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中
その時、
通りかかった一人の魔法使いが言いました。
「ワシに任せてもらおう」
魔法使いは杖を高く振り上げました。
すると本に――
キラキラキラ……
やさしい光の魔法がかかりました。
するとどうでしょう。
本の中から、
バッタ、ネズミ、ネコ、イヌ、
そして少年と、その父が、
ぽん、ぽん、と吐き出されたのです。
皆、無事でした。
助かった人たちは、
抱き合って喜びました。
「偉大な魔法使い様、ありがとうございます!」
皆は魔法使いに深くお礼を言いました。
けれど――
本の頁は、
すべて真っ白に戻ってしまいました。
涙を流す本を見て、人々は言いました。
「この本は危険だ。処分しよう」
魔法使いは「ワシが何とかする」と約束し、
本を連れて、町を出ました。
本はトボトボと後ろをついていきます。
けれど、魔法使いは本を燃やしませんでした。
そのまま一緒に旅を始めたのです。
深い森の中にある、美しい湖。
山の頂から見る、夕焼けと朝日。
どこまでも続く、色とりどりの花畑。
夜空いっぱいに広がる、満天の星。
本は、初めて知りました。
「見るだけで、こんなに心が満たされるものが
この世界には、あったんだ」
そうして――
真っ白だった頁は、
魔法使いとの旅の思い出で、
少しずつ、少しずつ、埋まっていきました。
もう、誰も食べなくても。
もう、奪わなくても。
本は、
さびしくなくなったのです。




