エピローグ(レオンside)
窓の外には穏やかな陽射し。騎士団の訓練もなく、文官の仕事もない珍しい休みの日。
差し込む光のなかで、テーブルの向こうの彼女が、器用に紅茶を注いでいる。
「……慣れてきたな、そういうの。」
「一応、王子様なので。出来た方がモテるでしょ?」
そう言って笑う“彼女”――グレイスは、いつものように軽口を叩く。でも、あの日からその笑い方は少しだけ変わった。どこか力が抜けて、素直で、柔らかくなった。
俺が囲い込んだのではない。彼女が、自分の意思でここにいると、知っている。ーー彼女が望んで俺の腕に囚われてくれている。
だから、今この静かな時間が、たまらなく愛しい。
あの日、彼女の涙を見たとき――それでも最後の一歩を、彼女に委ねたのは、俺の我儘だった。
(でも、あれでよかった。)
隣にいてくれる。俺の目の前で、無防備に笑ってくれる。それが、たまらなく嬉しい。
「……何か?」
気づけば、じっと彼女を見ていたらしい。グレイスが、すこし照れたように眉を上げた。
「いや。君が、綺麗だと思っただけだ。」
「……っ、やめてくださいって言ったでしょ、その“女の子扱い”。」
「なら、慣れてくれ。これから先、何度でも言うから。それに君は正真正銘、可愛い女の子だ。」
ふいに視線を逸らしたその耳が、うっすら赤く染まっていた。俺の言葉にいつまでも慣れない様子が可愛らしい。
そう――彼女は今、俺の隣にいる。
この先も、ずっと。




