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最弱の盾

店内に顔に十字の傷がある大男が転がり込む

「誰ですかあなたはッ‼警察を呼びますよッ‼」


店員が叫んだが、男は聞く耳を持たない。


「呼んでも…良いんじゃない?」

男はそう言うと、店員の襟をつかんで更に言う。


「呼びたかったらァ、呼んでもいいんじゃない?俺はサンって奴を殺せばいいだけだから…ごめんね。」

男は、それ以上店員には語らなかった。


「一回しか言わないからァ、よく聞いてね。自己紹介、俺は『ニコル』、サンを殺せってキダムさんに言われた。以上」

サンは立ち上がって、名乗り出た。

すると、何の脈略も無く話し始めた。

「サン、君、やったことある?『イジメ』って奴。強いふりしてるガキがさ、弱いふりしてるガキを殴ったりけったりするアレ」


サンの頭に?マークが浮かんだ。


「俺は、史上最『弱』のギフトを授かった、『悲哀のミゼラブル』、それが俺の能力、身体を鉄ほどの硬さにする事が出来る。それ『だけ』だ。硬くしたところで殴られ、蹴られ、惨めなもんだろ?でも、キダムさんが、俺に役目をくれた、今まで輝いたことのない俺に、最高の贈り物だ。しかも、あんたの首と一億Gを交換してくれるってさ‼…何買おうかな?……サッカーボールも良いなぁ、ステプレ3も欲しいし、カードゲームもやりたい……いや、青春を丸ごと買い戻したい…だから、だから死んでくれ。」


「てめぇ、さっきからべらべらと‼要は、俺を殺して、ガキの頃の思い出忘れて、新しい人生歩みてぇって事だろ‼?甘ったれるな‼」


「なんかごめんな…でも、俺はただの最弱じゃない、最弱の盾には最強の後ろ盾が付いている。見せてあげるよ。俺の召喚獣サモン‼虚無の草原を駆ける孤独の獅子、グリーヴァ‼…こいつが俺のたった一人の友達」


ワイドマン達は急いで、客を避難させる


「俺は見ているだけだァ‼グリーヴァ‼まずは、あれやってくれよあれ‼」

グリーヴァはニコルに従い、逃げ遅れた老婦人を石化させた。


「石は鉄より脆い‼」

ニコルが殴った老婦人は上半身と下半身、手に別れゴロゴロと崩れ落ちた。


サンの額に汗が流れる。

『エアリアル』で剣を浮かせて背後から斬りかかっても、まるで効かない。

更に追及して魔法をかけた、グラビデ、その一帯の重力を0にして、バランスを崩す魔法だ。

ニコルはバランスを崩したが、グリーヴァの方が一枚上手だった。


「グリーヴァ‼今度は肉がはじける音が聞きたい‼骨の折れる音も‼」

グリーヴァの太い腕が、サンの胸を殴りかかる。それと同時にゴギッと鈍い音が響いた

店の柱に背中を強打したサンは、苦しそうに息をしながら、血を吐いた。


アリスは助けに行くと言って聞かなかったが、ワイドマンが宥めた

ギフトを授かった者に、人間が太刀打ちできるはずがないのだ。


それでも、必死でアリスはニコルの気を引こうとする。

「あ、あんたの顔の傷、どうして付いたの?ホントに弱者だったら、傷をつけたやつに殺されてるよね…?」

ワイドマンは、足元のバラバラになった夫人の腕を蹴って、サンの元に飛ばした。


すると、ニコルは鬼の形相で振り向いた。

「てめぇ、今俺の傷のこと言ったのかい?どうせ、殺す相手だから、教えてあげる。一回しか言わないからよぉく聞きな。かたきと闘ってついた傷ならどんなにカッコいいことか、まず誇りにするだろうな、でも違うな…おっと、話がながくなるからグリーヴァ、ガキを見張ってな。…俺の両親は、俺がまだ、小便クセェ頃に、別れた。親父は、別に寂しがりはしなかったが、お袋の…いや、女の体を求めていた。親父は、有ろうことか、女の体を俺で代用した。思い出しただけでも、虫唾が走る…学校にも通わせてもらえず、親父も仕事を探さずに、毎日毎日…ある日親父は俺が他の男に取られまいとするように、顔にナイフで傷をつけた。顔以上に心は傷ついてるがね、ある日、親父は家の鍵をかけ忘れて、俺は逃げることに成功した…砂漠の外れまで逃げて…俺は、その日、野宿した。砂漠の夜は寒い…、ただ、一か所だけ暖かい地面があった。その辺りを歩くと俺は穴に落ちた。そこにあったんだ、火のクリスタルが…その力で能力に目覚めた。孤児院に入れてもらい、学校にも通わせてもらった。だが、俺を待っていたものは陰湿ないじめだった。能力を手にした俺は、『化け物』、そう呼ばれた。俺は終わったんだよ、男としても‼……人としても、だから、青春を取り戻したい‼」


ワイドマンは他に時間を稼ぐ方法を探したが見つからない。


「じゃあ、お終いだ‼やれ‼グリーヴァ‼俺はコーラ飲んでるからよぉ‼頭蓋がちがちに割っちまえ…え?」


「頭蓋割れるのはお前の方だったな…ご夫人、あんたの自慢、汚れちまったぜ。」

血だらけになったサンは、指をニコルの方へ向けてそう言った。


ダイヤモンドの指輪を夫人の手から抜き取りグラビデで無重力になった空間に浮かせた状態で回転させ、突っ込んだのである

回転が止まらなくなった指輪はニコルの頭蓋を貫いた。


ワイドマンはサンに回復薬ポーションを渡した後、ニコルを尋問した。


「キダムさんは、最後に闇の神殿に行くって言ってた……あんな場所行くわけないよな…きっと冗談だ気にすんな……」

そう言ってニコルは息を引き取った。

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