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月桂樹をあなたに捧げましょう  作者: 弥生あやね
第一章

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20/28

15 - 星の日のお誘い

「 はいっ、今日はここまで!」



 担当のお姉さんの言葉を合図に、思わず脱力して机に突っ伏した。今日は守護隊見習いの日だ。今日は第六隊にお邪魔している。建築関連を見てくれている部隊らしい。壊れにくい建物の設計だったり、壊れた建物の再建だったり、なかなか多岐に渡る。あまり知らなかった分野なので、興味深くて面白かった。が、その分ボリューミーだった。



「あははっ、真白ちゃん大丈夫ー? 嫌になってない?」

「だ、大丈夫です……。それより、ずっと気になってたんですけど……。」



 チラリとお姉さんを見ると、お姉さんは首を傾げた。そして揺れる、顔の横の編み込み。



「もしかして、飛鳥のお姉さん……?」

「そう! よく気づいたね!」

「やっぱり……!」

「飛鳥から聞いててさぁ、あの真白ちゃんだー! って思ったんだけど、いやいや訓練が終わるまでは! と思って我慢してたんだよねー!」



 そう笑う顔が眩しくて、飛鳥のお姉さんだと確信した。飛鳥のように訛ってはいないが、話し方の雰囲気は似ている。そんなところも含めて姉弟だ。



「おさげがあるから分かるだろうって言われていたんですけど、そっくりですね。」

「えー! あんなうるさいのと!?」

「ふふ、はい。」

「なんかなー!」



 飛鳥のお姉さんと盛り上がっていたときだった。不意に部屋のドアがノックされた。飛鳥のお姉さんが「はーい!」と返事をすると、見知った人が顔を覗かせた。



「やぁ! 楽しそうだね。」

「豪さん!」

「あ、邪魔しに来たの!? 本当に邪魔なんだけど!」

「ひどいなぁ。」



 そう和やかに話す豪に続いて、部屋に入ってきた人物がもう一人いた。



「八雲さん……!」

「や。順調?」

「はい……!」

「ふふ、そっか。」



 八雲は私の頭に手を乗せて優しく目を細めた。



「元気そうでよかった。」



 そうだ。最後に会ったのは蛍様の葬儀の日だった。あれから二、三ヶ月が経つ。



「皆のおかげです。」

「そっか。」

「……。」



 実は気付いていた。こっそり八雲が見守ってくれていたこと。私が気付いたくらいだ、本気で隠れてはいなかったと思う。直接声をかけてくることはなかったけれど、ずっと見守ってくれているという安心感は大きかった。



「ありがとうございます。」



 なんの脈絡もなくそう言うと、八雲は困ったようにこめかみを少しかいて、それから笑った。



「で、今日は何しに来たわけ? 八雲さんまで一緒に!」

「ひどいなぁ、彼女に会いに来るのに理由いる?」

「え!」



 彼女? 驚いて飛鳥のお姉さんと豪さんの間で目線を行き来させると、二人はおかしそうに笑った。



「そうよね、知らないわよね! 付き合ってるのよ私たち。」

「そうなんですね……!」

「幼馴染的なやつだね。」



 にこにこと笑い合う二人はお似合いで、何だかこっちまで幸せな気持ちになった。つられて笑顔になった私に、八雲も笑った。



「八雲さんは真白ちゃんに用事があったんですよね。」

「私ですか?」



 驚いて首を傾げながら八雲を見上げる。



「そ。12月25日のご予定は?」

「12月25日……?」



 12月25日は星の日という祝日だ。詳しいことは知らないが、確か大昔の偉人の誕生日だったはず。この日は訓練所も休みだ。



「特には……。」

「じゃ、一日俺にくれません?」

「えっ……。」

「きゃー! デート!? デートだよね!?」

「で、デート……?」



 騒ぐ飛鳥のお姉さんと困惑する私に、八雲は苦笑した。



「そう受け取ってもらっても構わないけど……、あなた誕生日でしょ。」

「え……。」



 誕生日……?



「……もしかして、知らなかった?」

「は、はい……。出生記録が見つかったとは聞いていたんですけど……。」

「はぁ……。睡蓮のやつ……。」

「睡蓮さんも適当なところあるからなぁ……。」



 溜め息を吐く八雲と豪さんを尻目に、飛鳥のお姉さんは「誕生日デートなんて素敵じゃん!」と騒いでいた。誕生日…デート……。きょとんとした私に気がついた八雲は優しく笑って言った。



「11歳、祝わせて。」

「……は、はい。」

「うん。じゃあ当日、11時に宿舎に迎えに行くから。」

「はい……。」



 嘘。八雲とデートだなんて。それも自分の誕生日に。そんな幸せなことがあっていいんだろうか。当日まであと約一週間。私はそわそわした気持ちを持て余しながら過ごすことになってしまった。


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