第五十七話 決闘当日と再会、再び
時は進む事、決闘当日、獣王ナガザは今、城の宝物庫よりあるものを取り出していた。その背後に立つのは側近であり、友であるバサトだ。
「いいのか?ナガザ、お前が闘うのは分かるがあれを持ち出す程のことなのか?」
「バサト、お前の言っている事は分かるがこれを持っていくのはあくまで保険だ、なぁに、心配する事はない!」
「•••そうか」
バサトは全て納得したわけないが、一旦は引くことにした。それほどナガザが持ち出す物は危険な品なのだから•••。
「しかしあの男•••かなりできるな」
「あの男•••••あの黒衣の男ですか?奴はミンア様を攫った奴ですよ」
「ふ〜む、殺すのは惜しいなぁ•••せめてあやつの名前だけでもわかれば引き抜けるのに••••」
「お父様、失礼します」
そんなことを考えていると宝物庫前に四つの影が見えた。
「おや、ミアム、それにオズ•••あとミンアと君は•••」
「リュ、リュアです、こんにちは」
「お父様」
「旦那様」
「はい、お願いがあります。•••••今日の決闘に私たちもついて行って宜しいですか?」
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場面は変わり魔王国そして開始時刻、壱路達は獣王の伝令から聞かされた場所に転移していた。
メンバーは壱路、ピア、フォル、サナ、ツクヨ、フォウン、ヒルデ、天太郎、ウリ、第一位に返り咲いたチャンドラを含めた魔王騎士団の面々だ。
決闘に指定された場所は【ジャクマガラの剣墓】。古の昔、かつての獣王ジャクマガラが戦で死んだ兵達を敵味方問わず敬意をもって弔うため剣を墓代わりにし、魂を治めたと伝えられる場所だ。
「それにしても見渡す限りの剣の丘だな」
「はい〜、そうですね〜」
「すっごいです〜!」
「キューイ!」
「ピューイ!」
「本当だぜ•••••凄いな」
「ここで戦うとは、獣王は何を考えているのか、分からないな」
「はい、フォル様」
壱路達はその光景に見入っていると向こう側から声が聞こえた。
「イチロさーん!」
「イチロ〜〜〜!」
「よう!坊主!元気にしてたかぃ〜?」
「あぁ、イチロ君一年ぶりかな?」
「イチロにぃ、おはよー!」
「イチロ様、お久しぶりです」
リュアやミンアはもちろんアルシャークにアサミケ、ヨルシマ姉弟、そしてミアムとオズなど懐かしい面々が見えていた。どうやらミアムがナガザに『お願い』して会う時間をくれたらしい。
「あ、リュアちゃん、また会ったね。あとアルシャークも久しぶり」
「あとってなんだ!あととは!」
「相変わらず暑苦しいよ、」
「コンニャロー!イチロ〜!俺の一年間の修行の成果を受けてみろコラァー!」
アルシャークの怒りを込めた拳を壱路は軽やかに避けた。そしてアルシャークはそのまま•••••転んだ。
「ふぐぅっ!」
そんな光景を見てお互い笑みを漏らす魔王と獣王。とてもこれから国と国の決闘が始まるとは思えなかった。
「いいのですか?このような事をして•••••」
「構わんよ、彼らは元々仲間だったのだぞ?個人の仲を国が割くのは不義理だと思わんか?それくらいは笑ってやるのが王というものだ」
「ふふふ、そうですね」
「ははははははははは!(まぁ、他の奴らを黙らせるのには苦労したがな)」
高笑いをする獣王はさておき、時間も時間なのでチャンドラが呼びに来た。
「さてイチロ、そろそろだ」
「あぁ、分かったよ。みんな、また後でね?」
「はい、イチロさん••頑張ってくださいね!」
そう言ってリュア達は獣共和国の陣地に戻っていった••••••。
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そして舞台は整い、二人は剣墓の中央に位置する巨大なクレーターの中心で対峙していた。このクレーターはかつて獣王ジャクマガラが魔族と戦った際に凹ませたものと言われている。
片方は異世界から舞い降り、強大な力であらゆる不条理や悲劇を捻じ曲げてきた黒衣の支配者。
また片方は歴代最強と謳われ民からも慕われている金色の獅子王。
その二人が今この場で激突しようとしているのだ。国と国を賭けて。
「(ミアムから聞いていたが、まさか奴が人族だったとはな。驚いた驚いた、••••まぁ、引き抜くにしても反対されたら説得すればいいか)覚悟は出来たか?イチロ・サガミ!」
「(間違いなくあれは強敵だな、実質獣共和国のナンバーワンだし•••でも〈支配〉の力をうまく使えば何とか•••••)まぁ、腹はくくって行くしかないでしょ、この状況じゃあ」
「ほうほう、その心意気、よし!ではいくぞ!」
「じゃあ、•••••始めますか」
今、国と国の未来がかかった一戦が幕を上げた。
次回!
ついに始まったイチロとナガザの決闘!
チートの異界人と最強の獣王の全力を込めた技の応酬!
そして••••••?!
乞うご期待!




