第四話 クエストと悪夢と初めてのバトル
マチェットからククリナイフに変更しました
「(うわ〜!いっぱい人がいますね〜)」
「(わかったから、少し声下げろ)」
フォウンの歓声が頭の中に鳴り響く。少しは声の大きさについて気を付けてほしい。頭が痛くなる。
【人帝国・イスカオテ】にたどり着いた壱路は門を通り今は大通りにいる。そしてその賑わいに目を輝かせて歩いていた。この国は城塞都市となっていて、商業区、住宅区、冒険者区に分かれている。そんなRPGお馴染みの街にいるからなのかどうしてもワクワクしてしまう。やはり男なら当然なのだろうか。
「(ギルドはそのまま真っ直ぐ行くとつきますよ、マスター)」
フォウンのナビに従ってそのまま真っ直ぐ歩く。現在フォウンは壱路の頭に直接語りかけている。声を出さず意思疎通が出来るのはなにかとうれしい。
とかなんとかしている内にギルドに着いた。中に入るとそれなりに賑わっていた。ちらほらとこっちを見ている人もいたが特に興味が無いのでさっさと登録願いの看板の所へ歩く。
「すいません、冒険者登録をしたいのですが」
そう言うと、受付嬢が営業スマイルを作り説明をしてくれた。
ギルドには様々な依頼、通称クエストが持ち込まれており、それらの依頼をこなし、報酬を得るのが冒険者だ。依頼には難易度が設定されており、それはステータスにも導入されているランクである。基準はやはり下から、G.F.E.D.C.B.A.S.SS.SSS.EX.である。
登録者には魔道携帯にギルドカードのアプリがダウンロードされ、それが身分証明証の代わりにもなる。あの時反応がなかったのはまだ中身がダウンロードされてなかった為だと分かり納得した。
また冒険者にもランクがあり、基本はステータスや依頼難易度と同じである。SSSランクの冒険者は人族の中で4人しかいない。ちなみにランクはレベルの上昇などで自然と上がるらしい。
受付嬢がプレートのような石板を持ってきてここに魔道携帯もといフォウンを置くように言われた。どうやらダウンロードするための装置のような物らしい。とにかく置いてみる。
「はい、読み込み完了しました。お返ししますね」
ダウンロードが完了したみたいなのでアプリを起動してみる。
イチロ・サガミ
Lv1 age 18 rank G
出身地 不明
クエスト
装備
黒の学生服 メガネ
シギル 0
出身地が不明だったのは助かった。異世界とか書かれていたら面倒な事になっていたに違いないからだ。
クエストは現在受けているクエストつまり依頼の確認ができるらしい。
装備とは自分の身に着けている物を指しているようだ。
シギルとはこの世界の通貨の事で、基本的に価格は日本の円とそんなに変わらない。金のやり取りが必要な買い物もできるカード機能も搭載されている。
とりあえずギルドカードについては大体わかった。
(まぁ、装備については後々決めるとしてまずは、クエストだな)
クエストを受けるには依頼掲示板に貼られている依頼書から選ぶようだ。しかし自分と同ランク、あるいは一つ上のランクの依頼しか受けれないという規則がある。
とりあえず、Gランクのヤラマ草の採取クエストがあるのでそれを受けることにする。
ヤラマ草は薬の元となる薬草でちなみに報酬は1束につき300シギルである。
〜・・・数時間後・・・〜
採取クエストを終えて壱路はギルドに戻ってきた。23束は集めてきたのでこれなら一晩は泊まれるだろうと思う。
「イチロ・サガミ様のクエストの達成を確認しました。23束なので報酬は6900シギルです。魔道携帯の提示をお願いします」
フォウンを渡すと受付嬢は近くのプレートの上におく。多分コンビニのタッチする機械みたいなものだろう。
「お疲れ様でした」
フォウンを返してもらい壱路はギルドの外へ出た。
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暗い。そこは闇のみが存在する事を許されている。そして壱路はそこにいた。何も見えないし、何も聞こえない。だが何もないのに身体に暖かい物が触れている。
(これはなんだ?)
そう思い壱路は目を凝らす。だんだんと見えてきた。それは手だ、自分は誰かの手の中にいる。誰の手かはわからない、だけどすごく安心する・・・。けど何故だ?その手がだんだんと冷たくなっていく。
「やめて・・・、無くならないで・・・、頼むから・・・」
嫌だ。心が泣き叫んだ。そして願った、この温もりが消えないように。温もりが消えたら大切なものが壊れてしまう。そう思ったから。だが何度願っても手は冷たくなるのをやめない。そして冷たくなった手は突如として存在しなかったように消えた。
ピシッ
壱路の中の何かが壊れる音がした。
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バサッ!
「はっ・・・・はーはーはー」
壱路は目を覚まし飛び起きた。
ぞっとするような夢だった。あの時・・・。
壱路が一度壊れたあの時の悪夢だ。
暗い闇、何もできない自分、絶対の不条理が壱路を絶望へと追い込んだ。その頃自分は生きていなかったと思う程に。しかしそれを救ってくれた人がいる。
そしてその人に送られた言葉が壱路の心を救った。それは壱路の信念に、在り方に強く影響している。その言葉があるから今の壱路がいるといっても過言ではない。
「だがなんで今更あんな夢を・・・」
ここまで考えて壱路は今自分が見覚えない部屋にいることに気がついた。部屋の内装はシンプルでベッドしかない。どこか中世の雰囲気が漂っている。近くにはメガネとスマホが置かれている。
メガネをかけ、スマホを起動する。
「ふぁ〜、おはようございます、マスター」
何故か欠伸しているスマホが話しかけてきた。ここまできて自分が今異世界にいることを思い出す。昨日はギルドを出て、腹を満たし宿をとってそのままベットに横になって寝てしまったのだ。
何しろ昨日いろいろありすぎたのだからしょうがない。
「マスター今日はどうします〜?昨日の宿代とご飯代で1500シギル減っちゃたけど、まだまだ貯蓄金額はありますよ〜」
「今日は討伐系のクエストでも受けようかと思うんだ、魔法にも慣れたいし」
そしてこの世界で生きていくためにも避けらない事だ。この世界では自分のやりたいことをやりたい。そのためにも・・・。
「さて、行きますか」
壱路はベットから立ち上がり、ギルドへと向かった。
〜・・・数時間後・・・〜
「おりゃぁぁぁぁぁ!」
「ギャッ!」
いきなり飛びかかって来た人型の生物にありったけの力を込めた刃を振り下ろす。その生物は傷から血を流しながら、小さく断末魔をあげ絶命した。
「これで何匹目だよ。つーかどんだけいるんだよ!」
「愚痴ってないで手を動かしてください。次が来ますよ!」
よく見ると壱路とフォウンの周囲にはさっきの生物が群れを成して囲んでいた。その生物は緑の肌をした子供くらいの背しかない。しかしその顔はまさしく化け物で醜悪と嫌悪しか湧いてこない。手には棍棒の様な物を持っている。そう、それはファンタジーおなじみの魔物・・・ゴブリンだった。
何故このような状況に陥ったかと言うと、ギルドに行って昨日から目をつけていた討伐系クエストを受けようとしていた。
ゴブリンの討伐 ランク F
イザの森に生息しているゴブリン10体の討伐を頼む。
報酬 35000シギル
ランクは下から2番目のF、報酬もけっこういい。
受付嬢からお気をつけてと言われギルドを出た。さすがに素手でいくわけにはいかないので武器屋と雑貨屋に寄って行くことにする。結果軽くて丈夫なククリナイフとHP回復薬《黒蜜飴》とMP回復薬《白蜜飴》をそれぞれ10個ずつ購入した。だがそれでも貯蓄は無くなったが。
その後街を出てイザの森に行く。イザの森は偶然、自分が落ちた場所だったので道を覚えていた。
そこから森の散策する。そしてついにゴブリンを発見した。そして後から一気に斬りかかった。一刀両断だったが人に似た魔物だったので心の中になんだかモヤモヤしたものができてた。だがそれを考える余裕もなく、ゴブリンの群れがこぞって出て囲まれた。
そして今に至る。
「俗に言う絶体絶命、大ピンチってやつですね」
「それはわかってるよ。今は・・・」
ククリナイフ を一振りして手に魔力を纏わせ、構える。
「ここを切り抜ける!」
そして壱路はククリナイフをふりかざすと同時に魔法を発動させる。
「変形しろ!」
そう叫ぶと同時にククリナイフの刀身が鋭く長くなっていく。そしてそのままゴブリンの群れに横一文字にククリナイフで切り裂く。
「ハァッ!」
変形した巨大な刃が周囲のゴブリンを真っ二つにしていく。しかしまだ数匹ほどゴブリンが残っている。仕留め損なった様だ。そして残りのゴブリンが一斉に飛びかかって来た。
壱路はすぐ様地面に手を置き、再び魔法を発動させる。
グサッ、グサグサグサ!
ゴブリン達の腹に何やら尖ったものが突き出ていた。巨大な土でできた無数の針である。針は壱路を守るように出現し、一本一本がゴブリン共を突き刺していた。想像以上にグロかった。
「やばい、なんか気持ち悪い」
「それはそうですよ。あんなシーンで気持ち悪くなるのは当たり前です。けどなんとかピンチは免れましたね」
「僕はもうちょっと感情が乏しいと思ってだけど、人並みの感情はあるみたいだな」
「そうですか?マスターは他の人よりクールな面はありますけど・・・ここで生きてくには慣れておかないとまずいですよ?」
「分かっているよ」
「ならいいですけど・・・とりあえず討伐部位剥ぎ取っちゃいましょ」
「はいはい、しかし前もって戦い方考えといて正解だったな・・・」
実は壱路は自分の魔法の使い方を考えていた時、某錬金術の漫画について思い出していた。その主人公の戦い方は地面や鉄を変形させて戦うというものだったので、それを参考にしたのだ。
使ってみると思ったより簡単にできた、あと使いやすい。そして幾つか分かった事がある。
まずは、継続時間、状態や現象を支配する時は持続時間は短い。ちなみに物体の形や質を支配した場合はほぼ永続的に効果を持っている。
次に範囲、これは自分の周囲約5メートル以内でしか効果が得られない。つまり支配している物体から5メートル離れると支配できなくなるという事だ。しかし物体の形や質を支配した場合は元に戻さない限りそのままである。
最後に制限、それは《一つの対象しか支配できない》という制限だ。例えば地面を支配したとする。そしている間は火を起こしたり、剣を変形させたりできないということだ。
それらさえ気を付ければ、後は代償に気を配ればいいだけだ。
だがさすがに疲れた。少なくとも20匹はいたようだがなんだか・・・、体がだるい。魔法を使ったからか?体力についても気を配ばろう。
しかし苦労したその分貯蓄は貯まったので当分はなんとかなるだろう。あと街に帰ったらそれで防護服を買おう。今のままでは心許ないし。
「とりあえず初陣おめでとうございます。マスター」
「あぁ、ありがとう。フォウン」
「そういえばマスター、これからの予定はどうしますか?」
フォウンの質問に壱路はこう答えた。自分はまだこの世界についてまだ何も知らない。異世界に召喚された理由はわからないし、ここではあまり目立ちたくない。けどこの世界はまだまだ面白い物珍しい物がたくさんあるはずだ。それに行ってみたいところもある。だから・・・。
「・・・・僕はこの世界を見てみたい」
「いいですね〜、それ。いわゆる異世界観光物の主人公みたいです〜」
「お前のサブカルチャーの情報量がどうしてそう多いのかわからんよ・・・」
とかなんとか言いながら壱路はゴブリンの討伐部位の耳を剥ぎ取る。実際にやると意外に難しい。
(貯蓄がある程度貯まったら、ここを出よう)
そう考えながら壱路は異世界で生きていく第一歩を踏み出した実感を噛み締めていた。
次回は、主人公の旅立ちと獣共和国の会議についてを書きます。