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黎明のイチロ 〜空から落ちた支配者〜  作者: 作読双筆
第二章 支配者と仲間達 〜龍の親子と勇者と激情の瞳〜
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第二十二話 勇者襲来

今回はいつもより長いです。

朝になり壱路たちは旅立つ準備をしていた。



「いや〜、レギンさん、本当に助かります、近道を教えくれるだけじゃなく、一泊させてもらった上に食材まで分けてくれるなんて〜!」

「いえいえ、どうせ溜め込んでも仕方ないからこれで役立つなら私も嬉しいわよ〜!」

「・・・おいチビ、僕の頭から降りろよ」

「キューイキューイ!」

「えっと、マスターの頭が寝心地よくて気に入ったみたいですよ?」

「僕の頭はベッドじゃない!」

「ふ、ふふふ・・・」

「さぁ近道のことなんだけどね、この洞窟のずっと奥に行けば向こう側に辿り着けるわよ!」

「そ、そうですか、分かりました!」

「それじゃあレギンさん、ありがとうございました!また会いましょう!」



そう言うとアルシャークは意気揚々に奥へと進んでいった、リュアも後からついていく。



「あ、イチロちゃん、ちょっと待って!」



壱路も歩き出そうとする時、レギンレイヴとブリュンヒルデが近くにやって来た。



「なんだ?僕もう行くんだけど」

「まぁまぁ、すぐ済むことだから、でねお願いがあるんだけど」

「ん?」

「はいこれ」



気がつくと左手に温かい感覚があった。見るとそこには白いブレスレットのような物があった。面には奇妙な紋様が彫られている。



「これはなんだ?」

「精霊族がここを立つ時に残していった物よ。あなた魔大陸に行くんでしょう?これがあれば何かと便利よ」

「なんでそれを・・・」

「この子がフォウンちゃんと話をしている時に聞いたって」

「・・・フォ〜ウ〜ン〜?」

「い、いや、ついつい口が滑ったというかなんというか〜」

「いいのよ、イチロちゃん、・・・頑張ってね、あと昨日の夜のこと、ちょっとは考えておいてね?私、母親ですから!」

「・・・ふん」



壱路は振り返らず行ってしまった。



(母さん・・・、生きてればあんな感じになってたのかな)



ふとそんなことを思いながら。



同時刻、龍の親子、ブリュンヒルデとレギンレイヴはなにやら話をしていた。



「さ〜て、ヒルデ?いい?」

「キューイ?」

「あなたはイチロちゃん達について行きなさい」

「キュイ?キュキュキュキュキューイ!」

「大丈夫よ、イチロちゃん達ならあなたをちゃんと守ってくれる。何かあったらいつでも帰って来なさい、お母さん、ちゃんとここにいるから」



妙に真剣な母にブリュンヒルデは違和感を感じる。



「キュキュキュイ・・・・」

「さ!そうと決まれば行きなさい!じゃないとお尻ペンペンしますよ!」

「キュ、キューイ!」



ブリュンヒルデは一目散に壱路達のところへ向かった。



「・・・さて、これで心残りはないわ」



そう呟き、洞窟の外へと出た。そして少し飛ぶと近くの岩に向かって叫んだ。



「さぁ、そこにいるのでしょう?出て来なさい!」



そう言うと岩陰から三人の影が姿を現した。



「あら、もうばれたの?」

「やはり伝説の龍・・・鋭いですね」

「あれがか!」



そう言うと彼らはそれぞれ武器を構える。



「あらあら、そんなに急がなくてもいいのよ?(ヒルデ・・・お母さんもう会えないかもしれない、嘘ついて、ごめんね。アルシャークさん、あなたのような獣人がいてよかった、リュアちゃん、あなたの恋が実ることを祈るわ、そして・・・・・)」



レギンレイヴはそう思いながら、殺気を解き放った。



(イチロちゃん・・・どうかあなたが本当(・・)の笑顔を取り戻す事を祈るわ)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

場面変わって洞窟の中を進む壱路達。



「・・・・・・・・・・・・ん?」

「ど、どうしたんですか?イチロさん?」

「今、何か声が・・・」

「そうですか〜?」

「何もないぜ?」

「どうやら勘違いみたいだな」



ーーーーーキューイ



「やっぱり、ここにいないチビの声が・・・幻聴かな」

「キューイ!」

「っておい!なんでここにいんだよチビ!」

「ヒ、ヒルデちゃん?」

「おいおい、なんでここに・・・」

「・・・ふむふむ・・・え!」



いきなり現れたブリュンヒルデに話しかけるフォウン。



「どうした?フォウン」

「レギンさんがマスターについて行けと言ったって・・・」

「・・・・・あのオカンが・・・一旦引き返すぞ!」

「はぁ?!もうそのまま連れてっちゃってもいいんじゃ」

「理由もわからず預かるなんて納得できるか!」

「そ、そうですね!気になりますよ、理由を聞きに戻りましょう!」

「お〜い、リュア〜・・・」

「先を急ぐならお前だけ行ってろよ、アルシャーク」

「いや!俺も行くよ!置いてかないでくれぇ!」



そして来た道を引き返す壱路達。

しばらくすると洞窟の外へと出て、彼らが聞いたのは・・・。



「グオアアアアァァァァァァァァァァ!」



それは龍の断末魔の叫びだった。



「い、今のは・・・」

「キュキューイ!」

「あっ!ヒルデちゃん!」

「あのチビ・・・、追うぞ!」

「おう!分かったぜ!」



一目散に飛び出したブリュンヒルデを追って壱路達もそれに続く。

そして彼らは見た、いや見てしまった。



それは身体に刻まれた傷から流れ出た血によってできた池に沈んだレギンレイヴの姿だった。先ほどまでハツラツと笑っていた姿とは想像も出来ないほど変わり果てた姿に壱路達は愕然とする。



「そ、そんな・・・」

「こりゃひでぇ・・・」

「あ!マスター、ヒルデちゃんがいましたよ」

「キューイキューイキューイ!」

「ヒ・・・・・・・ル・・・デ・・・・?」



かすかだが息があったようだ。



「あ・・・ら・・・みんな・・・どうして・・・」

「・・・・・・・・何でだよ」

「・・・・え?」

「なんで、僕らにチビを託そうとした!それになんであんた死にかけてんだよ!」

「お、おい、イチロ・・・」

「なんで、自分の子供置いていこうとするんだよ・・・」

「・・・・・・・・・もう、私は長く生きれないのよ」

「「「「・・・・・!」」」」



その言葉に壱路達は驚愕する。



「私たち龍は心が見える・・・これは私たちが精霊族に近い存在だから・・・・だからなのか稀に力が強すぎて未来を見通すことが出来る龍がいるの・・・・・私がそうだった・・・・・」

「・・・・・未来を・・・見通す?」

「予知といってもいい・・・絶対不可避の・・・まぁ断片だけだけど」

「んなもんあるわけ・・・」

「あるのよ。外れたことは一度もないわ」

「そ、それがレギンさんが長く生きれないのと何が・・・・・」

「昔若くてヤンチャだった時にね・・・人帝国の皇帝にある予言しちゃったのよ」

「まさか、国が滅びる的な事を・・・」

「そうそう、その時のことで翼痛めちゃって長く飛べなくなったんだけどね・・・いや〜その時のツケが回ったのか・・・あの皇帝、私に勇者を差し向けて・・・」

「・・・勇者?!」

「そう、最近呼び出したみたいなんだけど・・・でこうなったって訳」

「・・・・・なんでその皇帝、あんたに勇者差し向けて殺そうとするんだ?」

「私が死ねば予言が外れると思ったんじゃない?」



あまりにも確証がなく身勝手な理由、壱路は握った拳に爪を立てていた。



「・・・・けるな」

「・・・・・・・え?」

「ふざけるなよ!だとしてもなんでチビを僕らに託した!?大事だったんだろ?大切だったんだろ?なら・・・なんで突き放したんだ・・・最後だとしても死ぬとしてもあんたは・・・突き放すべきじゃなかった・・・」

「・・・・・・イチロさん」

「・・・・・そうね」

「キュイキューイ!」

「あなた達なら・・・この子は幸せになれると思った・・・わたしとは違う景色を・・・・・・ゴハッ!」



口から血を吐きだしたレギンレイヴ。もう限界だということは誰が見ても明らかだった。



「もう、喋るな・・・」

「いえ・・・最後に・・・一言だけ・・・」



レギンレイヴはブリュンヒルデの方を向いてこう言った。



「ヒルデ・・・」



彼女が続きの言葉を言おうとした瞬間、何かが風を切る音がした。



キィーーン、ザシュッ!!!



無慈悲にもそれはレギンレイヴを貫いた・・・・・。



「あ、あああああ・・・・・・」

「嘘だろ・・・」

「あれ?なんで人がいるの?」



声がした方向を見てみるとそこには三人の影があった。



「だ、誰だテメェ!」

「無礼な!こちらの方々は人帝国の勇者、ヤマト・ケンザキ様とシズク・アサヤケ様だぞ!」

「なっ!」

「ライさん、あまりそういうのいいから」

「で?あんた達なんでこんなところにいるの?それも龍の近くなんかに・・・それにそのちっちゃいの龍の子供はなに?」

「え、えっとその・・・」

「ライさん、この場合は・・・」

「皇帝の与えた使命は龍の殺害でしたからね、当然あの龍も・・・・」

「(あの人たち、なんか勝手に話を進めてますよ、それに・・・・・マスター?)」

「あ、ああ・・・・・」



壱路は目の前で命が消えたことに、愕然としていた。そして何より彼は聞いてしまった(・・・・・・・)。最後にレギンレイヴが何を言おうとしたのかを・・・。それは・・・・・。



『ごめん・・・ね・・・・』



それは謝罪の言葉だった。一緒にいれなくて、いたくてもいれなくて、しかしその言葉は壱路の閉じていた記憶を開ける。開けてしまう。思い出してしまう。



ーーーーーごめんね・・・・壱路・・・



それはまるで呪いのように壱路を縛り付ける。それは呪詛、壱路が壊れたあの時の記憶を開く鍵。それは鎖、壱路を縛る悲しき鎖。そして壱路は呟いた。



「・・・・・・・・・・・何でだ・・・」

「え?」

「・・・・・・イチロさん?」

「・・・何で・・・殺した?」

「ちょ、あんた何?」

「何故あの龍を殺す必要があった?」

「そ、それは・・・」

「俺たちは皇帝に頼まれたんだ!龍を殺さないと大勢の人たちが死ぬから!」

「だから?だから殺したのか?」

「そうだ!だからその、お前の近くにいるチビ龍もかわいそうだが殺さなくちゃ・・・」

「名前も知らない赤の他人の為に・・・お前らはあの子の母親を奪ったのか?」

「え?」

「そしてまたお前らは・・・」



壱路から何か黒いオーラが溢れてくる。それは殺気を形にしたような、ゆらゆらと燃える激情の炎。そして壱路は言った。



「お前らはあの子を殺すと言ったな、そんなの・・・・・認めない」

「なんだと・・・」

「お前は・・・・・・いや、お前らは・・・・・やっちゃいけないことをした」

「な、なんなの?」

「許せない・・・・は・・・お前らを・・・絶対に」

「え?イチロさん、いま自分のこと俺って・・・」

「(マスター!マスターってば!)」

「・・・・・爆ぜろ《倶利伽羅・爆燐ばくりん》」



壱路が言葉を紡いだ瞬間、勇者と名乗る三人の地面が・・・爆発した。その衝撃力がこちらにも破片が降り注いで散った。辺りに炎の残滓が舞っている。そして見ると先ほどまで勇者達がいた場所は大きな穴がポッコリと空いているだけだった。



《倶利伽羅・爆燐ばくりん》・・・七つの形を持つ倶利伽羅の一つ、効力は圧倒的な爆発力、爆発した後辺りに舞い散る炎はまさに爆燐と言っていい。



「い、いきなりなんなのよ、あいつ!」

「この力・・・異常です・・・!」

「おい!いきなり攻撃なんて・・・」

「黙れよ、このクソリア充が」



どうやら今の爆発では仕留めきれなかったらしい。そして壱路はアルシャーク達の方を向いてこう言った。



「お前たちは隠れてろ、こいつらは俺が始末する」

「え?だ、だけどよぉ?!」

「いいからとっとと行け変態」

「誰が変態じゃあ!ボケ!わかったよ、リュア、今は隠れてよう!」

「で、でも・・・あ!」



リュアは、壱路を見た時、背筋がゾクリとした。何故なら・・・・・。



「どうした?」



その瞳はいつもの黒色ではなく、血のように赤い瞳(・・・・・・・・)をしていた。



「イチロさん・・・」

「大丈夫、すぐに終わらせるよ。・・・それまでチビを守ってくれ・・・・・」

「・・・・・分かりました、だけど無茶しないでくださいね!」

「(マスター・・・)」

「(フォウン、少しの間静かにしててくれないか?)」

「(・・・・・・っ!リュアさんも言ってましたけど無茶しないでくださいね!)」

「あぁ・・・・・」



そう言って壱路は歩き出した。



「さぁ、死ぬ覚悟は出来たか?」



憤怒と激情に染まりし赫眼かくがんが怪しく光っていた・・・・・。

次回!


壱路の変貌!

そしてその実力は?

怒りの一撃が炸裂する!


乞うご期待!

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