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起きて

作者: 鵤牙之郷

 起きて。


 朝。私はいつも、母のその言葉で無理矢理夢から覚まされました。


 起きたかな?


 早朝。祖父母のその言葉は、寝足りない私を時たま苛つかせました。


 起きろ。


 授業中。疲れているというのに、先生のその言葉がいつも邪魔をして、私から休息の時間を奪いました。


 おーい、起きろー。


 部活の後。電車に揺られてウトウトしていると、隣に座っているクラスメイトがいつもこう言って私の眠りを妨げました。


 おい、起きろって。


 合宿中。ルームメイト達が私の身体を摩り、この言葉を幾度も投げかけました。3泊4日、私は毎朝苛々していました。


 起きてよ。


 同棲中。こちらは早く寝たいのに、彼女がつまらないという理由で発したその言葉が、いつも私の睡眠を邪魔しました。


 起きて。


 色んな人達から言われました。苛々しましたが、私はそれでも我慢して起きました。ベッドから、布団から身体を起こしました。


 でも、母も恩師も祖父母も友達も妻も、みんな起きてくれませんでした。


 綺麗な花に囲まれて、白い箱の中で幸せそうに眠っていました。


 何故ですか。


 あれだけ人の眠りを邪魔しておきながら、何故あなた方は起きてくれないのですか。


 ずるいじゃないですか。


 私を1人にして、みんな寝てしまうのですか。


 我慢して私はいつも起きました。苛々したけど、それでも文句の1つも言わずに身体を起こしました。


 お願いです。


 あなた方の言葉はちゃんと聞いたのですから、私の言葉もちゃんと聞いてください。



 起きて。

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