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先生に買ってもらった子供用の赤いコートを着るようになって、あんはとっても嬉しそうだった。
「先生。寒くないです」とか「先生。あったかいです」とか、ことあるごとに先生に言ってくれた。(先生もとってもうれしかった)
「先生はどうしていつもコートをあんに着せてくれるんですか?」とあんは言った。
「あんちゃんがいつもいい子にしているからだよ」と先生はにっこりと笑ってそう言った。
あんはとっても先生になついてくれた。
いつも先生の隣にいたし、先生がなにかの仕事をしているときは、先生の邪魔にならないところでじっとしていて、先生の仕事が終わると、また先生の隣にあんはすぐにとことこと歩いてやってきた。(すごくかわいかった)
先生はもっと、もっといろんなことをあんにしてあげたかったのだけど、先生は先生だから、あまり一人の生徒だけに思い入れが強くなりすぎることはよくないことだったし、あんの家族の了解もないのに、勝手にそんなことをするわけにもいかないし、あんのためにもならないと思った。
だから、なるべく先生は我慢をしていた。
(あんちゃんが可愛くてなかなか難しかったけど)
「先生。さようなら」と言って、あんが深々と頭を下げて先生に言った。
「はい。さようなら。あんちゃん。気を付けてね」と笑顔でそんなあんを見ながら、先生は言った。
学校から帰るときはあんは先生に買ってもらった赤いコートを(ちゃんと約束の通りに)脱いで先生に返していた。
だから、いつも学校から帰るときは、あんはとっても寒そうだった。
先生はそんなあんの寒そうにしている小さな背中を見て、ずっとあんにコートを着させてあげたいと思った。