15.5 - 想いの交錯
隊舎に戻る途中、豪は八雲を盗み見た。昔から何を考えているのか分からない人ではあった。でも何かしら考えがあるということは読み取れる人だった。ところが今回は違う。まるで考えが読めない。
「真白ちゃんのこと、どう思ってるんです?」
そう尋ねると、八雲は思い切り溜め息を吐いた。
「総隊長に言ったのお前でしょ。やたら気にかけてるとか何とか……。」
「実際、気にかけてるでしょ。」
豪にはずっと引っかかっていることがあった。あの日、真白を雪原で発見した時のことだ。
吹雪の直後、雪原のど真ん中で手負いの子どもが一人倒れている光景はとんでもないインパクトだった。しかも救援要請を受け、そちらに向かっている道中だ。全てが普通じゃなかった。
その日は八雲をリーダーにチームを編成して現地に急行していた。チームには豪も参加していた。通常であれば豪に真白を任せて、八雲は先を急いだだろう。だがその日は違った。八雲は迷うことなく真白を引き受け、豪にチームを任せたのだ。
反論している暇はなかった。それだけ状況が逼迫していたのだ。八雲と豪には信頼があった。豪でもその役は事足りる。それは豪にもよく分かった。だが普段と違う八雲の判断が、豪はずっと引っかかっていたのだ。
「……総隊長にも言われたよ。俺にも、正直分からないままだ。真白を保護してから約九ヶ月。時間が経てば分かるモンかと思ったけど、さっぱりだよ。」
八雲は肩をすくめて見せた。
「同情はあったと思う。まぁ憐れむなって方が無理な境遇だ。自分と重ねてる部分も、少なからずあっただろうね。」
「……それだけですか?」
「……今は、もう少し…何か違う感じはある、かな。」
「……そうですか。」
「なんかね、放っておけないんだよね。」
八雲は苦笑した。何かと巻き込まれがちな真白のことだ、気になるのも分かる。だが八雲の場合、それだけではないだろう。
「相手が10歳ってこと、忘れないでくださいよ?」
ニヤニヤしながらそう言うと、八雲は露骨に顔を顰めた。豪ははたと止まった。思っていたのと反応が違う。
「何言ってんのお前。当たり前でしょ。」
「えあ、あー……。」
あまりこの手の会話をしたことがなかったが、この人、自分の感情に疎いタイプかもしれない。豪は緩く溜め息を吐いた。いや、これは裏を返せば、外野も十分楽しめるということだ。
「楽しくなりですね、八雲さん!」
「何が?」
「こっちの話です!」
「あっそ……。」




