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黎明のイチロ 〜空から落ちた支配者〜  作者: 作読双筆
第四章 魔大陸道中記 〜新たな仲間と人刀一体〜
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第三十九話 コウトクオウ

コウトクオウ、それが壱路と『オウリュウ』が一つになった存在の名。



その言葉を叫んだ瞬間、壱路の周りの小竜のオーラと後ろの竜が一つとなり、赤と青を混ぜたすみれ色の光を放った。



そしてそこに居たのは鮮やかな菫の鱗の鎧に身を包んだ竜人。竜の顎を象った威厳を放つ頭部、全てを切り裂く鋭い爪を持った腕部、竜の尾を模した草摺(くさずり)がついた強靭な脚部、それは竜を無理やり人の形に押し込んだような荒々しさと凛々しさを併せ持つ人刀一体の存在だった(余談だが、この姿、壱路が元の世界で観ていた日曜朝8時の特撮ドラマで主人公が変身するライダーという戦士がモデルである。ちなみにベルト部分には紫のたまと陰陽太極図を模した装飾と鎖があり『オウリュウ』の竜のイメージも全体的に取り入れられてる)。



「うむ、・・・・やっぱり凄いな、この姿になると力がみなぎってくる・・・!」



この力、『ガイシ』が『オウリュウ』となってから数日後、試しに変身してみたがその時、全身の力が強制的に上げられてる感覚を感じた。しかし消耗が激しく、変身解除した後丸一日動けなかったのだ。それでも毎日変身していくたびに持続時間は伸びていったのは言うまでもない。



「さてと・・・まずは・・・囲え《檻雨かんう》」

「・・・・・うぁ?!」



突如少女の身を守るがごとく刃と同じ透明な菫の鉄で出来た檻が出現した。



それは魔法と似て非なるもの。『オウリュウ』が出した錆、と言ってもただの錆では無い。一般の錆は脆いがその硬度は最強、そして普段の刃と同じ透明な菫色。それは状態変形が変幻自在という万能鉄。



その名は《雨竜之錆うりゅうのさび》。



その変化の一つ《檻雨》の型は檻。内部からも外部からも壊せず、自ら入れば安全地帯、敵が入れば脱出不可能の牢と化す。



話は変わるがこの『コウトクオウ』、その身に宿す能力は全部で五つある。一つは身体の限界を取っ払い強制的に上昇させること、そして竜の鱗による灼熱の大地から極寒の環境の適応や敵の攻撃を吸収、対応可能にする高い防御力、そして先ほどの《雨竜之錆》。残りの能力は後々語っていく事にして、壱路は周囲に群がるハイボーン・レギオンとハイボーン・バーサーカーに向かっていく。



「さて、生憎こちらは気分がすこぶる悪いんだ・・・一気に片をつけさせてもらうよ」



そう言って壱路は右手を突き出し叫ぶ、この穢れに穢れた不条理を浄化する錆の刃を・・・。



「来い・・・《村雨むらさめ》!」



そして右手から溢れた錆が形創られていく、それは刀。透明な刀身のみの長刀。その鋭さは全てを切り裂くに相応しく、美しい。



それが《村雨》。その型はまさしく壱路の愛読書の一つ、『南総里見八犬伝』に記される、邪を退け、妖を治める破魔の利刀。



その刃を構え、壱路は翔ける。



「狩られるのは僕らじゃない・・・お前らだよ、スカスカした骨ども」



今、竜は穢れに満ちたこの地を駆け巡る。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一方その頃、壱路を追いかけていた天太郎、フォル、サナ、フォウン、ヒルデ、ウリノシン達は・・・その様子を影から見ていた。



その様子は見るからに一方的で圧倒的な蹂躙、その姿は修羅、全てを切り裂き、潰し、ねじり、断ち、殴る、蹴る、その繰り返しを行う度に骨は大地へと還っていく。



「あ、あれはイチロ君なのか?」

「はい、あれはマスターと『オウリュウ』の一つとなった姿、『コウトクオウ』です!」

「ま、マジなのか?!あれがイチロなのか?!なんかライダーみたいな感じだぞ!」



天太郎も同じく、壱路の見ていたその特撮ドラマのファンであった。



「あれはマスターの強さのイメージと『オウリュウ』の竜のイメージを掛け合わせた姿ですからね、見た目はもちろん強さも保証付きですよ」

「確かに、あれは別次元の強さですよ」

「キューイ」

「ピューイ」

「圧倒的だな、あの力を得るためにどれだけの無茶をしたんだ?」

「はい、マスターは力を得る為に結構無茶するタイプですよ・・・だからこそ私はマスターがほっとけないんですよ」

「そうですね・・・やはり彼の力は・・必要です」



そのサナの最後の呟きは誰も聞こえなかった。



そっと見守る一同、そして壱路は《村雨》を振るい斬って斬って斬りまくり、残るはハイボーン・バーサーカー一体となった。



「さあ、お前で終わりだ・・・」

「グゴゴァァァァァァァァ!」



鋭い爪を振り回しながら壱路に突進してくるハイボーン・バーサーカー。



壱路は迫る狂骨の突進を見ながら・・・《村雨》を《雨竜之錆》に戻した。



「え?」

「な、なんでなんだ?刀を引っ込めたら・・・」

「ま、まさかマスター・・・皆さん伏せてくださいっ!」

「どうしたんですか?!フォウンさん」

「キューイ」

「ピューイ」

「マスターはあの形態の時だけに使える必殺技があるんですよ・・・その威力はとんでもなく強力で地形を変えるほどなんです。その内の一つを今放つみたいですね」

「ま、マジかっ!」

「分かったよ!」



そう、フォウンの言う通り壱路が使おうとしているのは、必殺の一撃。壱路の右手には《雨竜之錆》が徐々に形を創っていた。相手の命を一撃で屠る形をーーー。



「《豪雨ごうう》」



《豪雨》、それは巨大なる竜の腕、その大きさはハイボーン・バーサーカーを遥かに超えるほど巨大、そして死神の鎌の如く鋭い爪を備えていた。



そして目前にハイボーン・バーサーカーを捉えた瞬間、その剛腕を振りかざすーーー!



それは天より堕ちる竜の爪、触れたものは総べて塵と化し、大地を砕く竜の爪。



「・・・《堕天竜爪だてんりゅうそう》!」



ゴガギガガガガ!



衝撃と共に地面には大きなクレーターが出来ていた。その中心には粉々になった骨の残骸がぽつんと残されていた。



「・・・終わった」



壱路は『コウトクオウ』の変身を解き、『オウリュウ』を鞘に納めた。



「ん、あのなんたら結界、消えてるな。どうやら時間制限があるみたいだな」



地面を見るとあの凶々しい赤色は消えていた。



「後はあれだな、あの木を含めてここの山一帯を浄化しよう」



そして壱路は手を地面に付けて紡ぐ、浄化の言葉を。



「《聖域サンクチュアリ》」



《聖域》、それは壱路が指定した範囲内にある不浄な力や物(ただし今回は魔族や魔物は対象外である)を浄化するキーワード。



「マ、マスター!大丈夫ですか〜!」

「イチロ君!」

「壱路!」

「イチロ様!」

「キューイ!」

「ピューイ!」



気がつくと先ほど置いてきてしまったフォウン、フォル達がいた。どうやら追いかけてきたようだ。



「いやー、凄かったねー!あの必殺技!かっこ良かったよー!」

「はい、あれは圧倒的でしたね」

「あんな隠し玉を隠していたとはな・・・所で今のは何したんだ?」

「・・・あぁ、この山一帯を浄化したよ」

「凄え!って事は・・・」

「もう魔物の突然発生はないって事ですね!」

「ふふっ、テンタロウ君、という訳で僕らの一行に来てくれるかい?」

「あぁ!喜んで!」



そんな和やかなムードの中、壱路はそっと背を見せ、歩き始めた。



「マスター?どうしたんですか?」

「・・・・・ちょっとな」



壱路の行く先にはアーマード・モンキーの遺体、そしてその近くに寄り添う少女の姿があった。



「あれは・・・!」

「んな、そんなまさか・・・」

「・・・・・くっ」

「キューイ・・・」

「ピューイ・・・」



皆が声を漏らす中壱路はそっと少女の隣に座った。



「おい、ちびっ子」



壱路は少女に声をかけた。

次回!


少女に声をかけた壱路の真意とは?!

少女の決意を見た時、壱路が授けたものとは?!

そして壱路は新たな旅立ちへ・・・。


乞うご期待!

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