第四十一話 到着!魔王国【ハーログ】
八か月後。新たに天太郎、ツクヨを仲間と弟子にした壱路達はついに魔王国の目前までたどり着いていた。
ツクヨはあれから、一同に時に厳しく、時に優しく鍛えられ、言葉も話せる様になった。しかし一方で謎もあった。フォウンにステータスを見てもらった時なのだが・・・。
ツクヨ
Lv 54 age:10
HP B
MP A
ATX D
DEF E
AGL S
EXP 26452
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【魔法属性】 無
【魔法】 感覚 〈視覚開放・嗅覚開放・聴覚開放・触覚開放・痛覚開放〉
〈称号〉
ーーー・ーーー・ーーー・イチロの弟子・いいこ・森の少女・電光石火
彼女は唯一魔法の保持者だった。その効果は後の機会にまた詳しく説明する。
そして何より〈称号〉の三つのーーーは気になる・・・が、いろいろ考えても仕方ないので今は放っておこうと思う。
周囲には黒で染められた五十メートルはある城壁が丸く囲われており、その中央にある螺旋状に造られた城があった、あれが魔城【ニブルヘイム】であろう。その今にも崩れそうなバランス感覚と見るものの心を震わす美しさに、街の近くまで来て壱路達は思った、美しい、と。
「でっけーー!すげーーー!」
と興奮してる天太郎。
「で、でっかいです!」
と妙な敬語を話すツクヨ。彼女は人の多い大都市を見るのはこれが初めてである。
「久しぶり・・・だな」
「はい、本当に」
懐かしながらどこかバツの悪そうに顔をしかめるフォルとサナ。
「それにしてもでかいな、てかあの城どうやって建てたんだ?」
「いや〜、あれだけ立派だなんて・・・」
「キューイ!キューキューイ!」
「ピューイ!ピューイピュー!」
螺旋の城を見上げる壱路とフォウン。そしてそれを鳴きながら見つめるヒルデとウリ(ウリノシンは長いから)。
「さて、僕らが出会って八カ月・・・ようやく着いたね、【ハーログ】に!」
「そうだな・・・」
「ですよね〜・・・」
「だよなー」
「そうですね・・・です!」
「はい、それに今の時期、カプリストには魔奏歌祭が開催されているはずです、街は人にあふれ賑やかになるでしょう(これで彼に見つかる確率は低くなる筈・・・)」
「あぁ、懐かしいね・・・」
「「「「カ、カーニバル?!」」」」
聞きなれない言葉を耳にして困惑する一同。
その前にこの世界の月日について説明する。この世界の月日は。
一月→カプリスト
二月→アクエリンド
三月→ピケード
四月→アリウ
五月→タウイブ
六月→ジェクス
七月→キャブン
八月→レオイト
九月→ヴァイン
十月→ライテン
十一月→スコルブン
十二月→サジタリブル
という風に表せる。
壱路がこの世界に来た時は14カ月前、つまり11月28日は、スコルブンの二十七の日と、表される
そしてサナから魔奏歌祭についてを説明を受ける一同。
「この祭典は遡る事、【ハーログ】建国。当時の魔王、ソング・リアスピナ・エクリプスが開催したが始まりだと言われています」
「ほう、初代魔王が・・・」
「はい、初代魔王は歌に天性の才能を持っており、その歌は人はもちろん魔物も聞き惚れ、家臣達が奏でる音楽と民たちの踊りが合わさり、歌い踊り明かした。と言い伝えには記されています」
「だから魔奏歌祭って訳か・・・凄えな!」
「師匠、祭りって何ですか?」
「祭りって言うのはな、美味しいものや楽しいものが沢山ある所だよ」
「うわぁぁ・・・!凄く楽しみですー!」
「すっごく目、光ってますよ。マスター、ツクヨちゃん」
そんな事を話しながら、天太郎はハッとなって壱路に言った。
「って、そういや俺と壱路とツクヨちゃんは人族なんだけど、大丈夫なのか?」
「大丈夫だ」
「そうですよ、マスターの魔法が誰かに見破れると思ってるんですか?」
「はい!、なのです!」
今、壱路と天太郎、フォウンとツクヨは《変化》を使ってサナと同じで魔族の中でも数の多い《ラッセツ》の姿をしていた。
「けどこの角はいらないんじゃ・・・」
「だったら魔法を解くぞ」
「いや、いいです!このままで!」
「・・・そろそろ行きましょうか」
「「「「「賛成ー!」」」」」
そして一同は目の前にそびえる羊の頭が象られた門・・・ではなくその二つ隣の方の門に歩みを進めた。
「なぁ、サナさん。なぜ近くの門じゃなくて、あっちの方に行くんだ?」
「あそこは第1地区・・・城の正門があの中にありますので、警戒が厳重なんです」
「じゃあ、一番警戒が厳重じゃない門は?」
「第3地区・・・ウォーラン様が治めている地区に入る方がいいかと」
「あぁ!あの狼さんですか!懐かしいですね〜!」
「おおかみさん?」
「あぁ、ツクヨにはまだ話してなかったな」
壱路はツクヨにウォーランの事を簡単に説明した。
「って訳でこの指輪を貰ったんだ」
「・・・その指輪があればすんなりと門を通れる筈だよ、魔王騎士団がそれを渡すという事は信用たる証だし」
「そうなのかー!・・・ん?それにしても辺りに人が増えてないか?」
気づけば周りに人がちらほらといた。うまく人混みに紛れる壱路達。そして前を見ると狼を象った門が目の前に見えていた。
「あっ、もう門のところに・・・早いですね」
中に入ろうとすると魔族の衛兵らしき青年が現れ呼び止められた。
「御一行様かい?一応身分と種族名を確認したいんですが・・・よろしいですか?」
「えっと、これ見せればなんとかなるって聞いたんですけど・・・」
「ん?・・・なっ!これはすいません!どうぞお入りください!」
指輪を見せると衛兵はすぐさまお辞儀をして門を通した。その際他の衛兵がチラチラとこちらを見ていたがそこは気にしないでおく。
「すんなりいったな」
「そうだね・・・」
「・・・はい(フォル様と彼の動向に注意しなければ・・・)」
そんな呟きは耳にも入らず、壱路は目をキラキラさせていた。
「うおぉぉ・・・これが・・・魔王国【ハーログ】か!」
壱路達は無事、魔王国に足を踏み入れたのだった。
次回!
魔奏歌祭を楽しむ中、壱路達が出逢ったのは?!
そしてフォルに迫る影!
賑やかな祭りの中で物語は加速する!
乞うご期待!




