↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

13

ーーレオンside


休日の午後。書物を探すつもりで足を運んだだけだった。喧噪の続く王都の大通りで、ひとときの静けさを味わおうとしていた――そのはずだった。


だが、空気が変わった。


遠くから、金属のぶつかる音と怒号。人々のざわめきが広がっていく。


気づけば、通りの向こうで人だかりができていた。その中心に、見覚えのある姿。


――レイ。


彼女は他の騎士団員とともに、男を押さえ込んでいた。荒く息を吐きながらも、視線は鋭く、動きに一切の無駄がない。彼女の努力の賜物だ。


その姿に、自然と足が止まった。


(……自分の方が苦しいはずなのに、また、誰かを守っているのか。)


その背中を見つめていたときだった。ふと、視界の端に妙な動きが映った。雑踏の陰、壁沿いに身を潜めるひとりの男。その手に、きらりと光る刃物。


そして、動いた。


(……!)


彼は人垣をすり抜け、レイの背中めがけて駆け出した。あまりの出来事に声を上げる間もなかった。判断よりも先に、身体が動いていた。


気がつけば、走っていた。無意識に、息を詰めて。


(間に合え――)


****

ーーグレイスside


騒ぎが収まったとき、レオンはすでに意識を失っていた。床に倒れ込んだ彼の背には、鮮やかな赤が滲んでいて――

自分の目の前で、誰かが血を流すという現実が、酷く現実味のないものに思えた。


大きな声で呼びかけられ体を揺すられ、自分は倒れた彼を抱え、地面に座っていた。そんな場合じゃないことは分かっている。それなのに体が動かない。まるで自分の体じゃないかのように制御が効かない。


彼が、庇ってくれた。咄嗟に、自分の前に飛び出して。何も言わずに、ただ当たり前のように。


どうして。なぜ、あの場にいたのかもわからない。どうして自分のために、そんな真似を。


運ばれた先は、王宮の治療室。騎士団の中でも、重傷者しか入れない部屋だった。気付いたら私もそこにいた。どうやってここまで来たか記憶が無い。それほど取り乱していたようだ。


「傷は深いが、内臓には達していない。夜までには目を覚ますでしょう。」


医師の言葉を聞いても、心の中の震えは止まらなかった。


目を覚ます――

それだけのことが、こんなにも救いになるなんて。


レオンの隣に腰を下ろし、静かに彼の手を取った。骨ばって、温かくて、でもどこか力が抜けていて。その手の感触に、胸が締めつけられる。


(……バカ、だな。…バカだよ。どうして。)


誰もいない静かな部屋で、そっと呟いた。


自分はずっと逃げてきた。本当の気持ちを隠して、笑って、誤魔化して。それでも彼は、迷わず助けにきてくれた。


「なんで……守られる側なんて、似合わないのに……。」


目元が熱くなるのを感じた。涙なんて、どれだけぶりだろう。

レオンの手を強く握る。


「ごめん……ほんとは、怖かった。ずっと……。」


声が震えていた。でも、誰もいないから、もうごまかす必要なんてなかった。


「……無事でよかった……ほんとに……よかった……。」


堰を切ったように、涙が零れて、止まらなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。