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黎明のイチロ 〜空から落ちた支配者〜  作者: 作読双筆
第六章 三国大戦 〜英雄、表舞台に現る〜
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第六十二話 帝国進軍、そして協力者

人帝国十万の軍が目の前に構えている。


そんな最悪なニュースが飛び込んできたのは決闘が終わって数十分後の事だった。


「なんだと!」

「ま、間違えありません!」

「くっ、まさか魔王よお主•••謀ったな?!」

「違う!そんな事しないし、私の方が知りたいぞ、人帝国の軍だと?!」

「黙れ!やはりお前達は•••••」

「バサト!」

「黙りません!」

「貴様、魔王様に向かって何たる•••」

「チャンドラ、やめろ!」

「•••しかし!」



疑心暗鬼が周囲に蔓延る中、欠伸をしながら歩いてくる黒衣の少年がそれを変えた。


「いや〜、早速一致団結の時が来たな、お二人さん」

「「イチロ!」」


飄々としながらも静かに問いかける壱路、そして彼は言う。今こそ、手を取り合い協力すべきだと。


「どうする、魔王と獣王?今なら契約延長オーバータイムで働くよ?体力も魔力も九割くらい戻ったし」

「代わりに終わった後は宴会を要求します〜!同盟記念も兼ねて!」

「俺たちも協力するぜ!」

「弟子として頑張ります!」

「キューイ!」

「ピューイ!」

「あぁ、妹の、国の危機(あとサナの為に)を黙って見てるわけ無いだろ!」

「主人に従うは執事の使命ですので」

「わ、私も、獣人族ビストマとか魔族デーマとか関係なくみんな助けたいです(あと人族ヒューマも)!」

「リュアがそうしたいなら、兄の俺がそれに応えるのは世の真理だ!」


壱路の言葉に続くように団結の意思を見せる仲間達。


「ナガザ•••あたしはこの若い奴らに賭けたくなったよ、だから止めても無駄だよ」

「僕も姉さんと同じです、久しぶりに乗るか反るの大勝負をしたくなりました」

「じゃあ俺も〜!」

「•••••ん、賛成••••」

「父上、俺もここは互いに協力すべきと思います、だからどうか!」

「おと様、お願い!」

「父様、お願いします!」

「王よ、私もミアム様、ミンア様の御意見に賛成です」


獣共和国の面々も賛成の意見を唱える。それについては魔王国の面々も同じだった。


「陛下、こんなところで揉めてる場合ではないでしょう。今はみんなで協力し事にあたる事が先決だと己は思う」

「•••••ん、その通り」

「おいらも頑張るっすよー!」

「むん。その通りだな」


この場にいる全員、種は違えど心は同じ方向に向かっていた。


その様子を見て二人の王とバザトは心が動かされた。そして•••。


「お前達•••」

「ふっ、少し頭に血が上ってしまったようだな」

「あぁ•••••王よ、ここは落ち着き、事の対処に当たろう!」

「そうだなバサト、魔王もそれでいいか?」

「あぁ、こちらも取り乱してすまない、しかしそうだな。私達は今、種族の垣根を越えてここに立っているのだ。この程度の危機でそれが壊れるなどありえない!」

「まぁ、昨日の敵は今日の友っていうしな」

「確かにです〜!」

「さぁ、同志よ、いいか?」

「あぁ、共に戦ってくれ!」

「「「「「「「「はっ!我が王のために!」」」」」」」」

「「「「「「「「「「「「おおっ!」」」」」」」」」」」」


そんな胸が熱くなるような展開になり、皆がその空気に包まれたその時、それ(・・)は現れた。


「おうおう?なんか知らんが面白い事になってんな〜?」


そこに立っていたのは人間の男だった。髪の色は群青、年恰好は三十代後半、服はくたびれてヨレヨレで無精髭を生やしてるが顔はなかなか整っている。


「な、何者だ!」

「貴様人間か!まさか人帝国の手の者か!?」

「おいおい待ってくれよ、俺は確かに怪しいかもしれんがただのナイスミドルだぜ?」


そんな風にやんわりと受け流す男、その男を見て一同の中で二人、何故か嬉しさと戸惑いの表情で彼を見ていた。テンタロウとテンイートだ。


「お、おやっさん!?」

「あ!?おっちゃん!」

「久しいな、テンイート、あとテン坊」


そんな中チャンドラとバザトは何か思い出したように目を見開き、驚愕する。


「•••まさか、お前はジャックか?!」

「ジャックだと•••まさかあの?!」

「え?誰あの人?」


壱路の疑問にテンイートが答える。


「イチロさん•••あれは俺の恩人でもある人族ヒューマ•••••『探求者』と呼ばれたギルドマスター、ジャック・ライトベアさんっすよ!」


そう、そこの一見呑んだくれに見える中年男性こそ人帝国最強と謳われたギルドマスター、『探求者』ジャック・ライトベアだった。


「あ、ギルドマスターは違うぜ、もう辞めたし」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」



全員がその発言に言葉を失った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ジャック・ライトベア・・・人帝国【イスカオテ】において最強と呼ばれるギルドマスターであり、人格者でもある。国にギルドと呼ばれる一種の派遣システムを組み込み王に唯一意見できる相手として有名らしい。しかし当の本人はもうその仕事はやめたらしい。本人が言うに•••••。


「だってめんどいし、書類仕事ばっかだし、飽きたんだもん」

「(どっかのゆとり教育の就活生かよ!)へぇ••••」

「それにおやっさん、何の用なんだ?」

「あぁ、ぶらぶらしてたらよ、偶然とんでもない魔力を感じたんだ。そしたらそこの黒いにいちゃんと獣王がガチでバトってるのを見てたんだよ」


どうやら壱路のナガザの決闘を酒を飲みながら見物していたようだ。


「しかし、話を聞くに、人帝国が軍を率いただと?あいつ、とうとう見境なくなってきたか」

「人帝の事をご存知なのですか?ジャック殿」

「まぁ、昔、生き死にを共に誓った友だよ、けどあいつはもう、自分も見失っちまって、俺がなんといっても無駄だと思うぜ」

「••••••」


その話を聞きながら、壱路は考えていた。最小の犠牲(実質敵味方被害ゼロ)で、この危機を乗り切る術を••••。そしてフォウンに話しかける。


「(フォウン、マップと僕の《検索サーチ》で調べて欲しい事がある。その軍の率いている人物は誰だ?)」

「(分かりました〜。•••••おぉ?軍を率いている人、分かりましたよ)」

「(誰?)」

「(あの、レギンさんの時の三人組の一人です、マスターが腕切ってない方の男の人)」

「(あの三バカの•••••あいつか、じゃあ、人帝はいないのか?)」

「(恐らく、城にこもってると思いますよ?権力者は自分の身が第一!みたいなもんですからね〜!)」


ここまで聞いて壱路は半分ほど、企みが固まってきた。そしてメガネをかけ直しながら、笑顔を浮かべる。


「(なるほど、じゃあ、親玉は城にいるって事か••••)なら簡単だな」

「へ?壱路、どうしたんだ?またフォウンと話してるのか?」

「天太郎、聞きたいことがあるんだが、ゴニョゴニョゴニョ•••」


壱路は天太郎の耳元で企みを簡潔に話す。それを聞くと驚愕の表情を浮かべる。


「•••••えぇ?!」

「出来るか?」

「まぁ、何とかなるけど••••」

「じゃあ、よろしくな」


そう言って壱路はジャックの元へ向かい、話しかけた。


「なぁ、ジャックさん」

「ん?」

「僕らと手を組まない?」

「イチロ?!」

「相変わらずの直球だな」

「ほう••••言うじゃねえか」

「まぁ、聞くだけ聞いてよ、あんたにとっても悪い話じゃないんだから。あ、ピアとナガザも聞いてよね、これからの、三国の行く未来さきに関わるんだから」


数十分後、壱路は語った。この事態を止める策とそれが終わった先の出来事を。それを聞き終えた三国(一人は違うが)の面々は互いに顔を合わせ、息を呑んだ。


「•••で、という事でこれで何もかも丸く収まるってワケ!」

「す、凄いというか何というか•••」

「うむ、これなら良き方向に向けられる」

「•••••悪くねえな」


どうやら三人の意思は同じらしい。


「普通はこんなのは駄作中の駄作みたいなもんだけど、今ここにいるのは奇跡と偶然と確率が恐ろしいほどに上手く噛み合った、正しく導かれしものたちだからな、なんとかなる筈だ!」

「確かに、奇跡というか何というか•••」

「ふむ、それよりも•••••作戦名は何ていうんだ?それなりにカッコイイ名前にしとかないと•••『ツインウイング』はどうだ?」

「いや、別にどうでもいいと思うが?!それよりも我は『シシノトリグイ』の方が••••」

「獣王、貴方もノリノリではないか!ちなみに私は『トライブレイク』がいいと思うぞ!」


作戦名で揉める三人、そんな三人を見て壱路は意見を口にした。


「•••じゃあ『陽囮陰撃』でいいんじゃない?」

「「「•••それだ!」」」

「じゃあ、これで決定だ、後はみんなに話して早めに実行に移すよ!」


今ここに、後々三国大戦の山場と語られる事になる作戦、『陽囮陰撃』が始まった瞬間だった。

次回!


壱路が発案した作戦、その名も『陽囮陰撃』!

3種族(異世界人とその他も含む)が協力する大作戦が発動する!

そんな壱路達の前に立ち塞がるのは•••••?


乞うご期待!

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