1 わたしはきみの味方だよ。ずっとね。
杏 あんのこと。
わたしはきみの味方だよ。ずっとね。
「どうもありがちょう」とあんは舌足らずな言葉で言って丁寧なお辞儀をした。
「いえいえ、こちらこそどうもありがとう」と先生はあんの小さな頭を撫でながらそう言った。
あんは先生からもらったクッキーの袋を赤いりぼんをほどいて開けて、いろんな形の(星とか四角いやつとか)クッキーをもぐもぐと食べ始めた。
そんなあんを見て、先生は思わず笑顔になった。
「あんちゃんはちゃんとありがとうが言えて偉いね」と先生が言うと、あんはとても恥ずかしそうにして、その白い顔をほんのりと赤く染めた。
あんは今年六歳になる小さな女の子で、ほかの同い年の子とくらべても、ちょっとだけ(一回り体の大きさを小さくしたような)小さな子供だった。
あんはおとなしくいつものようにあまり騒いだりしないで(ほかの子はみんなとても楽しそうにわいわいとはしゃいで遊んでいたけど)姿勢良く床の上に座っている先生のとなりにちょこんとひとりで座っていた。
「あんちゃんはみんなと一緒に遊ばないの?」と先生は言った。
「はい。大丈夫です。先生と一緒にいます」とあんは隣に座っている先生の顔を見上げるようにして、言った。
「そっか。じゃあ先生と一緒に遊ぶ?」と先生が言うとあんはとっても嬉しそうな顔をして「はい。遊びます!」と先生に言った。
あんはクッキーの袋を赤いりぼんを結んで閉じると、お口のまわりをティッシュでふいて、クッキーの食べかすを綺麗にとった。
それからあんは先生と一緒に床の上に立ち上がると、手をつないでから二人で歩いて、少し広いところに移動する。
そこで先生とあんはゴムボールを投げる遊びをした。あんはとっても楽しそうだった。「あんちゃん、楽しい?」と先生が言うと、「はい。とっても楽しいです!」とゴムボールを両手でキャッチしながら、にっこりと笑ってあんは言った。