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黎明のイチロ 〜空から落ちた支配者〜  作者: 作読双筆
第五章 魔王国御家騒動 〜因縁と陰謀と決意と魔の歌姫の涙〜
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第四十四話 過去と涙と集いし決意

フォルがなぜ『大罪人』と呼ばれるのか知るため、壱路達はウォーランの話に耳を傾けた。



「まずどこから話すべきか・・・あれは90年ほど前、己が魔王軍に志願しようとしてた頃、フォル様とピア様に出逢ったのだ」

「ピア様って誰だ?」

「フォル様の妹君で現魔王です」

「妹さんがいたんですか〜」

「あぁ、あの頃のお二人は髪型以外はそっくりでな、黄金の双真珠と呼ばれるほどの愛らしさで・・・」

「ストップ、話が逸れてる。それは後でいいから」

「あ、あぁ、すまん。でな、己はお二人に気に入られたのと実力を示して当時の第三位をぶっ飛ばしたのもあり、第三位の号を手にする事が出来たのだ」

「いや、色々突っ込みたいけど、今はあんたの活躍やフォルの子供時代の事じゃなくて、国を出て行くきっかけを教えてよ」



無理やり軌道修正して壱路はウォーランに話を進めるよう催促した。



「ごほん、すまんすまん、フォル様が『大罪人』と呼ばれるようになったのは30年前に起こった事件が原因だ」



その事件は残酷と言っていい内容だった。始まりは当時の魔王騎士団第一位、チャンドラ・ライザ・レイモンドが何者かによって殺害された事からだった。何者かによって殺害されたのか、みんな疑心暗鬼になり、犯人捜しに躍起になったという。



しかしその殺された彼は魔王に次ぐ実力を持っており犯人は相当な実力者を持つとされた。



「彼の遺体は右腕しか残ってなかったのだ・・・あの時はショックだったぞ」

「右腕しか残ってなかったのか?」

「ああ、そして彼の足取りを洗ってみると思わぬ人物に辿り着いた」

「ま、まさか・・・その人物がフォルさん!?」

「そうだ、殺される前日、侍女がフォルと彼が言い争っている場面を目撃したからな、彼への疑いは深まっていった・・・」



そして騎士団がフォルを任意同行を求めようとした矢先に事件は起きた。



「無惨だった・・・ただそこは赤一色に塗りつぶされていたのだ」



王の間で衝撃音を聴き駆けつけるとそこには血塗れになったフォル達の父、先代魔王とそこに立ち尽くし、血塗れになったフォルとそのフォルを睨みつけ、地に倒れたチャンドラの双子の弟、アルファス・ライザ・レイモンドがいたのだ。これは決定的だった。すぐさまフォルを捕らえようと動き出す騎士団だったがフォルは圧倒的な力でそれを退け、逃亡した・・・。



「そ、そんな・・・」

「そしてフォル様は魔王殺しとして『大罪人』と呼ばれるようになった、その後ピア様が魔王を継承して今に至るのだが・・・質問はあるか?」

「あ、あのさ、ウォーランさんはこの件に何か裏があると思ってんだろ?」

「あぁ、先代魔王殺害の際、唯一の目撃者であるアルファスはフォル様が先代魔王を殺し、食い止めようとしたが成すすべなくやられたと言うが、なんとなくきな臭い。フォル様が先代魔王を殺す動機は無いのも理由だが・・・」

「その序列一位殺しを先代魔王が感づいたからとか?」

「んー、そうだね、ありうるけど・・・」

「でも、フォルさんだったらもっと上手くやるんじゃ・・・」



みんながウンウンと考えていると、フォウンが突然こう口走った。



「あれ?そういえばサナさんはなんでフォルさんについて行ったんですか?」

「あ!そうですね!気になります!」

「・・・私は、魔王騎士団第六位だった姉がフォル様を追跡してたので、共にフォル様の行方を追っていて国を出て遠くへと行きましました・・・そしてフォル様に会った時、初めてあの人が誰かにはめられたのは明白だと思いました。それにフォル様はしきりにアルファス様の動向を常に把握したがってました」

「なるほど、怪しいな、そのアルファスって人は」

「けどフォル様はいつも確証がまだ無い、と言ってはぐらかしていて・・・」

「己も伝書鳩を使い時々その国で起きた事を書きながら情報を得ていたが・・・いつしかそれもこちらの一方通行の手紙でしかなくなったのだ」

「そうですか〜、だからフォルさんはマスターの事を・・・」

「それにしてもなんで手紙が一方通行になっちまったんだ?」

「・・・それは姉は病であの世へ去ってからフォル様は日々を怠惰に過ごすようになったからです、姉とフォル様は・・・その、お互いに好いていましたから、その時からフォル様は笑わなくなりました」

「え?笑わなくなった?」

「はい、表面では笑ってても心は全く笑って無い・・・けどイチロさん達に会った事でフォル様はようやく過去にけじめをつける決意をして、本当の笑顔を見せるようになりました。だけどあの人は・・・・やっぱり一人で解決しようとして」



サナが苦しそうに、悲しそうに顔を歪める。



「・・・私は、フォル様の命に背きました」

「え?」

「フォル様からは、皆さんには事情を話すなとキツく言われてました、巻き込むわけにはいかないから、と・・・だから無事助けられたとしても私はあの人の前に立つ資格はありません、それでもそれでも私は・・・っ!あの人には・・・生きて欲しいんです・・・!」



サナは泣いていた。最愛の主人を助けられない自分の無力さに。その本音の言葉に壱路達はそれぞれの言葉で答える。



「水臭い事言ってんじゃねえよ!サナさん!俺は喧嘩や厄介ごとは大歓迎なんだぜ!」

「そうですよ〜!私達は仲間です!仲間のピンチを見過ごすわけにはいきませんよ!」

「キューイ!」

「ピューイ!」

「うん・・・!フォルさんは絶対助けます!」

「・・・あぁ、僕らのやるべき事は三つだ。フォルの救出、その無実の証明、そんでもって黒幕をぶっ飛ばす事だ!」

「え・・・?」

「一度関わった事は最後まで関わるのが僕のルールだからね」

「そんな・・・なんで?皆さんは本当に・・・こんなにも人が良すぎるんですか・・・」

「大丈夫だ、サナよ。己も協力する、だから・・・イチロを、仲間を信じろ!」

「・・・・・っ!お願いします!私の主人を・・・私の大切な人を助けてください!」

「「「「当然!」」」」

「・・・ありがとう・・・・・」



サナは感謝した。このお人好しな仲間達に、そして必ず主人を助け出そうと誓ったのだ。



「さて、と言ってもここからどうするかだな」

「だよなー?手掛かりもなきゃ、フォルが何処にいるのかも分からねぇぜ?」

「己は城へ行き情報を探ってみるが・・・フォル様の情報を得られるかどうか・・・」

「じゃあ、僕はちょっと証拠を集めてくるか」

「「「「「・・・え?」」」」」



壱路のその言葉に全員が疑問の声を上げた。



「あのねぇ、僕の魔法は規則外のチートだって事忘れてない?」



壱路はシニカルな笑みを浮かべてそういった。

次回!


魔城【ニブルヘイム】に潜入した壱路!

そこで出会う隻腕の魔族・・・、その人物こそ、すべての鍵を握っていた!

そしてフォルが魔王である妹の手によって公開処刑?!

その出会いが真実の道を切り開く!


乞うご期待!


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