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21.5 - 仮初の平和
「これより、月の国守護隊への入隊式を始める!」
桜の花びらが舞う中、守護隊の入隊式が執り行われた。その中には真白の顔もあった。足心はテラスから式の様子を眺めながら溜め息を吐いた。
「こんな日だというのに何じゃ。」
後ろに控えた豪は階下からは見えないはずだ。よってその報告内容が漏れる心配はない。
「実地演習時の侵入者が、自殺しました。」
「チッ……。何か聞き出せたか。」
「最後に一言だけ……。『敵は俺たちだけではない』と。」
「……ほう。」
『敵は俺たちだけではない』……か。侵入者が他にもいるということか。はたまた、裏切り者がいる……ということか。
「このこと、他には知る者はおらんだろうな。」
「はい。私と総隊長のみです。尋問は私が行なっておりましたので。」
「……分かった。下がれ。」
「はい。」
足心はまた一つ溜め息を吐いた。
「平和っちゅーのは、やってこないもんじゃのぅ……。」
例えそれが仮初であっても、享受できるだけありがたいということか。足心は自身が総隊長に就任し、蛍が参謀に就いていた数十年で築き上げてきた平穏が、崩れる気配を感じていた。




