第十三話 魔族との出会い
「そこにいるのは誰だ?」
牢屋の中から声がした。聞いた感じ男の声だ。
とんでもない奴だと嫌なのでちょっと警戒する。
すると牢屋の中から人影が動いた。一人のようだ。
「ん・・・・?人族と獣人族だと?珍しい組み合わせだな」
「そんなに珍しいのか?僕ら」
「今の御姿勢はな、俺だってお前みたいな奴初めてだぜ」
「・・・・はい」
壱路の疑問にアルシャークとリュアは当然と言うように肯定した。
「一つ問おう、お前らは何者だ?」
牢屋の囚人はそう言った。なんか結構いい身分の口調に聞こえる。
「ひとの名前聞きたいならまずそっちから名乗るのが筋じゃないんですか?」
壱路は用心のためにそう答えた。
「それもそうだな、己の名は・・・・・」
そういいながら男は前に出てきた。
「魔王騎士団序列三位、『ヴォルフス』のウォーランだ」
「なっ?!ウォーランだと?」
「?・・・・・・・!」
「・・・・・・・まさかあんた魔族か?」
その男は体は浅黒い褐色、なにより狼のような顔をしていた。こっちが獣人だと言えば納得しまうかもしれない。
「確かに己は魔族だ」
「へぇ、でさスクリームって何?」
「・・・・・は?」
「おい!?イチロお前まさか魔王騎士団を知らないのか?!」
「いや、『ヴォルフス』っていうのが魔族の一種である事は知ってるぞ?」
実は壱路は彼・・・ウォーランの名前を聞いた時フォウンから魔族がたくさんの特性を持つ種族の総称で皆褐色に近い肌をしていること(例外もあり)、『ヴォルフス』とは魔族の一種で狼男みたいなものだと教えて貰っていた。もちろん念話で。
「(しかしこんなところで魔族と出会うなんて人生分かりませんよね〜)」
とフォウンは説明の最後に締めくくっていた。
「ただスクリームってのが分からん、なんの名前なの?」
「ここまで変わっていたとは・・・・・・」
アルシャークが苦悶表情をしている中、ウォーランは少し頬を緩ませながら言った。
「ふっ、一応説明しておこう。『スクリーム』とは正式には第零魔王近衛騎士団・スクリームと言って一般では魔王騎士団で通っている」
「「魔王騎士団?」」
壱路とリュアの声がハモった。どうやらリュアも知らないらしい。
「ああ、魔王様を近くで護る護衛であり、魔族の軍を指揮する将軍であり、魔族の今後について考える宰相・・・それが魔王騎士団だ」
「へぇ、よーく分かった。ようはなんでもこなす側近みたいなものか」
「あぁ、そうだ」
「その中でもウォーランと言ったら師匠からよく聞いているぜ、序列一位、二位に続いての古参で『赫狼』の二つ名で呼ばれているって!」
「かくろう?」
多分浅黒い褐色で狼の頭だからだろう。
「で、その『赫狼』さんがどうしてこんな所に閉じ込められてるの?」
「・・・・・・・・」
「言いたくないならいいけど」
「いや、言わせてくれ」
ウォーランはここに入ることになった経緯を簡単に説明した。魔王騎士団は緊急時以外は基本的に自由行動だ。彼は魔王の命令で攫われた人々を助け出す事になり、なんとかここまでたどり着いたが、魔族達を人質に取られあえなく捕らえられてしまったのだと言う。
「幾つか突っ込みたいところもあるが、まあ今はいいや。であんたに聞きたいことがあんだけどさ」
「む?」
「イチロ、おまえまだ」
「お兄ちゃん、ちょっと黙って、イチロさんが話してる」
「ハイ分かりました」
「(切り替えはやっ!)」
「なんだ?他に何を聞きたい?」
次の瞬間、アルシャークとリュアは壱路の非常識さを再確認する事になる。
「あんたをここから出してやるよ」
次回!
壱路の真意とウォーランの答えは?!
いろいろ事態が動き出す!
乞うご期待!




