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逃げ切った――はずだった。


レオンの「知りたい」という言葉も、「好きになった相手」という告白も、全部笑って受け流した。仮面を貼りつけて、冗談めかして、いつも通りの“騎士団の王子様”を演じて――


それなのに、今日もまた、通用門でレオンと鉢合わせる。


「……また来たんですか?」


「偶然だ。だが、ちょうどよかった。」


「へえ。じゃあ俺、運が悪いなぁ。」


笑いながら歩きすぎようとした瞬間、レオンが一歩、道を塞ぐように立ちふさがる。


「夜は冷える。上着を持ってきていないなら、貸そうか?」


「……は?」


不意を突かれた。返す言葉が出ないまま、レオンはさらりと自分のマントを外して、肩にかけようとする。


「おい、待って待って、なんでそうなるんですか!? 俺、平気なんで――」


「君、風邪を引きやすいだろう。無理はしないほうがいい。」


「いやいや、そういう問題じゃ――!」


まるで、女の子にするみたいな、そういう優しさ。それがなんでもない顔で向けられたから、余計にどうしていいか分からなくなる。


顔が――熱い。


(うそ、なんで今、照れてんの俺……!?)


「……返しますから! 着ないですから!」


「素直に受け取るほうが、可愛いと思うが。」


「っ――! ……可愛くないです! 俺は可愛くない!」


「ふはっ、グレイス、君は可愛いな。夜道は危ないだろう?送ろうか。」


「は?俺の方が強いですから!結構ですっ!」


マントを押し付け返して、振り返って逃げるように歩き出す。自分の耳が真っ赤になっているのをひしひしと感じていた。


後ろから聞こえた低く笑う声に、さらに顔が火照っていく。


「…タチが悪い。」


夜風で顔の熱を冷ましながら歩く。まだ自分の耳に心臓の音が届いていた。

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