5 お母さんのこと
お母さんのこと
あんのお母さんがあんちゃんに愛情をたっぷりと注いで育てていることや、頑張っていることはあんを見ていれば本当によくわかった。
「あんちゃんはお母さんのこと好き?」
「はい。お母さんのこと大好きです!」と嬉しそうな顔で(大好きなお母さんのことが話題に出たから)笑ってあんは先生に言った。
あんはにこにこしながら、先生を見ている。
先生はそんなあんを見て、とってもかわいいと思った。
それから少しすると、とても寒い日が続くようになった。
あんはお母さんの手編みの手袋とマフラーをとっても幸せそうな顔をして、いつも身に着けるようになった。
「先生。おはようございます」と言ってきちんといつも笑顔であいさつをしてくれるあんちゃん。
お行儀がよくて、いつもやさしいあんちゃん。
手をあげて横断歩道を渡って、ちゃんと運転手さんにおじぎができるあんちゃん。
秋の学校の演奏会のときにはあんは一生懸命に不器用に楽器を演奏していた。
失敗してあんはとても悲しそうな顔をしていた。下手だって言って、みんなにごめんなさいって言っていた。
「下手でもいい。失敗してもいいんだよ」と先生はあんに言った。
「下手でごめんなさい」と言ってあんはずっと下を向いていた。