第四十三話 皇子幽閉、赫狼再会
数時間後、集合場所に集まった一同だが、そこにはフォルの姿はなかった。
「フォルさん、来ませんね〜」
「そうだな、どうしたもんか・・・」
「確かにこれはおかしいぜ、フォルさん、いつも待ち合わせの五分前には待っ
てるタイプなのによぉ!」
「キューイ」
「ピューイ」
「・・・サナさん、大丈夫?顔色悪いよ?」
「・・・え?ぁっ、だ、大丈夫です。気に・・・しないでください」
そう言いながらも、サナはいつものような冷静さがなりを潜め、不安で顔が青くなっていた。
(まさか・・・フォル様、いや、万が一でもそんな事が・・・)
そんな中、街に紙が雪のように舞っていた。
「号外!号外だよー!」
その一枚を壱路は掴み取り、見てみるとそれは・・・。
「し、新聞?なんでだ?」
「・・・この魔奏歌祭は一週間に渡って行われます、その間はこのように号外は無料でばら撒かれるんです」
「そうなのかー、ってなんて書いてあるんだ?」
「師匠、読んでください」
「あ〜、分かったから、読むから読むから・・・・・・・・ぇ?!」
その記事を見ると壱路は驚愕の表情を見せた。
「ど、どうしたんですか?マスター?」
「(しっ、みんな、ここからは僕が頭に話しかけるから、口に出すなよ、特にサナさん、貴女は決して動揺しないように)」
「(え、まさか・・・壱路、フォルさんの事がここに?!)」
「(あぁ、しかも、状況はかなりやばい・・・)」
そこには詳しくは書かれてないが、こう書かれていた、『大罪人』フォル、捕まる。と、確かにフォルは国の事を考えてる時は表情に影を落としていたが、ここまでとは壱路も予想していなかった。
「(確かに、『大罪人』はヤバい雰囲気しかしないだろ、フォルさん何やったんだよ・・・)」
「(・・・・・・・・そんな、そんな)」
「(サナさん・・・)」
「(なぁ、サナさん、どうしてフォルは国を出て行くほどの『大罪人』と呼ばれる事になったんだ?それを聞かなきゃ、僕達は納得できない)」
壱路の言葉に、サナは迷った。フォルは自分の事情に彼らを巻き込む事を拒んだ。だから黙っていた。しかし、サナは主人の命に背いてでも助けたいという思いを抱いていた。
だから、彼女は語る。例えそれで主人に軽蔑され、失望されたとしても、彼を助けたいと・・・救いたいと願ったから。
「・・・皆さん、私の主の事情を説明するには、まず会わなくてはならない方がいます」
「それって〜・・・」
「はい、魔王騎士団第三位、ウォーラン・イラガ・ブレード様です」
「やっぱりな、今の状況、この国で信用できる唯一の人物だし、なんか関わってるとは思ったけど・・・」
「じゃあ、そのウォーランって人に会えば、何かわかるって事か?」
「はい」
「よし、・・・会おう、その人に会うにはどうしたらいい?」
「彼は普段、この区域の迎賓館、つまりこの屋形で業務を行っています」
「えぇ?!目と鼻の先じゃないですか〜!」
「しかし、どうやって接触すればいいのか、分からないのです・・・」
「そっかー!俺たちなんも接点がないから行ったところで・・・」
「あ、あれ?マスター?」
「師匠?」
突如消えた壱路だが、すぐに戻ってきてこう言った。
「おい、お前ら。何話してんだ?入っていいってさ」
「「「「・・・・・・・はぁ?!」」」」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして一行は迎賓館の一室に通され、待つように言われた。
「・・・・案外すんなりと入れたな?」
「そうだな、ウォーランから貰った指輪がここで役に立つとは」
「やっぱり、あの時出会ったのは、偶然ではなかったのかも・・・知れませんね〜?」
「いや、それでもすんなりしすぎじゃないか?!よく説得できたな」
「えっとあれだ、あの全6章ある映画で相手をコントロールする奴、あれをちょっとな」
「・・・マジかよ、お前は暗黒卿か銀河帝王か?○ォースと共にあるのか?」
「僕の魔法が○ォースみたいなのは認めるけど、なんで例えがダークサイドなんだよ、僕はどっちかといえばライトサイドだよ」
壱路と天太郎が世界的大ヒットした映画ネタで話している間、サナは壱路の手段に愕然としていた。
「・・・・こ、こんなにも事態が動くなんて、やはりイチロ様、貴方は・・・」
そして少しして、扉が開く音がした。そこに立っていたのは約1年振りにみる懐かしき狼頭、会ったのはあれっきりであったが、よく印象に残っている。
「客人よ、待たせてすまんな、己が魔王騎士団第三位、ウォーラン・イラガ・ブレードだ」
初めて会ったかのようなその挨拶に壱路は自分の姿を変えていたことを思い出した。
「久しぶりだな、『赫狼』殿?この様子だと僕の事が分からないみたいだな」
「・・・ん?見たところお主は『ラッセツ』のようだが・・・己は『ラッセツ』の知り合いはいないのだが・・・」
「あー、確かにこの姿で会うのは初対面だけど・・・この姿ならどうかな?」
そう言いながら壱路は《変化》を解き、黒髪黒目の人族に戻った。その姿を見て驚愕するウォーラン。
「なっ?!」
「わぁ、やっぱりイチロ師匠はそっちの方がカッコイイですよー!」
「イチロ・・・?お主は、まさかイチロなのか?!」
「あぁ、あの時言った通り、尋ねに来たよ、仲間と一緒に、ね」
「・・・あの時の獣人族の兄妹はどうしたんだ?」
「ちょっと獣共和国で修行中、そのうち会いに行くよ」
「そうか・・・ともかく、また会えて嬉しいぞ、イチロよ」
「こっちもな」
その後積もる話をした。壱路の旅の話を静かにウォーランは聞いていた。仲間達の事も紹介した(ちなみにみんな《変化》は解いている)。
「そうか。動く魔道携帯、元勇者に弟子・・・か、なんとも愉快だな、お主の仲間は」
「こんにちは〜、初めまして、フォウンです〜」
「おっす、テンタロウ・タカラギです!よろしくな!」
「ツ、ツクヨです!お、お噂はかねがね聞いています、赫狼さん!」
「はははは、ハキハキしてるな」
「元気だけが取り柄ですから・・・」
「・・・・・そちらの御人は?」
サナを見てウォーランは問いかける。どうやら分からないようだ。
「あんたもよく知ってる人だと思うんだが・・・いきなりだが単刀直入に言う、彼女は僕の仲間のフォル・ツヴァイ・エクリプスの執事、サナ・カトラ・フルトゥスだ」
「・・・何!サナ・・・まさかエレンの妹か?!」
「はい、お久しぶりです、ウォーラン様」
「エ、エレンは・・・?!やはり・・・?」
「はい、姉はあの病で、もう・・・」
「そうか・・・安らかに眠れたか?」
「はい・・・、穏やかな表情でした」
「それさえ聞ければ十分だ・・・」
何やらこの二人とエレンという人の関係は訳ありのようだがそこはあえて聞かないでおく。
「なあ、話に割り込むようで悪いんだけど・・・ウォーラン、僕らはフォルの事について聞きに来たんだ」
「ああ、なんでフォルさんが『大罪人』何て名前で呼ばれるのか知りたいぜ!」
「フォルさんがそんな人じゃないっことくらい私たちは分かってますよ〜」
「はい、フォルさん、優しい・・・」
「だから知りたいんだ・・・頼む!」
壱路の、一同の訴えでウォーランは話す事を決めた。
「あぁ、そうだな・・・いいのか?サナよ」
「・・・・・はい」
「では話そう、なぜ、彼が『大罪人』と呼ばれるようになったかを・・・」
今、フォルの過去が明らかになろうとしていた。
次回!
明かされるフォルの過去、その笑顔に隠された悲しみが明らかになる時、壱路は?仲間達は?
決意が物語を加速させる!
乞うご期待!




