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黎明のイチロ 〜空から落ちた支配者〜  作者: 作読双筆
第二章 支配者と仲間達 〜龍の親子と勇者と激情の瞳〜
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第二十四話 代償の眠り、決意の目覚め

「さぁ、あとはお前らだけ・・・っ!」



そう言いながら壱路は歩みを進めるが、突如頭に手を添えてふらついた。何やら体がふらふらする、視界が定まらない。



「(マ、マスター!?どうしたんですか?)」

「イチロさん!」

「おい、イチロ!何があった?!」

「キュ〜イ!」



心配する仲間たち。そして、もう一人の勇者とその従者みたいな奴が動き出したのはその時だった。



「隙あり!」

「当たれ!」



鬼気迫る勢いで武器を持って距離を詰めてくる。避けようにも体が重くなって動かない。



「(わわわわ、やばいですよ!)」

「くっ、《女神の盾(アイギス)》!」



その言葉と共に壱路の周りに青い防御壁が張られた。それが勇者の攻撃を弾き飛ばす。



女神の盾(アイギス)》・・・空気抵抗と魔力を支配して、防御壁を張る。その防御力はまるでギリシャの女神、アテナの盾、アイギスそのものである。と想像したキーワードである。



「きゃっ!」

「くっ!また妙な力を!」

「ちっ、もう限界か・・・一気に片付ける!縛れ!《貪り食う足枷(グレイプニル)》!」



それは北欧神話で魔狼フェンリルを縛り封じていた足枷。その効力は引力と重力を掛け合わせたもので対象を拘束し、縛る束縛系のキーワード。



この力で壱路は勇者たち三人を一ヶ所に引き寄せ縛りあげる。



「きゃっ!ちょ、引っ張られて」

「このままでは」

「・・・・・くっ」



そして畳み掛けるように壱路は紡ぐ。



「さて、終わりの時間だ」

「・・・・・」

「くっ、動けない!」

「な、なんなのよ!これ!」

「さぁ、地獄の空の旅を楽しめ・・・《瞬間移動(テレポート)》」



そして突如三人はその場から姿を消した。それと同時に、壱路は糸の切れた人形のようにその場で崩れ落ちた。



「イ、イチロさん!」

「イチロ!大丈夫か!」

「キューイ!」

「マスター、大丈夫ですよね〜!し、死んだりなんてしないですよ〜!」



いつの間にか集まっていたリュア達。素早く壱路のもとへと辿り着く為に急いで駆け寄る。



そして倒れた壱路をそっと起こした。眼を見ると先ほどまでの赫眼でなく、元の黒い瞳に戻っていた。


「僕は・・・」

「イチロさん・・・よかった。元に戻っている・・・」

「おうおう、なんかスゲェやばい雰囲気(かも)し出していたから心配したぜ!」

「まずだ〜〜〜!ぐすっ!よかったでずよ〜〜〜!」

「あぁ、すまない・・・もう大丈夫・・・・・だ。ただ・・・・・」

「「「・・・ただ?」」」



続いて紡ぐその言葉はある意味絶大な破壊力を持っていた。











「眠い」



「ね、眠い?」

「すごく眠いんだ。それに《瞬間移動(テレポート)》使ってから魔法もうんともすんとも出ないし」

「まさか、・・・マスターの《代償》って・・・・・睡魔、もしくは睡眠だったんですか!?」

「そ〜か、今まで《代償》おこしたことはなかったから・・・てかもうむり、意識保てない・・・」

「イチロ!起きろーーーー!色々聞きたいことが・・・」

「今は寝かせてく・・・・・・・・れよ、頼む・・・・・おやすみーーー」



そう言った瞬間壱路は目を閉じて眠りについた。静かにスー、スーと眠るその姿に一同は脱力してしまう。



「あ〜、寝ちゃいましたね」

「そうですね・・・」

「キューイ・・・」

「・・・フォウンさん、イチロはどのくらいで目を覚ますんだ?」

「ん〜、《代償》って12時間で無くなるらしいんでそれぐらいじゃないですか?」

「そっか・・・」



そう言いながらアルシャークは壱路を担いで皆でその場を後にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一方その頃、ここは謎の空間、黒いのようで白く、明るいようで暗く、広いようで狭い、なんとも不思議な場所。

眠った筈の壱路はそこにいた。



「オイ、イチロ」



声が聞こえた。声をする方を見るとそこに人が一人いる。しかし何故かぼやけてよく見えない。



「・・・・・なんだ?お前?」



その人影はため息を吐きながら言葉を紡ぐ。



「ワカリキッタコトイウンジャネェヨ、オレハオマエダ」

「・・・意味わからん」

「アーアー、セッカクオオアバレデキタトオモッタラ、スグデンチギレニナリヤガッテ、ソレニマダチカラヲカンゼンニカイホウデキテナイダロウ?」

「はぁ?完全に力を開放できてない?」

「アァ、イマノオマエジャ《支配》ノチカラヲヒャクパーデヒキダセテイナイ、タカラノモチグサレッテヤツダ」

「なんでそんなこと知っている?お前は・・・・・」

「ダカライッタダロ?オレハオマエダッテ。ジャアナ、ツギアウトキマデシヌンジャネェヨ」



そう言って謎の人影は消えていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーー12時間後ーーー


「・・・・・ん」



壱路は目を覚ました。そして頭に何か柔らかい感触がした。誰かが枕でも置いてくれていたのか、しかし枕とは違う感触に戸惑う。



(それになんか・・・・あたたかい?まさか・・・・・いや、そんな・・・)



頭に浮かんだ仮説を確かめようと横向きにしていた姿勢を恐る恐る仰向けにする。そして次の瞬間、壱路の頭の中は人生で最大級の規模でフリーズした。



「スー・・・スー・・・」

「・・・・・・・・・・」



その目の前にはリュアの顔があった。そして今頭をのせている物は・・・・リュアの膝だった。どうやら膝枕をしている時に、いつの間にか眠ってしまったらしい。近くを見るとアルシャークやヒルデも丸まって眠っている。見るとそこは昨晩泊まった洞窟だった。



(ななななななななななななんで・・・いやそんな・・・ははははは、・・・まだ夢なのかな・・・)



現実逃避しようとするがやはりこの感触は夢じゃない・・・壱路はため息をつき、手をリュアの顔にそっとあてた。



「まったく・・・こういうのは好きな男にするものだろう・・・なんで僕なんかに・・・」

「スー・・・・・イ・・・チロ・・・さ・・・ん・・・」

「・・・・・え?」

「い・・・・・つか・・・私・・・も、イチロ・・・・さんの・・・お兄・・・ちゃんの・・・支えに・・なりたいで・・・す・・・・・スー、スー」



どうやら寝言のようだ。



「支えに・・・か」



そんな寝言を聞きながら、壱路は初めて会った夜のレギンレイヴの言葉を思い出していた。



『あなたは強い・・・強くあろうとしている。だけどちょっとは他の人を、仲間を信頼して、頼ってみたら?』



「分かった・・・・・一人で抱えないで少しは頼ってみるよ・・・・・それに・・・」



これは誓い、今は亡き母竜に捧げた壱路の約束。



「僕は・・・負けない、目の前の奴らは、手に届く範囲でいいから・・・守ってみせる。そしてもう二度と何も失わないように、死なない為に・・・強く、強くなる・・・・・」



壱路はそっと呟いた。

次回!


勇者達の行方!そして、ウォーランが再び登場!そして魔王も・・・、そして壱路達は次の舞台へ!


乞うご期待!

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