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黎明のイチロ 〜空から落ちた支配者〜  作者: 作読双筆
第六章 三国大戦 〜英雄、表舞台に現る〜
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第五十九話 《障害ヲ打チ破ル者》

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「らぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



刀と斧がぶつかり合う。それは空気を振るわせ、大地を揺らす。刃と刃が擦れ合い、ギチギチギチギチと悲鳴をあげる。



壱路は視力と反射神経を限界まで上げて、ナガザは経験と獣の本能に従い、互いの剣戟を捌き、相手に当てようとする。しかし、それができず、膠着状態が続いているのだ。



それにナガザは獣化を使い自らの肉体を、武器を強化、炎のような荒々しさで強さを高める。



時折、隙をつき魔法で攻撃しているが、赤い蒸気がそれを溶かすように無効化、まったく効かないのだ。



「ははは、どうしたどうしたぁ!まだまだそんなもんではないだろう!」

「このっ、やろ〜〜!(明らかに一撃がだんだん重くなってるーーーまさかこんな奥の手があったとは•••)」

「それそれそれぇ!」

「ぬ、ぐぁ••••••でらぁ!」



お互いに一歩も引かない戦いが行われていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

場面は変わり、クレーターの外から観戦している獣共和国の面々の中でバサトは不安を顔に表していた。



「まさか•••あれを使うことになるとは。ナガザ、それほどあの男が脅威だというのか」

「バサト、あの斧は•••••?」

「『神喰斧しんしょくふ・ヒャクジュウ』•••初代獣王クーライガが振るったとされる斧です。あれを使うことで獣化の《内法》と《外法》を極めし者だけが使える奥義《灼法》が使えるようになります」



《灼法》•••それは獣化の中で奥義として分類されるもので《内法》と《外法》を極めし者だけが習得する事ができる。文字通り生命力を燃やして赤い蒸気を纏い、闘う姿から名付けられ、発動中はいかなる攻撃、環境にも適応でき、魔法も吸収、無効化し自らの力とする。•••••所有者の命と意思を対価にして。



「そ、そんな事が•••」

「でも、それじゃあおと様は?!」

「あぁ、だからそれを使うということはナガザの命に関わる、それを承知しているとすれば•••••」

「•••あの男が••••それほど強いという事•••?」

「あぁ、しかし、奴も無事で済むとは思えないがな」

「イチロさん•••」



リュアはイチロの安否を心の内で心配していた。



一方、魔王国と壱路の仲間達も息もつかぬ様子で、じって見守っていた。



「あ、あれはいくら壱路でもやばいんじゃないのか?!」

「た、確かに•••そうかもしれません」

「やはり、あの方にも無理なのか••••」

「でも、まだ決まった訳じゃあねぇっすよ、ね?」

「••••ん」

「ふむ、これは勝負の行方が分からなくなってきたぞ」

「イチロ君•••押されてる」

「やはり、私が出るべかだったか•••」

「師匠•••」

「ふっふっふ〜、みなさんな〜に、言ってるんですか〜?」



皆が不安を口にするなかフォウンが余裕を持った口ぶりで語った。



「そろそろマスター、手を抜く(・・・・)のを辞めるみたいですよ?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そんな中、壱路とナガザの状況にも変化が出てきた。



「せぇらぁぁぁぁぁぁ!」

「あっ!」



壱路の手から『オウリュウ』が弾き飛ばされた。



「くそっ」

「させるかぁ!」

「がはぁっ!」



取りに行こうと身を振り返す壱路、しかしそこに獣王の左フックを腹に喰らい吹っ飛んでしまう。



『オウリュウ』からも距離が遠く、立ち上がるのもやっとな程に追い詰められていた。腹の痛みを《治療ヒール》で癒すが、状況はこっちの方が圧倒的に不利だ。



「い、いてててて•••••《治療ヒール》」

「これで終わりか?今なら降参すれば••••」

「言うかよ。こう見えても負けるのは嫌いなんだ」

「そうだな、しかしこのままでは貴様は負けるぞ?」

「この脳筋王め••••(そうだな、このままじゃあまずい、••••仕方ない、やるか)」



壱路は決意した。この戦いは負けられない、絶対に•••勝つ、そう思い彼は手に入れた新たな力を宿す。本当の奥の手を。



「だったら、見せてやるよ」

「•••••ほう?」

「実戦に使うのは初めてなんだ」



壱路は手で合掌をとり、目を閉じる。すると、壱路の内から魔力が洪水の如く溢れ壱路に纏わりつく、そして次の瞬間、輝かんばかりの光が放たれた。



「むっ!」



その光に目を眩んだ獣王だが光はすぐに収まる。しかし、それ以上に獣王は驚愕したのは、壱路のありえない変化を見たからだ。



「《障害ヲ打チ破ル者(モード・ウルスラグナ)》」



髪の先は金色に変色し、瞳の色は太陽のような黄金色、そして服や肌には所々線のような紋様が引かれている。溢れるのは神々しいまでも気高い神威、その姿はまさしく金色の神、いや、戦神というべきだろう。



「ここからは僕のターンだ」

「むぅ、見てくれは変わったが、それで勝てるのか?」

「どうかな?」



ナガザの挑発を一蹴し、壱路は脚に力を入れ呟く。その力の一端をーーー!



「《化身アワタール強風現身きょうふうげんしん》」



刹那、壱路の周囲に金色の風が吹いた。そして風が止むと同時に壱路はその場から消えた(・・・)



「なっ?!」

「•••••吹き飛べ!」



驚きに顔を歪ませる獣王はいつの間にか後ろに立っていた壱路に気づき、振り返ろうとする、しかし壱路は右手で拳を握り締め、また呟く。



「《化身アワタール金剛牛禍こんごうぎゅうか》」

「ぬぐ••••うぉぉぉ!?」



金色の籠手が壱路の両腕に纏われる。その表面には力強い雄牛の絵が装飾されており、込められた力を解放する。そのまま獣王は右ストレートを打ち込まれ、面白いほどに吹っ飛んだ。



障害ヲ打チ破ル者(モード・ウルスラグナ)》•••それは壱路が作り上げた〈支配〉の新たな形。ゾロアスター教で崇拝される英雄神にして勝利を司る神、虚偽者や邪悪なる者に罰を与え自らを崇拝するものには勝利を与える軍神、ウルスラグナをイメージした力。アワタールと呼ばれる10の姿に変わり、戦場を駆け抜けたウルスラグナの力を再現しているのだ。



詳しい力の説明は後でするとして、その力を魅せた壱路は宣言する。



「そろそろ勝負をつけさせてもらうぞ、獣王!」



今、勝負は佳境に入ろうとしていた。


次回!


壱路VSナガザ、決着!

その勝者の行方は!?

そして壱路の真意が明かされる!


こうご期待!

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