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黎明のイチロ 〜空から落ちた支配者〜  作者: 作読双筆
第一章 放浪の支配者 〜 スマホと刀と唯一魔法〜
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第十五話 解放

「囮になってくれない?」



アルシャークとウォーランがブダノストと戦う少し前。壱路はこう言った。



「囮だと?」

「そう、念の為にアルシャークも付いて行かせるから」

「なんで俺も囮なんだよ!」

「戦力分担だ」

「それになんでリュアはお前と一緒に行動しなきゃなんねーんだよぉぉぉぉ!」

「囚われていた牢の場所とか知ってそうだから」

「くっ・・・絶対傷つけるんじゃねぇぞ」

「ほーい。じゃっ早速・・・・・」



そう言って壱路は牢屋の鉄格子の鍵部分に手を掛けた。



「開け」



ガチャッ!鍵が開いた音がした。ウォーランが片足を引きずりながら出てくる。



「これでよし」

「・・・・・何をしたんだ?」

「言うと思う?」

「いや、今はいい・・・・・」

「よしっ、後はその鉄球の奴を外せば・・・」



そしてウォーランの足首についている鉄球に手をつけた。しかしそこに鍵穴がなかった。



「ありゃ、鍵穴がない・・・仕方ない。実力行使で行くか」

「へ?」



ぐにゃ



奇妙な音と共に足の首輪が外れた。首輪がまるで粘土のよう変形している。



「なっ・・・・!」



その奇妙な状態に全員が息を飲んだ。



「さてと、リュアちゃん」

「は、はい!」

「君が捕まっていた所に案内してくれる?他の人達が一箇所に固まっているなら好都合だしね」

「わ、分かりました!こっちです!」

「じゃ、お二人さん後はよろしくね〜」

「お、おい!」

「待て、己はお前の名をまだ聞いてないぞ」

「は〜」



ため息をついて壱路はこう言った。



「僕は・・・・・壱路。イチロ・サガミだ」



そう言って壱路とリュアは扉を解錠して、言ってしまった。



「あんにゃろ〜〜、リュアに手出してみろ・・・必ず後悔させてやる」

「イチロか・・・やはり似てるな」

「ん?なんか言ったか?」

「いや・・・・・何でもない」



そう言ってウォーランとアルシャークは歩き出した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ここに閉じ込められているのか?」

「は、はい!」



ウォーランとアルシャークがブダノスト相手に奮戦していたのと同時刻、壱路とリュアは奴隷たちの閉じ込められている牢屋の部屋の前に立っていた。



「(一箇所にまとまって閉じ込めているのか、別々に分けられていたらさすがに面倒くさかったから、良かったよ)」

「(まぁ、そうですけど・・・マスターって意外と面倒くさがり屋だったんですね)」

「(うるさい、面倒な事はめんどいんだよ。ところでここ確か地下だったよな、地表までの距離と上に何かあるか知りたいから調べろ。てか地下の面積とドームの面積が噛み合わない気がするんだが)」

「(あ〜、それなら分かりますよ。地表までの距離10メートル、地下の広さはボーンドームの5倍くらいで、街全体下に入るくらいですね〜)」

「(マジか?!)」

「(マジです〜。部屋の上のとこは空き地ですし、今は誰もいませんから()()使っても大丈夫ですよ〜、それとここ倉庫も兼ねているようですね、奴隷さん達の荷物もここにあるみたいですよ)」

「(それならいい、しかし普通荷物と奴隷を一緒にしとくのか?)」



とフォウンと話していると。



「・・・イチロさん?」



リュアが声をかけていた。まだ壱路に慣れてないかもしれないが、ちゃんと話が出来るくらいの信頼は生まれたらしい。



「あー、大丈夫今入るよ」



そう言って壱路はドアを開ける。



「たのもー」



とか間抜けな掛け声をしながら。



なんか入った途端、牢からざわざわと囁きが聞こえる。こちらを警戒しているようだ。



「誰だ?」

「ついに売られるのか・・・・・」

「おかあーさん、こわいよー」

「大丈夫よ、大丈夫」

「なんじゃなんじゃ?」

「あいつ人間か?」

「嫌だ嫌だ嫌だ」

「・・・・・・」



とかなんとか言っている。どうやら男女、種族、年齢問わず囚われていたらしい。



「えーと・・・・・みんなここから出たいかー!」

「!」

「・・・・・・・・・」



壱路の言葉に全員が静まり返った。返事がない。



「よし、静かになったな。じゃあ一気にやるか」



そして壱路は唐突に指を鳴らした。



「開け」



ガチャッガチャガチャガチャッ!



それと同時に幾つもの鍵が外れる音がした。



壱路はこの部屋の中にある《鍵》という共通の括りを持つ物を支配し、干渉して鍵を外したのだ。《一つの対象しか支配できない》法則を逆手に取ったこの裏技、結構便利だが魔力も相当使う。けど壱路の魔力はEX級なので大して問題ないが。



「か、鍵が開いた!」

「動けるぞ!」

「あいつは何者なんだ?」

「おかーさん外れたー」

「うん、うん・・・!」



牢の中の人々が思い思いに歓声を上げていた。素直に喜ぶ者、未だ鍵が外れたことを信じられない者などなど様々な反応をしていた。



「すいません。喜んでいるとこ悪いんですけど、ちょっとこっちに来てくれますか?」



壱路はそう言うと奴隷達はぞろぞろとこちらに来た。

ここで何故、奴隷達がパニックになってもおかしくない状態なのに不気味なほど静かな事に疑問を覚えるだろう。



実は壱路は自分の《声》を制御する事で、鎮静効果にも似た効力を出す声が出るように支配したのだ。これは催眠と同じ効果を持っているがそこは黙っておく。



「さて全員出たな」



そう言うと壱路は牢の中に入り、奥の壁に手を触れた。



「(マスター、この地点はちょうど町外れみたいですよ)」

「おっ、そうか、ならいけるな」

「イ、イチロさん?」

「リュアちゃん、そこの倉庫にあるの持ち主に返しといて、あと危ないからちょっと離れといて」



そう言うと壱路の触れた部分から放電がほとばしった。



その瞬間、地鳴りと共に壁が変形していく。



ゴゴゴゴゴゴォ!



そして地鳴りが唐突に止まった。



「こんなもんか」



そこにできていたのは階段だった。その出口の先には夜空の星が広がっている。



その光景にリュアは息をするのも忘れていた。



「す、すごい・・・」



その一言しか言えなかった。



「そ、外だ!」

「助かったんだ!」

「自由だー!」

「やった、やった・・・」

「ありがとう、ありがとう」



奴隷達が歓喜の表情で喜んでいる。そして一斉に階段を上っていった。



「ん?」



そんな中壱路のコートを誰かが引っ張る感覚があった。



奴隷になってた1人だろうか、それは小さな子供だった。種族は多分魔族(デーマ)。褐色の肌と小さな角が生えている。



「えーと、なんですか?」

「・・・・・がとう」

「え?」

「ありがとう、くろいお兄ちゃん」



お礼を言われてしまった。それにしてもくろいお兄ちゃんって・・・・・思わず笑ってしまった。



「ほれ、こんな所にいるな、とっとと行きな」

「・・・・・・うん!」



その子供はその一言だけ言って階段を上っていった。



「(たまにはこういうのも悪くないな)」

「(感謝されるのは嬉しいですよね〜)」

「(うん、うん!だよね、イチロ!)」



「あの、イチロさん」

「ん?・・・リュアちゃん、それなんだ?」

「わ、私とお兄ちゃんの荷物です・・・!」



リュアは鍋の取っ手が飛び出しているリュックとスナイパーライフルを入れとくのような長細いアタッシュケースを持ってふらふらしていた。



「多いな、ちょっと預かっておく」

「ふえ?」



リュアからリュックをひったくり魔法の袋に突っ込んだ。



「よし、そのアタッシュケースも・・・」



ドッゴーン!



いきなり炸裂音がした。



「なんだ?」

「(マスター!囮の二人のいる方向から聞こえましたよ!)」

「(まさか・・・・・)」

「イ、イチロさん・・・・・」



リュアが心配そうにこちらを見ている。アルシャークの安否を気にしているのだろう。



壱路は魔法でさっき作り上げた階段を塞いでいる。そして・・・・・。



「よっと」

「ふぇ?!」



リュアをアタッシュケースごと担ぎ上げた。世間で言うお姫様だっこである。



「とにかくここにいてもらちがあかん。行くぞ、しっかりつかまってろ!」

「ひゃ、ひゃい」



リュアが顔を真っ赤にしてそう返事した。



(最悪の事態にはなってくれるなよ・・・・・)



そう思いながら壱路は駆け出した。

次回!


アルシャーク達に何があったのか?!


人・獣・魔の共闘を見逃すな!


乞うご期待!

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