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天上神の大事な愛し子との禁忌の愛。けれど想いは消せなくて  作者: しろねこ。
第二章 新たな出会い

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第31話 行き過ぎた行い

「ルナリアが倒れた?」


 僕とルシエルはその報を聞いて足早に駆ける。


 ルナリアの不調を天空界に伝えたところ、わざわざルシエルが来たのだ。


「本当は父上が来ると言っていたが、最高神がわざわざ来たとあれば、騒ぎにもなりかねないのでね。私で失礼します」


 だから代理で来たとの事だ。ルシエルの部下も一緒である。


 さすがに攻め入るにしては数が少ないので許可はしたが、警戒は怠らぬようにと部下達には通達した。


 そうしてルシエル達を連れて宮殿に帰ってきたのだが、その時にはもう既に慌ただしい様子でであった。何かあったのだとわかったが、まさかルナリアが倒れたなんて。


「朝に声を掛けた時は何もなかったのに、一体何故……」


 顔色は相変わらず悪かったけれど、倒れる程ではなかったはずだ。今すぐ儚くなるようには見えなかったのに。


「食事の途中で倒れてしまったのです。最初は何事もなく口にしていたのですが、急に意識を失ってしまって」


 ルナリアについていた神人は、それ以外は何も変わったことはなかったという。


「食事? まさかとは思うがルナリアに毒でも盛ったのではないだろうな」


 ルシエルの問い詰めに僕が代わりに口を開く。


「そのような事はしません。普段ルナリアには空にいた頃と同じ花の蜜や果物を出しており、皆にもそう伝えています」


「本当か?」


 ルシエルは疑っているようで神人に問うが、神人は頷くばかりだ。


 問い詰められているからか、その顔色は段々悪くなっていた。


「その食事はどこにある」


「もう片付けました。本日は私室でお食事だったのですが、休むために邪魔になってしまうと思いまして」


 焦ったように話す神人を睨むように見ている。ルシエルは何かを疑っているようだ。


「ルナリアの食事は特殊だから、海底界では手に入りづらく、理解されづらい。誤魔化すことも考えられる」


 確かに果実や花の蜜とはなかなかここでは手に入らないし、目にすることは少ない。


 ルナリアの為に特別に用意をしなければ普段は置いてすらないものだ。


「もう一度聞く。彼女に何を食べさせた?」


「ふ、普段と同じものです」


 カタカタと神人は目に見えて震えていた。


「具体的には何をだと聞いているのだ。まさか肉ではないだろうな、あれはルナリアには死の匂いが濃すぎて受け付けない。まさかとは思うが、そのようなものではないだろうな」


 ルシエルの言葉に二人は首を横に振る、その様が却って怪しい。


「ルシエル様落ち着いて下さい。まずはルナリアの所に行きましょう」


 ここで言い争っている場合てはない、ルナリアが心配だ。


「そうですね。ルナリア本人に聞けば全てわかるでしょうから」


 ルシエルは詰め寄っていた神人達から視線を外す。


「けれどもしもルナリアにわざとそのような食事を出したとあらば、危害を加えようとしたと判断します。その際はどのような償いをお考えでしょうか」


(そのような事はしていないはずだが)


 しかし確かに皆の様子がおかしい。


 まさか言いつけを破った可能性があるのか?


 そうであればルナリアの気持ちはますます僕から離れる事になるだろうと焦る。


「ルナリアに聞きましょう」


 今はそれしか言えない。





 ◇◇◇







 温かな光を感じる。


「……あなたは?」


 ぼんやりとした頭で側にいる女性に声を掛けると、彼女はにっこりと微笑んでくれた。


「安心してください。あたしはリーヴ様の部下の一人です。ササハとお呼びください」


 ササハと名乗る彼女はわたくしの体に手を翳している。


 その手から放たれる光が心地良い温かさで、段々と体の不調が消えていった。


「慣れていないものを口にしたせいでショック状態になったみたいですけれど、気分はいかがですか?」


「大丈夫、です」


 死に損ねてしまったと、気持ちは落ち込んでいる。


 けれどそれは折角回復してくれた人の前で言う事ではない。


(ショック状態……初めてだけれど、こんなにも回復しないものなのね)


 こうして癒しの力を受けていても、どうにも体が優れない。


 医療に強い神に診てもらえているというのに、と思っていたら彼女は治療をやめてしまう。


「ありがとうございます」


「いいえ、あまり気になさらずに。これがあたしの仕事ですから。これからは誤って食べなれていない食物を口にしないように気をつけてくださいね、大事な体なのですから」


「はい。すみません」


 誤って、というか自らわかっていて口にしたのだけれど、それは言ってはいけない。


(彼らも咎められてしまうだろうし)


 彼らは彼らなりにリーヴの為を思ってわたくしを正そうとしたのだから、責めるつもりはない。


 それにこうして自死への道がまだ残されていることも、教えてくれたのだから。


(今度はもう少しうまくやらないと)


 生き残ったことが惜しいとは思えない。


「それではあたしはまた明日来ますが、どうします? リーヴ様にはあたしから話しましょうか、それともルナリア様から伝えたいですか?」


「症状についてならわたくしからリーヴ様に伝えます」


 ショック状態についての事をササハから伝えられると困る、今後このような好機が来なくなるかもしれないから。


「そちらではありません、実は――」


 ササハの口から告げられたのは、今度こそ本気で死にたいと願うような内容だった。



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