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あんはとってもいい子だった。
大人しくて、優しいし、わがままも言わないし、喧嘩もしないし、大きな声も出さないし、あまり泣いたりもしなかった。
でも、そのかわり、お友達と遊んだりしなかったし、だいたいいつも一人でいた。(ひとりが好きなんです。とあんは言っていた)
ひとりでいることは、まあいいとしても、(本当はお友達を作ってほしいけど、無理に言うことでもないと思った。ひとりが悪いことでもないと思った。……、まあ、そうは言っても、どうしてもお友達と一緒にいてほしいと思ってしまうのだけど)わがままを言わなかったり、怒らなかったり、泣かなかったりすることはあまりよくないことだと先生は思った。
もちろん、わがまますぎることはよくないし、怒ってばかりいることはよくないし、泣いてばかりいるのもよくない。でもあんは本当にいつも穏やかにひとりで毎日の生活をおくっていた。
もっと、少しくらいはわがままになってもいいし、怒ってもいいし、泣いてもいいと思った。(そういうことをすることが、子供にとって大切なことだと思った)
あんはいろんなことを我慢しているのではないかと思って、先生は心配だった。でも、あんは先生に「あんちゃん。なにかいろんなことを我慢してない?」と聞かれても、「そんなことはありませんよ。我慢なんてしてません」と先生に言った。あんにそう言われてしまったので、先生は心配だったけど、「うーん。そっか」と言って、それ以上はあまり深く、あんにいろんなことを聞くことはやめることにした。