第十一話 作戦開始!
あけましておめでとうございます!
ちょっと挨拶が遅れましたが、今年度も作読双筆をよろしくお願いします。
奴隷オークションが開催されるボーンドームに足を踏み入れた壱路とアルシャーク。
そこはまるでテレビなどで見るオークション会場そのものだった。
明かりは松明が薄暗くあたりを照らしている。そこには多くの椅子がずらりと並んでいて、前にはステージのような物があり、教壇みたいな物まであった。あそこで司会をするのであろう。椅子には既に半分ぐらい貴族みたいな奴らが座っている。
はっきり言って体育館みたいだった。
「(結構人がいるが、作戦に支障はないな?)」
「(大丈夫ですよ、マスターの作戦は完璧です!)」
「(まぁ、我ながらすごくいいアイデアだったと思うが)」
「(うん!イチロ、アタマいい〜!)」
「(上手くいくといいですね)」
「(上手くやるさ)」
やるだけの事はやった。後は実行するのみだ。
「おい、そろそろ始まるみたいだぞ」
アルシャークが声をかけた。今アルシャークは変装でサングラスとバンダナを付けている。これはここに入る前アルシャークの顔がバレてる可能性があったためその対策だ。
「分かってるよ、しかしよく似合っているな。全然違和感がない」
「まぁ、俺は何でも似合うからな」
「・・・・・・・・手筈は分かってるよな」
「あぁ、しかし本当に大丈夫か?」
「大丈夫だ。報酬の為、その他もろもろの理由の為に必ずやってやる!」
「その他もろもろって・・・・あと報酬ってあんな物でいいのか?」
「いいんだ。僕にとってはもっとも重要な事だから」
とかなんとか言いながら壱路は考えていた。この作戦の鍵はタイミングだ。アルシャークの妹、リュア・レイジューンがこの場に来たと同時にこの作戦は始まる。
少しするとステージに司会者みたいな人物がステージに上がってきた。そして教壇みたいな物の前に立ち、手にはマイクもどきを持っている。
「(この世界にもマイクがあるのか)」
「(結構高価なマジックアイテムみたいですね)」
と念話もどきで話していると司会者が口を開いた。
「えー、皆様本日は我がブダノスト主催のオークションに来て頂きまことにありがとうございます」
司会者は作られたような笑顔を向けて話していた。
「今回のオークションは今までのオークションと違い、良質な商品が目白押しですのでどうぞお楽しみください」
「(な〜にが、良質な商品ですか!人を売り買いなんて虫以下な連中ですね!)」
「(同感だ)」
「いよいよ、始まるな」
「目玉商品って言ってたんだから最後くらいにくるのか?」
「さて最初の商品は美しき獣人の少女です!」
司会者がそう言うとステージの横から巨大な檻が出てきた。
その中には一人の少女が入っている。髪は初雪のように白く輝く白銀、それが腰まで伸びている。容姿は愛らしく一言で言ったらかわいいという言葉が一番にあう。見た感じ背は150ぐらいでちょっと小さい。だが少し違和感があった、背の割にはスタイルがすごくいい。
随分前wikiに調べ物していた時偶然見たストレンジグラマーという奴だろう。服はボロボロだがそれでも内側から汚れぬ美しさを醸し出していた。
「(あんな小さな子が・・・・・)」
「(かわいそうだよね〜。イチロ・・・イチロ?)」
「(・・・・・・・・・)」
それぞれが感想を言う中、壱路はただ絶句していた。
「(マスター?)」
「(へ?ああ、なんでもない)」
壱路が驚愕したのは理由があった。その理由は後で話すとして、その少女を見て固まったのは壱路だけでなかった、アルシャークも同じように固まっていた。
「あ、あれは・・・」
「ん、どうした?」
「リュアだ」
「はい?」
「あれは妹のリュアだ。間違いない」
そう、あの少女こそアルシャークの妹であるリュア・レイジューンだったのだ。壱路達の中には驚きと疑問が渦巻いていたのは言うまでもない。
「(はやっ!いやなんだこのタイミングの良さは、早過ぎるだろうが!偶然でも出来過ぎだぞ。しかもあんなハイスペックな・・・)」
「(と、とにかくチャンスですよ!今こそ作戦開始です!)」
「(・・・あぁ、いろいろ考えるのは後だ!)」
シュッ
次の瞬間、周囲にかかっていた松明が一斉に消えた。
「な、なんだ?!」
「いやー!」
「な、なにが起きたんだ!?」
「たすけてー!」
オークションの客達がそれぞれ声をあげ叫んだ。泣き叫ぶ者、悪態をつく者、逃げ出そうとする者、などなど様々な反応をしていた。
そんな中ステージに向かって動く影が二つ・・・・。
「スゲェ。よく見えるぞ!」
「当然だ。前もって実験していたからな」
壱路とアルシャークである。なぜこの暗闇の中で動けるのかと不思議に思うが、その答えは意外と簡単なのだ。
実は壱路は自分のメガネとアルシャークがかけているサングラスにある改造を施していたのだ。それは暗視機能を魔法により搭載させたのだ。壱路は魔法で物体の特性を変換することでマジックアイテムもどきを作ることが可能なのだ。
これに気づいた壱路は旅の途中道具を魔法でいじくることが半ば趣味になっていた。
今回それが役に立ったのだ。
「(まさかこんな使い方があったとはな。これはどんな小説にもないチート魔法だぞ)」
「(ふふっ、いえてますね。マスター)」
そしてステージの上にたどり着いた二人はさっそく檻の中にいる妹が無事か確認する。
「リュア、リュア!」
「・・・・・え?」
「俺だ、リュア。助けに来たぜ!」
「お兄ちゃん?」
「そうだ。お兄ちゃんだ!」
「おい、積もる話は後だ。今はこの檻の鍵外すぞ」
アルシャークを見ると顔から涙と鼻水が大量に垂れていた。そんなに嬉しいのかと壱路は思ったが今はそんなこと考えている場合じゃない。すぐに魔法で檻の鍵を外す。
ガシャッ!
「よし、あとはここからおサラバするだけだな」
「おやおやお客さん、こんな所で何をなさっているのですか?」
突如後ろに気配を感じて壱路達は振り返った。
次回!
壱路達に待ち受ける危機!
そして壱路はその危機をどうくぐり抜けるか!
乞うご期待!




