下
ある夜、焚き火を囲みながら、本は聞きました。
「ねえ、どうして僕を燃やさなかったの?」
魔法使いは少し黙ってから、微笑んで言いました。
「お前さんが火をまき散らしたら、危ないからの」
その数日後、二人は山火事に遭いました。
近くには町があります。
魔法使いは水の魔法を使いますが、
火はなかなか消えません。
そのとき、本は思い出しました。
「火をまき散らすなら……水でもできるかもしれない」
本は川へ走り、迷わず飛び込みました。
魔法使いとの思い出が詰まったページは、びしょ濡れになります。
それでも本はやめませんでした。
川の水をたっぷり吸い込んだ本は、
大量の水をまき散らし、山火事を消し止めたのです。
本は重くなり、目を閉じました。
でも、後悔はありませんでした。
「魔法使いを守れてよかった……」
ふと気がつくと、
魔法使いがのぞき込んでいました。
「お前さんは無茶をするの。
でも……ありがとう」
魔法使いが乾燥の魔法をかけ、本は助かりました。
それから本は、
魔法使いの相棒として旅を続けました。
ページには、新しい思い出が増えていきます。
本はもう、さびしくありませんでした。
誰かと一緒に生きる物語そのものになったのです。
おしまいに
あなたが本を読むときは、
どうか大切にしてください。
その本は、ただの本ではなく、
「カイブツの本」かもしれません。
もし乱暴に扱ったら――
ページを埋めるために、
あなたをかじりに来るかもしれませんよ。




