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黎明のイチロ 〜空から落ちた支配者〜  作者: 作読双筆
第五章 魔王国御家騒動 〜因縁と陰謀と決意と魔の歌姫の涙〜
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第四十八話 暴走の金、嘲笑う赤、決意の黒

突然のフォルの豹変、そしてアルファスの奇行に壱路を含めた全員が動揺と驚愕の感情が渦巻いていた。



「フォル!」

「フォルさん!」

「ど、どうなっているんだ!?こりゃぁ!」

「フォ、フォル様!」

「猊下!」



そんな中ウォーランは憤怒の表情を浮かべ、アルファスに問い詰めた。



「アルファス、貴様ぁ、一体何をしたぁ!」

「くふふふ、ふふふふふふ、ははは!私の計画をぶち壊すとは、とんだイレギュラーがいたものだな、しかしそれでもフォル様に埋め込まれた呪いには気付けなかったがな!はっははははは!」



「呪いだと?まさか•••••あの風貌、まさか

暴走の刺青(ランページ・タトゥー)》か?!」

「《暴走の刺青(ランページ・タトゥー)》?!チャンドラ、それは一体何なんだよ!」



暴走の刺青(ランページ・タトゥー)》・・・それは魔大陸に伝わる呪いの刺青、それを刻まれた者は呪いが発動した際に魔力が暴走、そして意識を封じられ、呪いをかけた者の命令を実行する殺戮人形になってしまう恐ろしい刺青なのだ。



「私は先代魔王殺害の際、フォル様にある命令を刺青と共に刻んだ、《妹であるピア様を自らの手で殺害した後、自らも自害する》という命令をな!」

「•••••••え?」

「まさか、フォル様は元々、命を捨てるつもりでここに!?」

「アルファス、そこまで性根を腐らせたのか•••••!」

「なるほど、だからフォルは国を捨てたのか•••妹さんを守る為に」

「そんな、私は•••私は•••••••!」



ピアは涙を流し、泣き崩れた。兄の心遣いに、想いに、殺意を持ってでしか答えられなかった己の未熟さに、真実を知らず信じるべきものを信じなかった己の浅はかさに。



「さて、そろそろ離れろ、クソ犬が!」

「ぬ?!くはぁ!」



なんの前兆もなくウォーランが壁に恐るべき速さで激突した。そしてアルファスは高笑いをあげながら声を上げた。



「ははは!バレてしまったからにはこの場にいる全員生きて帰さぬぞ!この場にいる全員を始末してやる!」

「く•••••アルフーァス!」



怒りの声を上げるチャンドラ。一方、ウォーランの安否を案じて残った魔王騎士団スクリーム全員はウォーランの元へと駆け寄っていた。



「ウォーラン、大丈夫!?」

「つ、く•••••」

「テンイート、観客の保護と避難をお願い、ワントは陛下を護って。ウォーランの事は私に任せて!」

「わ、わかったよ、シューナの姉御、ワントさん、行こう!」

「あぁ、任せとけ!」



そして事態を重くみたのか、壱路達の方にも動きがあった。



「テンタロウ、ツクヨ、サナさん、頼みがある」

「なんだ、壱路?」

「師匠!なんでも言ってください!」

「•••••••はい」

「観客を避難さして、後なんか起きたら臨機応変に対処、以上だ」

「簡単すぎるわ!てか、お前はどうするんだよ!?」

「決まってるだろ、フォルを止めて、あのくそ野郎を吹っ飛ばす!」

「そ、それならみんなでやれば•••••」

「ツクヨ、みんなに観客を避難してもらうのはちゃんと訳があるんだ」

「「「•••••え?」」」

「(マ、マスター、ブチ切れてる•••!)」



そう、フォウンだけは分かっていた。壱路は誰かが泣く事を、そして理不尽な事をとても嫌う。そして怒る。それはヒルデ(因みにヒルデは現在ウリノシンと共にウォーランの迎賓館で留守番してる)の母、レギンの死の際に見せた感情と同じだった。



「•••••正直いって、僕は今、すごく機嫌が悪い、だから周りを見て手加減なんか出来ないと思うから、だから頼むよ••••」



よく見ると壱路の手から血が流れ出ていた。壱路は本気で怒ると手を強く握りしめる癖があるのだ。その様子を見て三人は決断した。



「••••••分かったぜ、壱路、だけど絶対にあいつをぶっとばせよ!」

「頑張ってください!師匠!」

「ご主人様を頼みます、イチロ様」



壱路を信じて三人は自分のすべき事をするため、急いで飛び去った。そして隣にいたチャンドラが壱路に呼びかけた。



「私は共に行くぞ、弟の過ちは兄である私が正すべきだからな!」

「おう、やってやれ、お兄さん!」



そして壱路はアルファスの事はチャンドラに任せ、自分はカチカチと鎧を鳴らしながらピアの元へと歩き、近くで足を止めた。



「(さて、今まで目立ちたくないからコソコソ隠れてたけど、そろそろ潮時かな••••もう魔法を隠すのは止めた、ここからは本気でいく!)おい、そこで泣いてる魔王さん」

「••••••••あ、貴方は?」

「改めましてこんにちは、泣き虫魔王さん?僕はイチロ・サガミ、フォルの仲間です。いきなりだけどさ、そこで泣いてると邪魔だから退いてくれない?」

「ほ、本当にいきなりね•••••何をするの?」

「決まってるだろ、フォル気絶させてアルファスを半身不随にするだけだよ。だからさ、あんたはもう泣き止めよ」

「だって、あたしは、あたしは、お兄様の事•••••殺そうとしたのよ!許されるはずないじゃない•••••」



彼女は泣いていた。それは最初に見た凜とした魔王の姿ではなく、過ちを犯し後悔し涙を流すただの少女だった。それに言葉遣いも少女のそれとに変わっていた。



「あー、そんな事ないと思うよ?それすらあいつ、想定してたみたいだし」

「でも••••••••」

「あぁ、もう泣くな!そんなに泣くならフォルが元に戻ったらちゃんと謝ってやれ!そうすればあいつの事だから泣いて許してくれるよ」

「••••••••本当?」

「本当」

「ふふっ、お兄様はいい仲間がいたのね」

「よしよし、それでいいそろそろあっちも来るみたいだから、はやくあっち行けよ」

「ゔあぁ!」



話している間に、フォルは紅色の剣を振りかざしながらこちらに向かっている。そして•••••••。



ギィィィン!



振り下ろされた紅色の剣は菫の刀によって止められた。『コウトクオウ』の《村雨》の刃だ。



「全く、誰にも相談しないで勝手に突っ走りやがって•••」

「うぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「止まってろ《貪り食う足枷(グレイプニル)》&《阿樹雨あきさめ》」



貪り食う足枷(グレイプニル)》により動きを止め、そこに《雨竜之錆うりゅうのさび》で出来た樹で相手を拘束する《阿樹雨あきさめ》でフォルの動きを止める。



「ひとまず動きは止めさせて•••」

「うぐぁぁぁ!」



しかしフォルはそれを何もないように力任せにそれらを壊した。どうやら暴走して身体能力も向上しているらしい。



「足止め程度にしかならないようだな••••••」

「ぐぅぅ•••••」

「分かったよ、フォル、本気でお前を••••とめてやる!」



壱路は決意を胸にフォルへと向かって行った。

次回!


暴走するフォルと壱路の魔法が激突!

そしてチャンドラとアルファスの兄弟対決も始まる!

そして激化する戦いの中で聞こえてきたのは•••••?!


乞うご期待!

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