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黎明のイチロ 〜空から落ちた支配者〜  作者: 作読双筆
第三章 双子獣姫と機械騎士 〜新たな出会いと別れと旅立ち〜
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第三十二話 再会、別れ、約束

かたや9年間眠りにつき、黒の魔法使いにより夢から覚めた翠眼の姫、そしてかたやトラウマにより長年、部屋に閉じこもっていたが、白き少女により部屋から出た金眼の姫。二人は黙ってお互いを見つめ続けていた・・・とプロローグ的に言えば今の状況はこういう感じだろう。



今、9年越しの再会を果たした双子の姫君達を周囲はそっと見守る。



「いや〜、そういう訳だったのか〜」

「あぁ」

「・・・う〜〜〜ん、僕達が全知能を振り絞っても直せなかったオズを直し、改造までして、さらにミアム様を目覚めさせるなんて・・・イチロ君、君は一体何者なんだ?」

「に、兄さんは兄さんですよ〜、超かっこいいんですよ〜〜!」

「そ、そうです!」

「ん・・・・なんでこんなに胸が苦しいんだ・・・(イチロ・・・リュアに手を出したら承知しねぇぞ!)」

「そうだなぁ〜〜、一回解剖してみればわかるか〜〜?あとこのチビ龍もな〜」

「断る、てかあいつらじっと相手を見つめたままなんも喋ってないぞ」

「いろいろあるんですよ〜」

「キューイ、キューキューイ!」



と無駄話をしていると、ようやく動きがあった。



「ミンア・・・無事だったんだ、よかった・・・」

「お、おねえちゃん・・・ミアムおねえちゃん!」



ミンアは堪えきれず、涙を流しながら、ミアムに抱きついた。



「うわ〜〜ん!よがっだ・・・よがっだよ〜〜!おねえちゃ〜ん」

「ミンア・・・ごめんね・・・遅くなっちゃって・・・ごめん・・・」



双子が流したその涙は悲しみではなく、安堵と嬉しさが宿ったものだった。二人はお互いを離さない様に抱きしめ合い、再び生きて会えた事を喜んでいた。



「ミアム様、ミンア様・・・よかった」

「よ、よがっだなぁぁぁぁぁぁ!あの双子、無事再会でぎでよ〜〜!」

「う、うん・・・うん!」

「・・・・・へっ、よかったな、ミンア嬢、ミアム嬢・・・」

「・・・なぁ、ヨルシマさん」

「なんだい?イチロ君」

「・・・オズを直したのはあんたって事にしてくれないか?ミアム姫が目覚めたのは適当にでっち上げてくれ」

「え?どうしてだよ!イチロ?!」

「僕は・・・・もうこの国を出る」



突然の壱路の発言に衝撃を受ける一同。



「え?えぇ!」

「マ、マスター!そんな!」

「キューイ!?」

「早ければ今夜にでもここを立つよ」

「・・・はぁ?!まだこの国に来て1日しか経ってないんだぞ!?それなのにもう・・・」

「僕は、正直言ってあまり目立ちたくない・・・ここにいたら色々面倒な事になるだろう?」

「・・・なんも問題なんてねぇじゃねぇか、通りすがりの獣人が誰にも直せなかった機械人形と目覚めさせれなかった姫を一気に助け出した。なにが問題あるのか?」

「大問題だよ、そもそも僕は【獣人族ビストマ】じゃないから」

「「「「・・・え?!」」」」



その言葉に周囲の人々は言葉を失った。その言葉に声を低くして詰め寄るアサミケ。



「獣人じゃないって・・・どういうことだい?」

「言葉通りの意味だ」



そう言うと、壱路は変化を解いた。そこに立っているのは、漆黒の髪と瞳、そしてメガネを掛けた人間、壱路の本来の姿に一同は驚きの声を上げる。



「に、人間?!まさか・・・」

「イチロ様、人間だったのですか?」

「イチロ殿・・・」

「・・・ほう、私の目を欺く程の魔法とは・・・けどなんだって今正体を現したんだい?理由によっては・・・」

「ア、アサミケ師匠!待ってください!確かにイチロは獣人じゃありません、人間です・・・けど、赤の他人だった俺を、そしてリュアを助けてくれたんですよ!何の見返りも求めずに!」

「いや、一応、打算はありありだったんだけど」

「それでも俺らは嬉しかったんだよ!種族なんて気にしない、関係ないって言って手を差し伸べたお前が・・・ヒーローに見えたんだよ!」

「・・・は、はい!イチロさんはヒーローだと私も思います!だからでてくなんて言わないでください!」

「マスター・・・いくらなんでも急すぎやしませんか、目立ちたくないから国を出るなんて」

「国を出る理由なら他にもあるよ」

「他?それは一体なんだい?」

「アサミケさん、修行ってのはどれくらいかかるもんなの?」

「へ?あぁ、どんなに早く終わらせようとも、基礎叩き込むのに一年かかるね」

「「い、一年?!」」

「それまでここにいるなんてまっぴらごめんだしな」

「確かに、イチロの性格なら、この国にいて三日で飽きる・・・!」

「そ、そうだよね・・・」

「ですよね〜、マスター、飽き性だし」

「だったら何処行くつもりなんだい?」

「当初の予定通り、魔王国に行こうと思うんだ」

「ま、魔王国?!・・・いや人の身で獣人の国にくる自体驚きなんだ、これ以上は驚かないよ」

「イチロ様!」



そう言うと妹を連れて姫君が近くへやってきた。



「イチロ様・・・この恩は、一生忘れません。たとえ貴方が人族だったとしても・・・」

「別にいい、これは貸しだから」

「か・・・し?」

「今度会ったら返してもらうよ、あと僕の事は喋るなよ。もし喋ったら・・・また眠りについちゃうからね」

「ふふふ、イチロ様ったら、冗談がお上手なのですね」

「イチロにぃ、ありがとう」

「イチロ殿、感謝している」

「本当に大した事してないって・・・あ〜、いいやもう!そろそろ行くぞ!フォウン!ヒルデ!」

「わっかりました〜!」

「キューイ!」



その場を立ち去ろうとする壱路。それをじっと見つめてるリュア。



「・・・」

「ん?リュア?どうしたんだ?」

「・・・お兄ちゃんちょっと私、イチロさんに言い忘れた事があったから、言ってくるね!」

「へ?あぁ、分かった!ついでにあいつにちゃんとした物食えよ、って伝えてくれ!」

「うんわかった!」



そしてリュアは駆け出し、壱路の後を追う。



「イチロさーん!」

「あれ?リュアさん?」

「キュイ?」

「・・・なんだ?」

「えっと、お兄ちゃんがちゃんとした物食えよって・・・」

「・・・そっか」

「あ、あと・・・その・・・」



言葉が浮かんでこない、旅立ちを祝福したい思いと行かないで欲しいと言う思いがリュアの中で渦巻く。気がつけばその瞳から涙が流れていた。思いが堪えられなくなったのだ。



「う、うっうっ・・・うわ〜〜ん!」

「っておい!なぜ泣く!?」

「わ〜、マスター、泣かした〜!」

「キュイキュイキュイ!」



狼狽える壱路、それをからかうフォウンとヒルデ。



「え、えっと・・・その、リュアちゃん・・・」

「うっ、うっ〜〜・・・」



その次の瞬間、壱路はリュアをそっと胸に寄せ、抱きしめた。そしてそっと瞳から溢れた涙を拭う。



「あっ、あの、ごめん、なさい・・・」

「いいんだ、こっちこそごめん・・・やっぱ、いきなり過ぎるよな、出てくなんて」

「・・・私、頑張ります」

「え?」

「師匠達に鍛えてもらって、イチロさんの隣で戦えるように強くなります!」

「あぁ、それなら大歓迎かな・・・・・リュアちゃん、修行が終わったら、一年経ったら、・・・君の所に行くよ、手足がもげても、必ず・・・約束する」

「や、約束・・・はい!約束ですよ!イチロさん!」



顔をあげたリュアには、もう涙はなかった。代わりにあったのは精一杯の笑顔だった。



「じゃあな、リュア、またね」

「はい!また会いましょうね!」



そう言うとリュアはアルシャーク達の元に戻って行った。そして壱路は・・・。



「・・・これでよかったんですか?マスター?」

「あぁ、これでいいんだ。それに・・・約束したしな」

「ふふふ、本当、二人共、両思いなんですから!」

「キュイキューイ!」

「・・・・・・うっさい」

「ふふふふふふ、さて行きましょうか!マスター!」

「・・・あぁ!・・・じゃあな獣共和国【レオス】また1年後に・・・」



そして。



「《瞬間移動テレポート》!」



壱路 (フォウンとヒルデもいる)は獣共和国から姿を消した。



仲間達との別れ、壱路は一人、新たな旅へでる。

しかし壱路はまだ知らない。魔大陸での新たな仲間達との出会いを、そしてそこで待ち受ける危機、そしてそこで起きる悲劇が彼にある決意をさせる事を。



そして三ヶ月後、物語はまた動き出す。

次回!


新章、突入!

壱路は新たなステージ、魔大陸へ!

新たな仲間、新たな敵、そして進化する壱路の活躍を見逃すな!


乞うご期待!

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