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56. 逆境にはもう慣れました

「ガァアアア˝ア˝!!」


 この戦いの中で初めてダメージを負ったバグモンスターは、走るのを止め大きく唸り声を上げる。


「……おい、ナツ。お前何したんだ?」

「……正直に言うと、私にもさっぱりです」

「……そうか」


 一瞬時が止まったように沈黙が続いたが、その時間はすぐに終わりを迎えた。逆上したバグモンスターがこちらに牙を剥いて来たのだ。


「まぁ、何はともあれ良くやった。これだけ怒らせときゃ後衛にヘイトが向くことは無いだろ」

「えっと、私はどうすれば?」

「そりゃあ……死ぬ気で逃げろ」


 バグモンスターが私に向かって走り出す。その巨体から出るあまりの殺意に気絶しそうだ。

 

「ナツ、今からわっちは全力でお主の強化と支援に当たるのじゃ! お主はもう一度バグモンスターにダメージを負わせられるか試してくれ。ギンジ、お主は死ぬ気でナツを守るのじゃ!」

「へいへい、碌にダメージも与えられないおっさんは精々ボディーガードを頑張らせて頂きますよっと」


 ロコさんから指示が飛んできた直後、私に数々の強化魔法が飛んでくる。機動力上昇、回避上昇、攻撃力上昇、HP・MP・スタミナの上限値上昇、HP継続回復、私を起点とした範囲にHP・スタミナの継続回復エリア展開。バフの大盤振る舞いだ。

 ちなみに物理耐性強化はレキが担当しているので、ロコさんはそれ以外の強化を担当している。

 

 ロコさんやレキがバフを掛けてくれている間にもバグモンスターは私に迫ってきていたのだが、その牙が私に届く事はなかった。なぜならば今そのバグモンスターは……ギンジさんに背負い投げで投げ飛ばされていたのだ。


「よっと。……長年ソロで戦い続けてたからな。相手の行動阻害なんぞお手のもんよ」


 ギンジさんのあまりにもな光景に言葉を失う。


「ま、攻撃を入れる隙を狙わなくていいからな。行動阻害に集中出来る分さっきより戦いやすい」

「ナツ、今からお主にインカ―ネイションを掛ける。これは相手に適応した属性の体に変化させる白魔法で、恐らくお主はシャドウタイプになる。影になって避けたり、影に飛び込む事も出来るタイプじゃから、やり方は戦いながら体で覚えるのじゃ」

「え、そんないきなり言われても!?」


 驚く私をよそに、ロコさんは私にインカ―ネイションを掛ける。すると私の体が全体的に少し黒ずむ。


「俺が暫くこいつを留めておくから、その間にその体の使い方を練習しておけ。……2分は止めといてやる」

「分かりました! レキ、プロテクションの重ね掛けはしなくていいから、マナシールドでの行動阻害に専念をお願い!」

「ワフッ!」


 テンパっている時間はないと判断した私はすぐにインカ―ネイションの効果を調べる。やはりゲームだからなのか、何となくだがシャドウタイプで出来ることが感覚で分かるようだ。

 

 まずは体の一部の影化だ。これは体全体を影にすることは出来ないが、限られた範囲のみに集中することでその部分を黒い霞状にすることが出来る。その部分は物理ダメージ無効の効果が付いているため、バグモンスターの攻撃をこれで避けることは可能だろう。

 次に影に飛び込む効果についてだが、私は近くの木へと近づき思い切って陰に飛び込んだ。すると私の体はトプンっと溶けるように木の影へと入っていく。影に入っている間は、影を起点としてその周りの光景を視認することが出来る様だ。けれど、影の中では技能を使うことはおろか、アイテムを使うことも出来ない。

 物理攻撃や魔法、アイテムの類を使うためには影から出なくてはいけないようだ。……けれど、これは。


 ――これ、バックスタブと相性良すぎない?


 バックスタブは相手の背後から強襲することで効果を現す技能のため、必然的に相手の背後を取らなければならない。そしてこのシャドウタイプの影に潜る特殊能力だが、出てくるのは入った影のどの位置からでも出られるのだ。これなら簡単に相手の背後を取れてしまう。


「ナツ、これ以上は無理だ。一度そっちに通すぞ! 行けるか?」

「大丈夫ですとは絶対に言えないですけど……こんな逆境にはもう慣れました!」

「ははっ! 上等だ!!」


 第2ラウンドの始まりだ。

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