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あんが年が明けたら、遠い町に引越しをするのだと聞いたとき、先生はとても驚いたし、とても悲しい気持ちになった。
お家の都合だからしかたのないことなのだけど、もう少ししたら、あんは遠い、遠い町にいってしまうのだ。
先生はとても悲しかったけど、あんもとても悲しそうだった。
「先生。今までどうもありがちょう」とあんはいつもと同じように、引越しのことを先生がお家の人と一緒にいるあんから聞いたときに、あんは深々と頭をさげてそう言った。
「こちらこそ、いつもいい子でいてくれて、ありがとう、あんちゃん」と優しい声で先生は言った。(泣きそうだったけど、我慢した)
そのとき、頭をあげたあんは真っ赤な目をして、泣いていた。
ぽろぽろと大きな涙をこぼしながら、声を出さないように頑張って口を閉じて、静かにずっと泣いていた。
先生はあんが泣いているところを初めて見た。
「先生。さようなら」と泣きながら、あんは言った。
先生は、うん。さようなら。と言おうとしたのだけど、言葉がでなかったし、そのまま先生も真っ赤な目をして、泣いてしまった。
頑張って、笑ったつもりだったけど、本当に笑えていたのかどうかは先生にはよくわからなかった。