第六話 遺跡と妖刀
壱路が人帝国を出て数日経った頃、壱路は今とある山の中にいた。
「フォウン〜、あとどれくらい歩けば着くんだ?」
「もうちょっとです〜。てかそれついさっきもそう言ってましたよ〜?」
「そうかな?」
たわいない会話をしながら山の生い茂る木々の間を歩いていく。壱路は獣共和国に向かう途中、立ち寄った村でこの山に奇妙な遺跡があると言う噂を聞いたので、好奇心にかられて見に来たのだ。
旅に出てから結構場数を踏んでいるのでそこそこなステータスにはなっていたので大抵の事には対処できると思う。
イチロ・サガミ
Lv 15 age:18
HP C
MP EX
ATX C
DEF C
AGL A
EXP 2580
NEXT 920
【魔法属性】 無
【魔法】 支配〈直接開放〉
〈称号〉
異世界人・支配者・想定外の来訪者
イチロ・サガミ
Lv15 age 18 rank E
出身地 不明
クエスト
装備
黒の学生服 メガネ ブラックコート
ククリナイフ 布袋
シギル 14500
レベルや能力値はもちろん増えていた。
「しっかし、マスターが遺跡に興味をもつとは意外ですね〜。そういうの好きなんですか?」
「まあな、小さい頃から好きなんだ。昔の人の心に触れるような感じがして、ちょっとワクワクしてくる」
「へ〜、マスターもそんな趣味が・・・あっ見えてきましたよ〜」
目の前に見えたのは、地面に倒れている巨大な一枚の石版だった。その石版には9匹の小さな動物と鱗をもった爬虫類みたいな生き物・・・いわゆるドラゴンが描かれていた。
「遺跡って・・・・・」
「これみたいですね〜」
「もっと凄いの期待してたのに・・・・・・こんな石版一枚・・・・こんな・・・・」
「まあまあこんな時だってありま・・・・・あれ?」
突如フォウンが疑問の声をあげた。
「ん、どうしたの?」
「マ、マスター!この石版の下の方になにか大きな空間がありますよ!」
「なにっ?って事はこれ隠し扉?!なんで分かったんだ?」
「フッフッフッ、ワタシの探索能力を舐めないでいただきたいですよ、マスター」
「あ〜、あのとんでも機能か」
このフォウン、意志を持ってから、何かと不思議な力が使えるみたいで今みたいに物やなにか隠されたものを見つける探索能力もその時使えるようになったようだ。
「つまり、この石版をどかすなりすれば下の空間とやらに行けるのか?」
「そうですよ〜。でもどうすれば開くのか分かんないですが」
「フッ、そんなのはな・・・こうすればいいんだよ!」
魔力を纏わせながら石版に手を乗せる。
「開けっ!」
すると石版が音を上げながら横にスライドしていった。そして見えたのは・・・いかにも何かありそうな階段だった。壱路は魔法で石版にどくように命じたのだ。
「いや〜.いつ見てもマスターの魔法はチートですね〜」
「もう分かってるよ。さぁ、行くぞ!」
壱路はズカズカと階段を降りていく。しばらく降りていくとそこには・・・・。
「これは・・・・鍛冶場・・・・か?」
「おお〜。これはこれは本格的な・・・・」
そこは炉、鞴、金床などの設備が置かれている鍛冶場だった。どうして地下なんかにあるかはこの際考えないでおこう。ベットやクローゼットも置かれており、人が一人住むには十分な広さだった。
置かれている道具は長らく使われて無かったのか多少古びているがまだまだ使えそうなものばかり揃っている。
中でも壱路が興味を持ったのが、鍛冶場にかけてあった布袋だ。調べてみるとこの布袋はある種のアイテムボックス、いわゆる魔法の袋であり入れる物の量や大きさを無視でき、重量も感じず、必要な物を念じるだけで取り出す事が出来る魔道具なのである。もちろん収納された物の時間は停止しているので収納された以前の状態を保つことができる。つまり食料も保存出来るのである。
人帝国にいた時も見かけたが高額で手がつけられず諦めていたので、こんな所で手に入るとは嬉しい事だ。
「いや〜、結構な拾い物ですね〜」
「うんうん、ここの持ち主に感謝だな。さぁ〜て、他にはどんな物が・・・・あれっ?」
壱路の目線にある物・・・それは壱路も見た事がある代物だった。
「これ・・・・刀・・・・だよな?」
そこに掛かっていたのは日本刀ソックリの刀だった。形も長さも同等で装飾は黒一色で統一されていて、柄には見事なヤマイヌの絵が彫られていた。
興味から思わず手にとって鞘から抜いてみる。刀身の色は青とも赤ともいえる鮮やかな紫色に染まっておりその目を奪われる妖しい美しさに驚愕していた。
「いや〜なんかこの刀ヤバいオーラ漂ってますけど・・・これ俗にいう妖刀か魔剣なんじゃ無いんですか?そんな危険な物だったら聖剣とか神々しい方がいいんじゃ・・・」
「別に妖刀でも魔剣でも構わんだろう? そもそも魔剣と聖剣の違いなんて力がプラスに働いたかマイナスに働いたかというだけだ。
第一そんな事いちいち考えていても仕方がない」
壱路は基本的祟りや迷信、呪いを信じないタイプなのだ。それに何かあったら魔法で無理矢理押さえ込めばいい。
しばらく壱路が刀の刀身を見つめていると何やら淡く光り始めた。そして次の瞬間・・・
「あれ・・・ここは・・・」
いつの間にか壱路は謎の空間に立っていた。白一面に染まって何もない。遥か彼方の地平線だけが続いている。そう、例えるならある映画で見た精神世界みたいな・・・。
何故いきなりこんな所にいるのか考えてみる。思い当たる原因と言ったらあの刀しかない。それにさっきまで持っていたフォウンも見当たらない。
ーーーーーーようこそ
何か声が聞こえた。辺りを見回してみると小さな人影が見える。
よく見るとそれは子供だった。服は黒い着物みたいなものを着ていて、顔は美しく中性的で男にも女にも見え、ふわふわとした長髪は鮮やかな紫、瞳は爬虫類に似ていて竜のようで髪と同じく紫に染まっている。だがなんとなくその子を見ると既視感に陥る。特に瞳だ、あんな感じの目を過去に見た事がある。そんな感じがする。
「お前は誰だ?」
「 フフッ君にはもう分かっているんじゃないのかい?」
「・・・まさかとは思うがお前、あの刀の思念か?」
「せい〜か〜い。君意外と鋭いね」
なんだか人を喰ったような態度をしている。ちょっと気に入らない。
「さ〜てじゃ単刀直入に要件を言うよ?」
「面倒くさいのはごめんだぞ?」
「大丈夫だよ。そんなに難しい事じゃないから、簡単に言うと・・・・死んで?」
「嫌です」
(今とんでもない発言したぞ。このガキさらっと死ねって・・・そんなの誰だって断るぞ)
壱路がそう考えていると、その子供の長髪の先が刃の様な物に変形していた。
「大丈夫だよ、助かる方法ならあるから。
君がボクの名前を呼べばいいだけだ。まあ僕の名前が分からなければ無理だけどね〜」
「このガキ・・・」
「まあヒントぐらい教えてあげてもいいよ?」
「ヒント?お前、僕を殺したいんじゃないのか?」
「ああ、そうだよ。けど君は不思議な感じがする・・・だから君が使い手にふさわしいか試してみたい、そんな気持ちもあるんだよ」
刀の思念が悲しそうに笑った。その顔はやはり見覚えがある。だけどそれをどこで見たのか思い出せない。間違いなく見たことあるはずなのに・・・。
「さてもう無駄話はおしまい、おまちかねのヒントだ。ヒントは二つ、一つ目は今ボクが君にしようとしてる事。そして二つ目は・・・・君がここに来る前に見たあの石版」
これらのヒントを聞いて壱路はなんとなく刀の名前が分かったような気がした。壱路の世界にある中国の伝説、それがこの世界にもあれば・・・・・いや絶対あるはずだ。だけどただ名前を呼ぶだけじゃ駄目な気がする。そうこの奇妙な既視感がそういっているのだ。そんなことを考えていると・・・・。
「そろそろ考える時間はおしまいだ。さあ・・・・・」
刀の思念の顔は妖しく笑っていた。
「死んでもらうよ」
次回
妖刀に感じた既視感の意味、そして妖刀の名前が明かされます。
壱路がどうやってこのピンチを乗り切るのか、乞うご期待!