序章 始まりの学園
部屋の中で時計の音が鳴り響く、布団に入ったままで時計が置いてあるところまで手を伸ばす。時計の音を止め、時間を見た瞬間。
7時すぎている・・・。
ベッドから降り、一階へと下りて行く。さっさと、制服を着換える。テーブルに置いてあった皿には、焼いたパンの上に目玉焼きがのっかっていた。目玉焼きパンを銜えながら鞄を持ち、外へと出る。
「流石に遅刻したら、やばい!」
家から飛び出るように走り出し、学校『コラ・トン学園』へと向かう。
コラ・トン学園とは、この辺にある私立学園のひとつ。小学生から高校生まで入れるのが特徴。ただ、学園の平均値はそこまで高くはない。
今日始業式、遅刻してはいけない日だ。急いで走り、道を駆け抜くように学園に向かう。
何件の店を通りすぎ、人が通る中を潜り抜けるように行ったその時、制服を着た生徒にぶつかる。
「いった…!」
「わるい、大丈夫か?」
手をかした時、少女が手を掴みながら立ち上がった。
どう見ても、学園の生徒だ。証拠に着てる制服が同じだった。
だが、冷静ではなかったのか、全然気づかなかった。
「急いでるから、行くぜ。じゃあな!」
「ちょっと、待って__」
少女の言葉を聞かず、走り出してしまった。
場所、聞きたかったな…。
少女は少しだけ、下を向きながらしょんぼりした。
コラ・トン学園にたどり着いた時、校内の入り口に紙が貼っていた。
「…また、彼奴と一緒か」
嫌ではない、腐れ縁がここまで続くと不気味に見えるな。
急いで教室に向かう。階段を登り、廊下を走り抜くと、教室が見えた。教室のドアを開けたその時、デコにチョークが当たった。
「い、いってぇぇぇぇッ!」
デコを抑えながら悲鳴を上げると、教卓の近くにいた女性がいた。女性を見た時、顔色を悪くする。
「せ、先生⁉︎」
教卓の近くに居る女性は先生「ユミール」だ。前のクラスで担任の先生をやっていた。よく、遅刻した時に叱られたな。
「今日は何の日か分かってるだろうな」
「始業式」
「分かってるなら何故、遅刻したんだ」
「チャイムが鳴ってないからセーフだぜ」
「お前という奴は…」
呆れて何も言えなかった、ユミールは深い溜息をつく。
「とりあえず、そのボサボサの髪を何とかしろ。女なのにだらしないぞ」
「お、おう」
遅刻したせいで長い茶髪がボサボサのままだった。手で梳かしながら席に行くと、席に座っていた女性がクスクスと笑っていた。
「本当、寝坊助よね」
「うっせえよ。てか、また同じクラスになったよな」
「茄木砂とは幼馴染だけど、流石に腐れ縁よね」
茄木砂__本名は『霧崎茄木砂』
男性口調が目立ち、俺はあまり気にしてない。誰とも仲良くしてくれる優しいが、かなりロリ…幼女が大好きだ。俺はロリコンじゃないからな。
で、長い黒髪を帯で結んだのが『黒鐘黒夢』だ。
幼馴染の一人。家が寺だからなのか巫女の仕事をしている、寺はお坊さんだろと突っ込みたいぜ。半分の生徒は腹黒イメージを持つが、気は優しいだぜ。
「全くだぜ…」
茄木砂は溜息をつき、席についた。
始業式が始まり、何時間も過ぎて行く。
や、やっと終わった…。
睡魔が酷く、何回もあくびをする。長すぎる話しと退屈が襲いかかり、睡魔という怪物と戦っていた。
俺は勝ったよ、睡魔に。
茄木砂は心内でガッツポーズを取り、嬉しい顔をした。
先生の指示で退場をすると、一瞬だけ見たことある顔が見えた。
「さっきの子、あの時の……」
学校に向かう時、ぶつかってしまった少女に見えた。
「気のせいか…」
茄木砂はそう思い、体育館から出た。
三階の教室に入り、自分の席に座りながら嫌な顔をしていた。理由は二つ。
一つは担任の先生がユミール先生だからだ、二回連続で担任になるとは思わなかった。これだと、チャイムなるギリギリに来たら怒られそうだ。
二つは__
「…何で前に黒夢が居るんだよ」
前に黒夢が居ることだ、背が高いせいか黒板が見えない。前に酷い目にあって横から黒板を見たのは良い思い出な…はず。寝る時は役に立つが。
声に反応したのか、黒夢が後ろを向いた。
「仕方ないじゃない、出席番号が近いんだから」
「お前が前に居るとロクな事が無いぜ」
「何それ、酷い」
「本当の事だぜ」
その時、二人の会話に少女が口を挟んで来た。
「まともに授業を受けずに寝るから良いじゃないかしら」
「なっ⁉︎」
何も言えない。
茄木砂は言い返せなずに居ると、少女が呆れた顔をした。
「貴女、何のために学校に来てるの?」
「ふふん、勿論__部活する為だ!」
期待なんてしてなかった。
二人はドヤ顔で言ってる茄木砂を見て何も言えなかった。
なにを言っても無駄なのは相変わらずだ、それが彼女「霧崎 茄木砂」の特徴かもしれなかった。
「それより、エルシーは大丈夫なのかよ?」
エルシー__それが彼女、というより吸血鬼少女と言った方が良いだろう。
金髪にサイドテールで髪を結んでる、吸血鬼なのに赤い目ではなく黄緑の瞳をしている。俺的には吸血鬼は赤目がメインだと思った。
始めて同じクラスになった。吸血鬼のくせに太陽を浴びて燃えない、弱体化はするが。言いたい事はハッキリ言うのは良いけど、冷淡すぎる。たまに、傷つく時がある。貧血で保健室に行く事が多い。
「貴女に心配されるほど、落ちこぼれてないわ」
「酷いなぁ、貧血で倒れやすいから心配したのに」
「その心配はないわ」
エルシーが鞄を開け逆さまに持つと、紙パックのトマトジュースが大量に出てきた。多分、二十個ぐらい入ってる気がする。
「これぐらいトマトジュースを持ってたら、貧血にはならないわ」
二人の目線がトマトジュースにいき、目を丸くした。トマトジュースは吸血鬼の点滴がわりになると聞くが、こんなに持ってきてると思わなかった。
トマトジュースを誰かさんに飲ませたら面白いだろうな…。
意地悪な考えを捨て、茄木砂が首を振った。
時間が経つと、 ユミール先生が教室に入ってきた。
「お前ら、席に__」
机に置かれた大量のトマトジュースをピラミッド状態に置かれていたのを見て目を丸くした。
「二十個だと、そこまで大きくならないな」
「五段までしか出来ないからね」
茄木砂が腕を組みながら悩むと、前を向いていた黒夢が後ろの方へと指をさした。
「ん?…げっ⁉︎」
「お前ら、何をしてるんだ」
「えーと、芸術作品のトマトジュースピラミッド」
「そうか…とでも言うと思ったか?」
ユミールは手を強く握り、茄木砂の頭を軽く殴った。
自業自得だわ。
席に座っていたエルシーは溜息を尽きながら肘をついていた。
「そのピラミッドをしまって席に付け」
「はーい」
茄木砂はピラミッドを崩し、エルシーの鞄にトマトジュースをしまう。しまい終わると、自分の席に座る。
「今日から新しい生徒が転校してきた」
この時期に転校生か…。
茄木砂は肘をつきながら珍しい顔をした。
「入れ」
「は、はい」
ユミールに呼ばれると、両手で鞄を持ちながら教室に入ってきた。
肩までの黒髪の少女を見た時、茄木砂は目を丸くした。
「あの時の!」
無意識に声に出し、その場を立ってしまった。
「何だ、知ってるのか?」
「いや、その…朝に……」
その時、少女が笑顔で答えた。
「朝に偶然会ったのです」
「そうか。じゃあ、席は茄木砂の隣で良いか?」
「はい」
少女は茄木砂の隣の席に座り、鞄を机の上に置く。
「彼女は『鈴奈 凛』だ、仲良くするように」
皆がざわつく中、茄木砂は窓の方へと見る。
まさか、こんな形で会うなんてなあ…偶然すぎるぜ。
窓の景色を見ながらそう呟いた。




