみんなでぶっ飛ばそう?」

「•••ん」

「マスター、相変わらず名前、間違えて覚えていますよ」

「しかし、その、豚のクソが何でこんなところに?」

「どうやら見た感じあれは、揉めに揉めて刃を向けらてるようだね」

「えぇー、これは厄介だなぁ•••」

「そうっすね、タイミングが悪すぎだっす」

「そうか、それにしても相手は帝王を覗いて六人か•••よし少し様子を見よう。最悪の場合、介入するって事で」

「「「「「おー!(小さな声で)」」」」」


そして壱路達は静かに様子を見守る。


「貴様、目的は何だ?金か?国か?それともわしの命か?」

「いえいえ、そもそもあなた達と組んだのは私達が人帝国を動きやすくしたかったからですよ、まぁ、手に入れたい物は一つ(・・)ありますがね」

「•••••そ、それならそれをやろう!その代わりわしの命は•••」

「じゃあ聞きますよ?『五害之魔玉ごがいのまぎょく』はどこですか?」

「!•••な?!何故そんなものを••••」

「いいから質問に答えてください。愚帝が、じゃなきゃ•••」


サーバンは片腕で指を鳴らす。すると灰マントの内の二人•••バックーソィとずんぐりとした男がマントをめくり現れたのは•••女の子だった。豪華なドレスで着飾っているが一人は意識がなく眠っているようでもう一人もまるで病人のようにぐったりしている。その二人の首元には短剣の刃が•••••。


「あなたの娘がどうなっても知りませんよ?」

「リリア、アルア!くっ、•••貴様ぁ」

「ふっふっふ、さぁ娘さんの命が惜しくば早く在り処を教え、渡しなさい!愚帝さん?」


そして帝王、アドルフ・リ・イスカオテはふらふらと立ち上がり、玉座に付けられた背もたれの部分の装飾を上にスライドした。なんと隠し引き出しになっていたのだ。そしてそこから鮮やかな五色に輝く手のひらで握れる位の大きさの玉を取り出す。


玉はそれぞれ青、赤、白、緑、黒と輝いている。しかしその光はどこか禍々しく、見てるだけで心に不安の霧で満たされる。


「これがそうですか••••おい、イワマ、調べろ」

「はっ!」


サーバンが灰マントの若い男ーーーイワマにそう命ずると彼は玉を一つ一つ見ながら腰の袋に回収していく。そしてサーバンに向かってそっと頷いた。


「どうやら本物の様ですね」

「そ、そうだろう?!だから娘達を••••」

「じゃあそうですね、もう殺していいですよ(・・・・・・・・)。トツア、バックーソィ」


その言葉に安堵に満ちていたアドルフの表情が凍りついた。


「なっ?!ま、待ってくれ!娘達は助けてくれるんじゃないのか?」

「私は一言も助けるなんて言ってませんよ?それに目的を果たした以上、彼女達は私達にとってなんの有効価値もないのだから、それに愚帝であるあんたにそんな交渉の余地、初めから無いに等しい」

「そ、そんな••••」


そう爽やかに残酷な事を告げるサーバンにアドルフはこの世の終わりのような顔をした。


そしてバックーソィとトツアが短剣で少女達の命を奪おうと振りかざすーーー!


しかし次の瞬間、このシリアスな空気に似合わないなんとも軽い声が響いた。


「ちょっと待ってよ、どうせ殺すならさ。こっちの用事を終わらせてからにしてくんないか?」

「「「「「「え?!」」」」」」

「••••••!」


全員が扉の方向を見る。そこに立っていたのは黒衣を身に包み、眼鏡をかけた黒髪黒眼の青年ーーーそう、ブダノストが最も危険視する三大危険人物の一人、『闇鴉』ことイチロ・サガミだった。


「お、お前は•••『闇鴉』!」

「やぁ、豚のクソ諸君。相変わらず風化した糞のようなダサいマント着てるね」

「む、これは流石に私もカチーンと来ましたよ?」

「そうか、あ、あと後ろ(・・)には気をつけてね?」


そう言われて後ろを見るとそこに立っていたのは•••ツクヨとテンタロウだった。壱路の《瞬間移動テレポート》の発展版、《転送転移》により後ろに移動していたのだ。そしてそれぞれの得物を手に持ち•••。


「せぇいやぁ!」

「どらぁ!」


一撃。人質を取っていたバックーソィとトツアに襲いかかる。


ガシュ!ドゴォ!


ツクヨの小太刀とテンタロウの鉄拳による一撃で吹き飛ばされたバックーソィとトツアだが、受身をとったせいか、大したダメージは負ってないようだ。だがその顔からは余裕が消えている。そして動揺するサーバン。


「い、いつの間に後ろに?!それに人質は?!あ!帝王もいない?!」

「ここだよ?」

「なぁ!?あの帝王と娘があそこに?それに奴らも?!いつの間に!」


見ると人質の二人の少女と帝王、ツクヨとテンタロウはいつの間にか壱路の後ろに控えていた。そして同じく壱路の後ろに待機していたヤノバサとテンイートが少女達を安全な場所に運ぶ。


「クソ、あいつ•••あのチビ…殺す!」

「痛い、重い、•••むかつく!」

「あ、あれが•••『闇鴉』の魔法?」

「•••!•••くそ、これでは」

「•••••!!」


幹部達とその他一人が戦闘体制に入る中、壱路は更に挑発を仕掛ける。


「いやぁ、まさかここまで不意打ちがうまく行くとは•••あんたら弱いの?」


その言葉に逆上するバックーソィ。


「き、貴様、何故俺達の邪魔をする!そうだ、お前はいつもいつも俺達の思惑を邪魔し、挙句は阻止した!なぜだ!何故邪魔をする!」


それに続く様にサーバンは疑問を口にする。


「確かにそれは知りたいですね〜?何が貴方をそうさせるんですか?」


サーバンのその言葉に静かに壱路は『オウリュウ』を抜き出しながら言い放った。


「それはね•••••お前らの目的なんて正直言ってどうでもいいんだ、だけどお前らは虫唾が走るよ。やり方が、手段が、その存在が、全てが気に入らない。お前らは、目的の為なら誰かの大切なものを平気で奪う。それが一番気に入らない!だから••••今、ここでお前らを倒して、終わりにしてやるよ!」


その瞳には静かな怒りを宿していた。


そして今、ブダノストとの決戦の火蓋が切って落とされるーーーー。


次回!


第六章、クライマックス!

壱路達がブダノストと戦う中、貫かれた凶刃!

ブダノストの裏に潜んでいた黒幕と、壱路、邂逅!

そして作戦の行方は、人帝国の未来は?!


急展開に次ぐ急展開を見逃すな!


乞うご期待!

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